海洋微生物で発酵分解 食品廃棄物に新処理法 磐田化学工業など開発進む

 磐田市で有機酸の販売・加工受託を手がける磐田化学工業が、廃棄食品や残さを海洋微生物(メタン菌)による発酵で分解する新たな廃棄物処理システムの開発に取り組んでいる。従来の陸上メタン菌では難しかった塩分濃度が高い食品廃棄物への対応も可能で、事業化されれば国内初という。開発計画が県のMaOI(マリンオープンイノベーション)プロジェクト促進事業に採択された。

新たな食品廃棄物処理のイメージ
新たな食品廃棄物処理のイメージ


 同社によると、廃棄食品や食品製造の過程で出る廃液などの処理方法の一つであるメタン発酵は、一般的に陸上に生息するメタン菌を用いる。ただ、みそやしょうゆ、粉末調味料、水産加工品など高塩濃度の製品に対しては、発酵効率が低下する傾向がある。
 同社が海洋由来のメタン菌で同製品群の発酵を行った結果、分解、発酵の能力が損なわれない耐塩性を確認した。今後は試験機を使って実用化に向けて研究を進める。
 食品廃棄物はこれまで大部分が焼却処理されてきたが、コスト削減や二酸化炭素(CO2)排出抑制の観点からメタン発酵による処理が注目され、国も推奨している。発酵により発生するメタンガスは発電に使われ、最終的な残さは肥料などに活用される。
 磐田化学工業は40年以上にわたりクエン酸などの製造で出る廃液をメタン発酵させる設備と技術を有してきた。今回、海洋メタン菌の耐塩性を確認した際も微生物と廃棄物のバランス、温度管理、攪拌(かくはん)速度といった長年のノウハウが生きた。
 関口喜則取締役開発室長(46)は「微生物とともに歩んできた社業を社会に還元し、環境保全に寄与できれば」と話した。
 開発計画は広島大と発酵関連装置販売のバイオット(東京)との協力事業。
 (経済部・河村英之)

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