最後の別れ 救われる遺族 コロナ感染者の葬儀、制限緩和方針 静岡県内関係者「適正化へ前進」

 厚生労働省が新型コロナウイルス感染で亡くなった人の葬儀や火葬の指針を早ければ年内にも改定し、遺体を包む「納体袋」を不要とするなど制限を緩和する方針が明らかになった15日、静岡県内の関係者は「ようやく遺族が故人と対面して最後のお別れができる」と前向きに受け止めた。

遺体を収める納体袋を手にする葬儀社の関係者=9月、松崎町
遺体を収める納体袋を手にする葬儀社の関係者=9月、松崎町
現行の指針で使用が推奨されている納体袋。透明のもの(右)が普及しているが、透明でないもの(左)が使われるケースもあった=9月
現行の指針で使用が推奨されている納体袋。透明のもの(右)が普及しているが、透明でないもの(左)が使われるケースもあった=9月
遺体を収める納体袋を手にする葬儀社の関係者=9月、松崎町
現行の指針で使用が推奨されている納体袋。透明のもの(右)が普及しているが、透明でないもの(左)が使われるケースもあった=9月

 同省がまとめた改定案のポイントは原則として、納体袋の使用を不要とすることのほか、遺体に触れたら手指消毒する▽通夜や葬儀は執り行う▽濃厚接触者に当たる遺族も感染対策を条件に参列を認める-といった点。
 今年になって新型コロナの重症化率や死亡率がインフルエンザ並みに下がり、県内の医師や葬儀社の社員からは「接触感染する可能性もウイルスの毒性も低く、納体袋は必要ない」「死者の尊厳がないがしろにされている」として見直しを求める声があった。
 今春から納体袋の使用をやめ、感染者の遺体も一般の遺体と同様に扱うよう葬儀社に理解を求めてきた静岡市立静岡病院の岩井一也感染管理室長は「適正な対応に向けて一歩前進した」と受け止めた。故人と最後の別れができるかどうかは病院や葬儀社、火葬場によって差があった。「今後少なくとも、遺族が故人の顔を見ないまま火葬されることはなくなる。改定で救われる人は少なくない」とおもんぱかった。
 県葬祭業協同組合理事長で葬儀社を営む熊沢正樹社長(同市葵区)は「改定案はコロナの実態と社会の現状に即している」と評価し、「故人の親族だけでなく友人などもお見送りできるよう、改定時に緩和要件を明記してほしい」と望んだ。
 県病院協会の毛利博会長は「改定は面会制限を含むさまざまな感染対策を緩め、コロナ前の日常に戻すための工程の一つ」とした。ただ、コロナの感染症法上の扱いが、感染者が隔離される2類相当のままでは葬儀社に混乱を招くことを懸念し「早急に5類への移行を検討する必要がある」と指摘した。

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