大自在(3月3日)ひな人形と結婚式

 きれいなものを見て楽しく感じることを「目の保養」「目の薬」と言う。「目の正月」とも表すそうで、この展示はそう呼びたい。静岡市のグランシップできょう最終日の「高松宮妃のおひなさま展」を見てきた。
 徳川慶喜公の孫にあたる喜久子さまのご成婚の支度品。幅6メートルの五段飾りは豪華絢爛[けんらん]、内裏びなのわきには稚児が控え人形は19体。輿[こし]入れ道具の精巧なミニチュア600点には、たんすや衣装、夜具、食器、針箱や将棋盤、琴も。
 平安時代の姫君たちの「ひいな遊び」と、中国から伝わった厄よけの風習が合わさってひな祭りの原型ができたとされる。江戸時代には人形を飾って女児の無病息災と健やかな成長を祈るようになった。結婚式を表すという段飾りは良縁祈願の象徴でもあるのだろう。
 その娘が生涯の伴侶に出会えると、祈りは感謝になる。グランシップでは地元6社もひな人形を展示。そこに「おひなさま納め」を結婚式に取り入れてみてはどうかというちらしが置かれていた。
 幼いころから新婦の成長を見守ってきてくれたひな人形を「ウェルカムドール」として会場エントランスに飾り、披露宴の中で新郎と共に人形を箱に納める。日本人形協会静岡支部が7年ほど前から提案しているという。
 「この日を節目に新婦の守り役はおひなさまから新郎に」と望月和人支部長(静岡市「人形工房 左京」)。結婚観や夫婦のあり方は多様化したが、毎年、その前で祖父母や仲良しを招いてパーティーをしたひな人形も華燭[かしょく]の典に招き感謝を表すというストーリーには一理ある。

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