静岡市清水区由比地区 サクラエビ春漁好調で活気 歩み続け129年 食も文化も“桜色”の港町【わたしの街から】

 「桜えびの町」―。静岡市清水区由比は日本国内で唯一、駿河湾で操業されるサクラエビ漁の一大拠点だ。1894年12月、旧由比町の漁師が偶然サクラエビを発見してから今年で129年。歴史を重ね、単なる産業の枠を超えて食、文化として地域に根ざす。

 今期春漁期間中の日曜、4月23日午後6時過ぎ、駿河湾に向かって漁船が次々に由比漁港を後にした。2023年春漁は4月4日の初漁以来、ひとまず好調を維持してきた。町の活気はやはりエビの漁獲量に左右される。未曽有の不漁の中で沈んでいた町の空気も持ち直し、サクラエビ関連の商店が立ち並ぶ由比桜えび通りにも観光客の姿が増えた。

100年フードに選ばれた郷土料理「沖あがり」

 吉報は春漁以前にも。3月、国内の食文化振興を目指す文化庁の「100年フード」に郷土料理「沖あがり」が選ばれた。生のサクラエビを豆腐やネギとすき焼き風に煮込んだ料理で、元来は船員の体を温めようと船主が振る舞う漁師飯だった。由比桜海老商工業協同組合の担当者は「ここでしか食べられない由比の味。店への認定証配布などを通じて盛り上げたい」と話す。
 由比地区最大のイベント「由比桜えびまつり」も5年ぶりに復活する。1994年にサクラエビ漁100周年を祝って始まり、サクラエビや地場産品を販売し数万人を集める。今年は時期をずらし6月11日に開催する。
 不漁や資源保護など課題を抱えながらサクラエビ漁と地域は共に歩んできた。129年の歴史が育んだ「桜えびの町」の食と文化を改めて今、楽しんでもらおうと関係者は準備を進めている。

5年ぶり復活 桜えびまつりは6月
 駿河湾産サクラエビの不漁と新型コロナウイルスの影響で開催中止が続いていた静岡市清水区由比の春の一大行事「由比桜えびまつり」が6月11日午前8時~午後2時、由比漁港で5年ぶりに開かれる。
盛況だった5年前の「桜えびまつり」

 地元商店約50店などが漁港内で新鮮な生サクラエビや釜揚げかき揚げなどの料理、かんきつなどの地場産品を販売する。文化庁の2022年度版100年フードに選ばれた「桜エビの沖あがり」も並ぶ予定。
 例年は5月3日の開催だったが、サクラエビの安定供給が難しいとして春漁終了後の6月11日に開催日を変更した。会場に駐車場はなく、実行委は公共交通機関の利用を呼びかけている。実行委の担当者は「新鮮なサクラエビを楽しみに来てほしい」と話した。

江戸期からの「たまご餅」 春埜製菓
 江戸期から東海道由比宿の名物として旅人に愛されてきた「たまご餅」を今に伝える春埜製菓は1926年の創業。東海道中膝栗毛では「さとう餅」として登場し、茶屋などで売られていた。閉業した餅屋から引き継いだ同店のみが製造を続ける。
たまご餅や桜えび最中など和菓子で愛される春埜製菓

 たまご餅は上新粉をつかった柔らかく上質な舌触りが特長で、餅をついてふかした後に冷やしてまたつくという手間暇をかけて作られている。毎日300個ほどが店に並ぶが昼頃に完売する日もあるという。
 たまご餅のほか、オリジナル商品の桜えび最中やうぐいす餅などの季節の和菓子も人気を集める。従業員の石間巳津子さんは「サクラエビ料理を食べた後は甘い菓子をどうぞ」と話した。

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