個人消費の見通し「横ばい」5割 「給与 物価上昇に追い付かず」【静岡県内100社景気アンケート詳報】

 個人消費の見通しは50社が「横ばい」とした。「経済活動の再開で回復が見られるが、物価高騰の影響で足取りが重い」(鈴木健一郎鈴与社長)、「給与水準の上昇が物価上昇に追い付かず、可処分所得の減少が見込まれる」(機械製造)などと、上昇が鈍い賃金と高止まりする物価への言及が目立った。
弁当などが並ぶ百貨店の食品売り場。新型コロナウイルス感染症の5類移行で、個人消費は伸長が期待される一方、上昇が鈍い賃金と高止まりする物価への懸念も残る=静岡市葵区の静岡伊勢丹  「緩やかに拡大」は35社。「新型コロナウイルス感染症の5類移行で、飲食や宿泊、観光などの個人消費が徐々に回復する」(金融)などと予測した。
 一方で「物価高と円安傾向に歯止めがかからない」(小売)などを理由に、「緩やかに後退」(13社)との予測も見られる。
 足元の個人消費は「少し伸びた」(43社)、「大幅に伸びた」(6社)と、約5割が消費の伸長を実感している。
 コロナの5類移行が経営に与えた影響は「良くなった」(12社)、「やや良くなった」(41社)と、肯定的に捉える企業が過半数。「人流が活発化し、飲食・観光業で需要回復の兆しが見える」(小栗勝男TOKAIホールディングス社長)、「行事やイベントの復活など、地域経済回復への足掛かりとなった」(金融)など、行動制限の解除を歓迎する声が多い。
 一方、「やや悪くなった」は7社。少数だが、消費者の購買行動の変化を警戒する意見が見られた。
原材料 エネルギー高 「経営に影響」95社  原材料・エネルギー価格の高止まりで、各社の経営環境は依然として厳しい状況にある。事業に「深刻な影響が出ている」「やや影響が出ている」は前年比2社増の計95社に上った。
 対応策(複数回答可)は「価格転嫁」が最多の86社で、「経費節減」63社、「仕様(原材料や設計など)の変更」37社が続いた。量を減らして価格を据え置くなど「販売上の工夫」は前年比横ばいの11社だった。
 影響が続く期間は33社の「2年以上」が最多で、「1年~1年半」(23社)、「1年半~2年」(17社)、「6カ月~1年」(同)と続き、当面の影響継続を見通す。ロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ問題などの地政学的リスクを要因に、予測困難との回答も見られた。
価格転嫁 「全て転嫁」10社どまり  原材料やエネルギーの価格高騰が続く中、価格転嫁は思うように進んでいない。コスト上昇分を「全て転嫁済み」は10社にとどまり、50%以上を価格転嫁できたのは51社。「全くできていない」を含め、価格転嫁の進捗(しんちょく)率が25%以下は13社だった。
 転嫁できない背景には、同業他社との価格競争がある。大手企業と取引する製造業者は「常に競争にさらされ、値上げがあだになるケースがある」と価格転嫁に慎重な構え。「お客さまに受け入れられない」「顧客離れが懸念される」など、消費の落ち込みを危惧する声も上がる。
 このほか「足元の原価も日々上昇している」など、急速な原材料の値上がりに価格転嫁が追い付かない企業も見られた。
カーボンニュートラル 9割超が前向きな姿勢  カーボンニュートラルへの対応に57社が「大いに関心がある」、35社が「やや関心がある」と回答した。9割以上が取り組みに前向きな姿勢を示した。
 既に実施済みの項目は「社内エネルギーの計測・可視化」が62社で最多。「省エネ設備への更新・改修」(61社)、「事業で排出する二酸化炭素量の算定」(56社)、「設備運用の効率化」(46社)が続いた。
 未実施の項目では「ライフサイクル・アセスメントの算定」が50社でトップ、次いで「燃料転換による二酸化炭素削減」(41社)、「環境に配慮した原材料導入」(32社)など。
 実施に慎重な企業からは「推進のテーマが少ないし、効果も低い」「業績が良くならないとそこまで気が回らない」と本音が漏れた。
為替 株価 円安への対応進む  適正と考える円・ドルレートは「130円以上135円未満」が26社と最も多かった。130~150円に範囲を広げると4割以上に。約3分の2の企業が110~130円の範囲が適当とした前年調査に比べ、各企業で円安への対応が進んでいる現状が垣間見えた。信用金庫と製造業3社は「145円以上150円未満」とし、23年と同水準の円安水準を期待した。
 24年末の日経平均株価予想は「3万2000円以上3万4000円未満」が30社で最多。「3万円以上3万2000円未満」(25社)、「3万4000円以上」(23社)と続き、堅調な値動きで推移するとの見立てが多数あった。

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