外傷診療、専門医迎え強化 複雑化する重症患者に対応 藤枝市立総合病院

 高齢化に伴って複雑化している外傷診療の底上げを図るため、藤枝市立総合病院は昨年、緊急性・重症度の高い外傷患者の治療に精通する外傷専門医を救命救急センターに迎えた。近隣病院や消防との連携で患者搬送の集約を目指す。

スタッフと情報共有する角山泰一朗医師(右)ら=藤枝市立総合病院
スタッフと情報共有する角山泰一朗医師(右)ら=藤枝市立総合病院

 外傷医療について、2001年度に厚生労働省の研究班が「外傷死の4割近くが、病院前もしくは病院収容後のさまざまな問題がなければ避け得た可能性が高い死(防ぎ得る外傷死)だった」とし、この割合は「米国における30年前の調査とほぼ一致する」との報告をまとめた。こうした結果を受けてドクターヘリの導入や専門医の育成が進み、横浜市や愛知県など、患者を集約する「外傷センター」を独自に設置する自治体も出始めた。
 藤枝市立総合病院に昨夏赴任した外傷専門医の角山泰一朗医師によると、外傷で救急搬送される高齢者は増え、見た目以上に体内部のダメージが大きいケースや、日常的に「血液をさらさらにする薬(抗血栓薬)」を服用していて止血が難しいケースが目立つ。角山医師は「外傷診療において一番大切なのは止血。判断が遅れ、検査などに時間を取られていては治療に結びつかない」と断言。米国での臨床経験も踏まえ、「米国では専門施設が整備され、迅速かつ標準的な治療が行われているが、日本での治療の質は施設差が大きい」と問題点を指摘する。
 救命救急センターの常勤医は角山医師を含めて10人で、県内トップクラス。昨年、医師が車で直接現場に向かう「ラピッドレスポンスカー」の運用もスタートした。毛利博病院事業管理者は「救急は医療の最初の砦[とりで]として重要。ドクターヘリも活用して重症外傷患者を広域的に受け入れ、救命率の向上に寄与できたら」と話した。

 <メモ>外傷専門医は、重症外傷に対して、限られた時間内に横断的に検査や治療の優先順位を判断し、初期診療のみならず蘇生技能や術前術後の集中治療全体を行う。救急科、外科、整形外科、脳神経外科などの専門医を取得後、さらに臨床経験を積む必要がある。日本外傷学会が認定するのは268人(2022年4月1日時点)。このうち県内の病院に勤務するのは2人。同学会は、重症外傷患者に対して迅速に緊急手術できる施設は人口240万人に1カ所、専門医は全国で最低380人必要としている。

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