浜松・天竜の風力発電 相次ぐ計画撤退 住民の不安解消に努力を【解説・主張しずおか】

 浜松市天竜区で計画している大規模風力発電について、地元住民の理解が得られていない。地元住民の反対などにより、計画の撤退が相次ぐ。自然災害への不安視や建設過程の複雑さが原因。事業者は住民の意向を最大限配慮した計画を作る努力が求められる。一方、住民側にも納得できる説明を要求する姿勢が必要になる。

シーテックの風力発電機の設置を予定する山々=11月24日、浜松市天竜区佐久間町
シーテックの風力発電機の設置を予定する山々=11月24日、浜松市天竜区佐久間町
風力発電事業の実施想定区域
風力発電事業の実施想定区域
シーテックの風力発電機の設置を予定する山々=11月24日、浜松市天竜区佐久間町
風力発電事業の実施想定区域


 同区の山中で最大12基の風力発電機を設置する計画を進めていたJR東日本エネルギー開発(東京都)は先月11日、計画の撤退を市と地元自治連に伝えた。市によると、候補地の風力が見込みより足りないことが同社の調査で判明し、撤退が決まった。厳しい調査結果に加え、計画に対する住民側の理解も得られていなかった。事業区域に一部かかる春野地区自治連は土砂災害の不安が拭えず、風力発電の建設に同意しない意向を示していた。
 風力発電の計画は頓挫し続けている。同区での計画撤退は2012年、21年に続き今回で3社目となった。
 いずれも地元が反対する土地で計画が繰り返された。陸上風力発電の候補地として市が19年に設定したゾーニング計画では、天竜区の土地のほとんどは「立地に課題があり、地元との調整が必要」とし、計画のハードルは高い。同区自治会連合会の大見芳会長は「地域で反対されている場所で(風力発電を)建てようとしている」と疑問を口にする。市は18、19年に地元住民や専門家を招いた説明会を開催した上で範囲を設定した-とし、市の担当者は「事業者が地元住民へ丁寧に説明するしかない」と話す。
 現在は、中部電力子会社「シーテック」(名古屋市)が同区佐久間町と龍山町の山中で最大17基の計画を進めており、24年着工を予定する。さらに、東京都の「浜松陸上風力発電」は同区の天竜スーパー林道沿いに最大12基設置する計画を10月に発表した。
 国内の再生可能エネルギーの普及拡大で、今後も同区で大規模な風力発電の建設を検討する事業者は出てくるだろう。事業区域に該当する地域では、建設による土砂崩れや低周波音のリスクなどさまざまな不安が残る。住民側は安全を約束する協定の締結を求めるなど、地域一帯で事業者側と対等に交渉する努力を図るべきだ。双方の合意がないまま建設が進む状況があってはならない。

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