大自在(12月2日)女性棋士

 今年の将棋の世界も藤井聡太五冠が注目の的だった。富士宮市で10月に行われた竜王戦でも、おやつに何を口にするかに関心が寄せられた。ただ最近まで、なぜ対局の相手が男性だけなのか深く考えたことはなかった。
 女流棋士では史上最強といわれる里見香奈女流五冠が今年、女性初のプロ棋士を目指して男性棋士と対戦する「棋士編入試験」に挑んだが、高い壁に跳ね返された。同じプロといっても「棋士」と「女流棋士」は異なる資格。女性にも「棋士」への門戸は開かれているが、1人も誕生していない。
 なぜ頭脳で競う将棋で女性の棋士がいないのか。いくつかの理由が挙げられている。長時間に及ぶ対局ではスタミナに勝る男性が優位だろう。だが、それほど大きな要因とは思えない。
 プロになるには女性に女流棋士という道も用意されているのに対して、男性には他に道はない。だから真剣味が違うという指摘もある。何よりも、子どもの将棋人口の男女差があまりにも大きいとの理由には合点がいった。
 半世紀以上前の記憶をたどると、挟み将棋、回り将棋、将棋崩しなどは男女一緒に楽しんだが、同年代の女子と本将棋を指した覚えがない。子どものころから男女が同じように将棋に親しんでいたら、とっくに女性棋士は生まれていただろう。
 政治家に女性が少ないのも背景は共通しているような気がする。政治も将棋も、男性がやるものという考えが根強いのではないか。そうした意識を大きく変えるのは、女性首相と女性棋士の誕生か。どちらが先に実現するのか。

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