静岡醸造(静岡市駿河区) 魅力的な地に根を下ろす ラガーの奥深さを追求【クラフトビール群雄割拠 静岡/山梨/長野/新潟⑨】

 静岡、山梨、長野、新潟4県の県紙がリレー形式で地元のクラフトビールを紹介する連載企画「クラフトビール群雄割拠」の第9回。3巡目の第1弾は、昨年6月に静岡市内に開業した「静岡醸造」を静岡新聞が取り上げる。

モルトの糖化作業を行う福山康大代表(左)と折山徹郎醸造長=2日、静岡市駿河区の静岡醸造(写真部・杉山英一)
モルトの糖化作業を行う福山康大代表(左)と折山徹郎醸造長=2日、静岡市駿河区の静岡醸造(写真部・杉山英一)
観光施設の中に、約45平方メートルの小規模な工場をつくった。併設のカフェで生ビールが飲める(写真部・杉山英一)
観光施設の中に、約45平方メートルの小規模な工場をつくった。併設のカフェで生ビールが飲める(写真部・杉山英一)
酵母と蜂蜜の香りが複雑に絡み合って鼻に抜ける「ハニーピルス」。匠宿の売店と、人宿町のタップルームで限定販売
酵母と蜂蜜の香りが複雑に絡み合って鼻に抜ける「ハニーピルス」。匠宿の売店と、人宿町のタップルームで限定販売
静岡醸造
静岡醸造
モルトの糖化作業を行う福山康大代表(左)と折山徹郎醸造長=2日、静岡市駿河区の静岡醸造(写真部・杉山英一)
観光施設の中に、約45平方メートルの小規模な工場をつくった。併設のカフェで生ビールが飲める(写真部・杉山英一)
酵母と蜂蜜の香りが複雑に絡み合って鼻に抜ける「ハニーピルス」。匠宿の売店と、人宿町のタップルームで限定販売
静岡醸造

 県外出身者が静岡のクラフトビールの魅力に触れ、静岡に根を下ろしてビール醸造を志す―。県内ではこうした事例が相次いでいる。2022年6月に醸造を開始した「静岡醸造」の福山康大代表(33)もその一人。青森県から移り住み、「ラガー」と「IPA」に特化した醸造所を実現させた。
 県立大国際関係学部入学後、ベルギーやアイルランドの輸入ビールを入り口に、その多様性に触れた。1年間のスペイン留学で欧州のビールを試し、11年春に帰国。担当教官に、前年開業した静岡市初の本格的なビアパブ「ビールのヨコタ」を薦められた。
 「ベアードブルーイング(伊豆市)の『ライジングサンペールエール』に衝撃を受けた。ホップの香りが全面に出ている。日本でこんなビールがつくれるのか」。ライジングサンのようなおいしいビールをつくりたい。将来の目標が定まった。
 在学中から同社でアルバイトし、卒業後は社員に。醸造家としてのチャンスを求めて、アオイブリューイング(静岡市葵区)、フジヤマハンターズビール(富士宮市)で経験を積んだ。
 静岡市内での醸造所立ち上げは必然だった。「海外の街を約20カ所巡ったが、静岡が世界で一番過ごしやすい。人、食べ物、お酒がいい。気候や治安もいい。かつては海外志向だったが、静岡の方が魅力的だと気づいた」
 縁あって観光施設「駿府の工房 匠宿[たくみしゅく]」内に醸造所を開設することになった。福山さんが全幅の信頼を置く折山徹郎醸造長(33)は長野県生まれ。サッポロビール静岡工場(焼津市)の研究所勤務から転身した。「顧客との距離が近い環境でものづくりをしたかった」という。
 クラフトビールメーカーとしては珍しくラガーを追求する。いわば大手と同じ土俵で勝負する形だ。温度管理が難しいラガー酵母を使い、飲み口がすっきりした、副原料の個性を生かしたビールづくりを志向する。静岡の多様な食材との相性を考えた。福山さんは「ラガーの奥深さを探究したい」と決意を語った。(静岡新聞社)

この1杯 蜂蜜の味わいほのかに
 「ハニーピルス」
 静岡醸造は副原料やモルトの組み合わせを工夫した、さまざまなラガービールを主力としている。「ハニーピルス」はピルスナーモルトに3種のホップ、蜂蜜、米こうじを合わせ、ラガー酵母で発酵させた。
 蜂蜜は地元産。福山さんは「近隣の養蜂家から『使ってみないか』と提案があった」と話す。
 アルコール度5%。ドライな口当たりだが、ほのかに蜂蜜の味わいが感じられる。酵母の個性が長く続くのも楽しい。
   ◇
 静岡醸造 2022年6月、醸造開始。JR静岡駅近隣の静岡市葵区人宿町にもタップルーム(パブ)がある。工場は同市駿河区丸子3240の1「匠宿」内。Eメールは<info.shizuokabrewing@gmail.com>

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