結婚式は自分たちらしく フォトウエディング SNS映えも意識【NEXTラボ】

 親しい人のみ招待する少人数婚や、式を挙げずに写真撮影だけ行うフォトウエディング―。結婚式は価値観の多様化に伴って変化し、新型コロナウイルスの流行を経て、選択肢が広がっている。ブライダル業界関係者や新婚カップルを訪ね、結婚式の今を探った。(生活報道部・伊藤さくら)
前撮りする四條永伍さん(右)と奈保さん=静岡市駿河区のエスプリ・ド・ナチュール
 ともに会社員の四條永伍さん(35)、奈保さん(32)夫妻=山梨県南部町=は6日、挙式を前に静岡市駿河区中原の式場「エスプリ・ド・ナチュール」で前撮り撮影に臨んだ。「式当日はゲストが主役だと思う。忙しくて落ち着いて撮影できないだろうから、2人だけの写真を事前に撮りたい。2人の時間を楽しむことができれば」。ヘアセットや着替えなどの準備を含め、撮影時間は約3時間。撮影場所はチャペルなど式場内の10カ所ほどに及んだ。カメラマンやスタッフが2人を盛り上げ、和やかな雰囲気で撮影が進んだ。
 永伍さんは「表情を作るのが難しかった」と緊張した様子を見せ、奈保さんのドレス姿に「髪のセットや小物までしっかり付けた姿は初めて見た。きれいだった」と話す。奈保さんは「お姫さまになった気分で楽しかった。ドレス選びから髪のセットまで全部にこだわった。撮影した写真をSNS(交流サイト)に投稿したい」と声を弾ませた。
 同式場の霜村孝支配人(44)は「挙式するほとんどのカップルが前撮りする。(写真投稿サイトの)インスタグラムに投稿された写真を見せて、同じような雰囲気で撮影してほしいと要望する人も。昔より写真映えを意識するようになったのでは」と語る。欧州の城を思わせる式場の外観が映る場所で撮るのが特に人気という。
 2019年に新設したドローイングルームも人気だ。洋書や本棚をフランスから輸入し、貴族が絵を描いたり本を読んだりする空間をイメージした。コロナ禍では撮影場所としてだけでなく、少人数用の結婚パーティー会場として選ばれることもあった。
 同式場が6月に新たに始めたのはフォトウエディング。すでに20組ほどのカップルが撮影した。「日本の結婚式文化をなくしたくないという思いから、これまで実施していなかった」と霜村支配人。しかし、始めると反応は予想以上だった。「最初は目立ちたくないからという理由で選んだカップルも、いざ始まるととても楽しそうで、もう1着衣装を着たいと言う人もいた。見に来た家族に祝福される幸せな姿に、挙式と同様に手伝うことができると思った」と手応えを語る。

庭でマルシェ ゲスト参加型で楽しく
 音楽フェス、キャンプ-。新郎新婦の趣味や好きなものを受付の装飾や会場に流す音楽で表現するカップルが増えている。松永拓海さん、暖さん夫妻が企画したマルシェ。ゲストの体験ブースを設けた=静岡市駿河区のサンタ・アムール エテルニテ(提供写真)昨年10月に静岡市駿河区大谷の式場「サンタ・アムール エテルニテ」で挙式した、ともに公務員の松永拓海さん(26)、暖[のどか]さん(26)夫妻=同区=。暖さんの趣味であるハンドメード作品でゲストを喜ばせようと、式場のガーデンで「マルシェ」を企画した。レザーのストラップに名前を刻印できる体験ブースや、ゲストへのプレゼント用に手作りしたアクセサリーの展示ブースを屋外に設けた。
 暖さんは「ゲストと対話する時間を増やしたかった。自分の好きなことで感謝の気持ちを伝えられるよう、ゲスト参加型の企画を考えた。友人が『こんな楽しい式は初めてだった』と喜んでくれてよかった」と振り返る。
 この式場を運営する会社の寺田英史社長(52)は「自分たちらしい式を行う若い人が多い。派手な演出よりもゲストと一緒に楽しむことを重視している。結婚式が文化・儀式から、特別な体験ができる1日へと変わった」と話す。2022年の「ゼクシィ結婚トレンド調査」によると、ゲスト一人一人を大切にする気持ちが高まっている。1人当たりの料理費用は平均1万6700円、ギフト費用は同6900円と、どちらも09年以降で最高となった。
 家族、友人一人一人に感謝を伝えるために2部制の式を選ぶカップルも。前半に家族だけで式や食事をし、後半は友人らと楽しむ式で、主催者として忙しくなりがちな親族もゲストになることができる。
 従来通りの式を避ける傾向にあり、ゲストの顔ぶれも変化した。寺田社長は「仕事とプライベートの交友関係を分ける若者が多く、式に招待する上司の人数が減った。祝電の数も減っている」と指摘する。親族には紙の招待状を郵送するが、友人には「ウェブ招待状」をLINE(ライン)で送信し、祝儀を電子決済するサービスを活用するカップルもいる。キリスト教式や神前式ではなく、参列者に「誓い」を立てる人前式を選ぶカップルも増えているという。

お金のかけ方に変化 ウエディングプランナー 松永直子さんに聞く
 国内外の結婚式に携わるフリーランスのウエディングプランナー松永直子さん(37)=焼津市=に、最近の傾向を聞いた。
松永直子さん
 -ゲスト参加型の式が増えた。
 「『自分たちよりもゲストが主役』と言うカップルが多く、ゲストが参加するイベントをたくさん考えている。お祝いしてもらうことよりも、感謝を伝えたいという気持ちの方が強い。ゲストと一緒に何かを残したいという思いから人前式が好まれるようになったのかもしれない。
 -どのような背景があるか。
 「SNSでさまざまな情報を拾える時代。SNSで評価されることが多い若い世代の特徴だが、『おしゃれな式だったと思われたい』『記憶に残る式にしたい』と、自分自身の希望よりも周りにどう思われるかを気にしている人もいるのでは。式の様子をSNSに投稿することを意識して、会場に飾る花を豪華にする人も増えた」
 -お金のかけ方はどう変わったか。
 「今の若い人たちは必要なもの、不必要なものの区別がはっきりしている。意味よりも結果論。憧れだけで生きておらず、地に足がついていると感じる。例えば、引き出物の数や内容が変わった。地域によって違いはあるが、かつては記念品・引き菓子・縁起物の3点を贈るのが一般的で、世間体もあってか、数を増やしたり、高価な品を選んだりした。しかし、今は重たい記念品を手渡すよりも、ゲストが欲しい品を選ぶカタログギフトや実用的な品を贈るカップルが多い」

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