西伊豆町教育施設再編 地域の最適解 探る契機【東部 記者コラム 湧水】

 2023年1月下旬、長年議論されてきた西伊豆町の認定こども園と小中一貫校の教育施設再編計画が白紙に戻った。町は6月に始める教育施設の在り方を考える住民ワークショップで意見を集約し、町の総意をつくる。地域の将来を左右する問題だけに、これまで以上に当事者意識を持って考える必要がある。
 最終案と言える建設地が定まり、整備に向け動き出す直前の発表だった。1月下旬の会見で星野浄晋町長は、一部住民の反対を受け「理解を得られずに進めるのは難しいと判断した」と述べた。長期化する再編問題は、曲折してきたため、経緯を把握するのが難しい。町の方針がうまく伝わらず、住民らが納得できなかった可能性がある。
 再編に関する議論は、14年に本格化。当時の幼稚園や保育園、小中学校の統合検討を始めた。だが、15年の住民説明会で反対地区があり、統合計画は一時中止になった。その後も防災対策や通学時間などを考慮した案が検討されてきたものの、建設地や工費などを巡り、議会と対立したり、住民の反対を受けたりして計画が二転三転してきた。
 町は2月、保護者や地域住民に中止の経緯を説明した。保護者からは「時間をかけて議論してきたのに悔しい」などと感情のこもった意見が出た。説明会の後、発言しなかった参加者に感想を聞くと、「この先どうなるのか不安」と率直な思いを漏らした。
 地域の象徴と言える学校やこども園がなくなるのは寂しい。誰しも通ってきた経験があり、さまざまな思いや考えがある。しかし、少子化が進み現状の教育体制維持が難しくなる中、全国でも教育施設再編の動きは進んでいる。喫緊の対応が迫られているのは、同町も例外ではない。
 特に同町は高齢化率が県内で最も高く、人口も6月1日時点で7千人を割った。教育施設を生かし、子育てしやすい地域としてアピールできれば、人口減少問題にも希望を与えうる。
 6月開催のワークショップの参加希望者は、5月で募集を打ち切ったが、同月時点で定員とする約30人に満たなかった。当局だけでなく、地域住民が一丸となって最適解を探す契機にしたい。

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