訪日教育旅行回復基調に 静岡県内、2023年度800人超に 現地向け誘客強化

 新型コロナウイルス禍で途絶えていた静岡県内への訪日教育旅行が回復してきた。2023年度は9月末までに800人余りを受け入れる見込みで、ピーク時の水準には届かないものの、児童生徒らの国際交流が従来の姿に戻りつつある。県は「本県の魅力を発信し、インバウンド(訪日客)拡大に結び付けたい」として、現地の学校への働きかけなど誘致活動を本格化させる。

県内の訪日教育旅行受け入れ実績
県内の訪日教育旅行受け入れ実績
英語でコミュニケーションを図る本県とマレーシアの生徒=15日、静岡市清水区の清水南高・中等部
英語でコミュニケーションを図る本県とマレーシアの生徒=15日、静岡市清水区の清水南高・中等部
県内の訪日教育旅行受け入れ実績
英語でコミュニケーションを図る本県とマレーシアの生徒=15日、静岡市清水区の清水南高・中等部

 15日、静岡市清水区の清水南高・中等部にマレーシアから訪れた13~16歳の生徒21人が到着した。清水南の生徒は音楽演奏やダンスで歓迎。昼食を一緒に食べたり授業を受けたりして、英語でコミュニケーションを図った。日本のアニメなど共通の話題で打ち解ける様子も見られた。
 高校1年の足立政宏さん(16)は「初対面でも盛り上がることができてうれしい。英語がどれだけ通じるか力試しにもなる」と話し、小野田秀生校長は「オンラインではない対面の交流の良さがある。互いの文化の理解にもつながる」と意義を強調した。
 県によると、静岡県への訪日教育旅行は13年度以降増加傾向で推移し、ピークの18年度は68校2190人に上った。その後はコロナの感染拡大に伴い20~21年度はゼロ、22年度も1校28人と大幅に落ち込んだ。
 渡航制限緩和で海外との往来が正常化に向かう中、23年度は9月末までに台湾や米国、タイなど22校852人を受け入れる見込み。10月以降も7校の来訪が予定されているという。
 静岡県は東京や京都、大阪をつなぐゴールデンルートの中間に位置し、富士山をはじめとする観光スポットが豊富。地域振興交流協会(静岡市葵区)によると、農家民宿やペンションを活用したホームステイが充実し、体験学習を重視する学校のニーズが高い。コロナ前にトップだった中国からの教育旅行は回復が遅れているものの、全体としては今後も復調するとみられる。
 こうした中、県が働きかけを強めるのが台湾だ。県台湾事務所とも連携しながら12月に現地の学校向け説明会を開き、本県の観光資源を生かした体験プログラムを売り込む。静岡空港の台北線は欠航が続くが、運航再開をにらみながら教育旅行の呼び込みに力を入れる。
 教育旅行は平日が多く、土日に集中する観光需要を分散できる利点がある。県観光振興課の担当者は「若い世代の国際相互理解とともに、本県を再び訪れるリピーター獲得にもつながるため、受け入れを増やしていきたい」と話す。
 (政治部・森田憲吾)

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