⚾コロナ禍で消えた「あの夏」実現 聖隷OBら“聖地”に 11月、憧れの甲子園へ

 新型コロナ禍で中止となった2020年夏の甲子園大会を実現させるプロジェクト「あの夏を取り戻せ~全国元高校球児野球大会」が11月29日から3日間、兵庫県内で開かれる。同年夏の各都道府県の代替大会で優勝したり、上位進出したりした全国44チームが集まり、初日は阪神甲子園球場が舞台となる。静岡県代表は、20年夏季県高校野球大会を制した聖隷クリストファー高のOBたち。4年越しで憧れの“聖地”の土を踏む。

代替大会で優勝を決め、喜ぶ聖隷クリストファーナイン=2020年8月3日、静岡市駿河区の草薙球場
代替大会で優勝を決め、喜ぶ聖隷クリストファーナイン=2020年8月3日、静岡市駿河区の草薙球場
甲子園の舞台を楽しみにする保坂将輝さん=5月29日午後、都内
甲子園の舞台を楽しみにする保坂将輝さん=5月29日午後、都内
代替大会で優勝を決め、喜ぶ聖隷クリストファーナイン=2020年8月3日、静岡市駿河区の草薙球場
甲子園の舞台を楽しみにする保坂将輝さん=5月29日午後、都内


 「みんな甲子園に行けることを喜んでいます」。聖隷OBチームのリーダー役を担う保坂将輝さん(20)=亜細亜大3年、浜松市東区出身=は目を輝かせる。当時3年生だった12人で参加を予定しているという。
 20年5月に中止が決まり、甲子園という目標を失った世代。保坂さんは「うわさはあったから『やっぱりな』という感じだった」と振り返る。チームも「どん底」の雰囲気だった。代替大会開催に感謝し、優勝を誇りにしつつも、やるせなさは残った。翌年以降、甲子園大会をテレビで見るたびに「うらやましかった」。はつらつとプレーする球児の姿を、自分たちに置き換えることもあった。
 今回、交流サイト(SNS)でつながる母校のチームメートがプロジェクトを聞きつけ、皆で相談して応募した。代表者として実行委員会の会議に出ると、全国の同世代の元球児が同じような葛藤、悔しさを抱えていた。最初は実現に半信半疑な部分もあったが、「絶対に成功させよう」という周囲の熱意に触れ、今は期待の方が大きい。
 聖隷OBたちは進学や就職で静岡県内外に分かれ、久々のチーム結成となる。保坂さんは「高校3年間を一緒に頑張ったから大丈夫。すぐあの頃に戻れる」と自信を持つ。保護者や指導者、熱戦を繰り広げた県内他校の仲間の思いを背負って立つグラウンドで、どのような感情がわき起こるのか。「泣いてしまうかも」という瞳に映る球場の景色を、楽しみに思い描いている。

元球児の大学生が発起人 運営資金募る
 プロジェクトは、武蔵野大3年の大武優斗さん(21)が発起人となって立ち上げた。SNSを通じて各地の代替大会優勝チームOBらとつながって参加を呼びかけるとともに、運営側のメンバーも募った。 photo03 発起人の大武優斗さん(左)や応援に駆け付けた古田敦也さん(右)ら=5月18日、都内
 大武さんも新型コロナ禍で甲子園の夢を絶たれた元球児。5月18日に都内で開いた発表記者会見では「当時、球児だった高校3年生が今も抱える悔しさに終止符を打ちたい。若い世代が挑戦できる社会づくりのきっかけにもしたい」と強調した。
 大会は初日に甲子園球場で各校の記念撮影や練習、セレモニーを行い、2日目と最終日は兵庫県内の球場に分かれて各チームが交流試合を行う。実行委は7日から、運営資金獲得のクラウドファンディング(CF、目標額7千万円)を始めた。12月1日まで。
 元プロ野球選手らも応援し、会見に駆け付けた元ヤクルトの古田敦也さんは「このプロジェクトをやり遂げることが、若者に勇気を与える」と激励した。

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