敬意と創意、バランス良く♪ 佐藤竹善 カバーアルバム第8作

 人気バンド「シング・ライク・トーキング」のメンバーで、SBSラジオ「レコード部屋」のパーソナリティーを務めるシンガー佐藤竹善が、カバーアルバムシリーズ「Cornerstones(コーナーストーンズ)」の第8作「radioJAOR~Cornerstones8~」をリリースした。「シング-」の“育ての親”である音楽プロデューサーの故武藤敏史氏を思って選んだシティ・ポップの名曲9曲(LP版。CD版は8曲)を、オリジナルへの敬意と自らの創意をバランス良く詰め込んで再構築した。

「コーナーストーンズ」シリーズの第8作を発表した佐藤竹善。「LPだけのリリースにしようとも考えた」という
「コーナーストーンズ」シリーズの第8作を発表した佐藤竹善。「LPだけのリリースにしようとも考えた」という

 旧ファンハウスの敏腕プロデューサーとして知られ、コンテストの審査委員長として「シング-」を見いだした武藤氏が亡くなったのは、昨年7月だった。
 「自分の礎となった1970年代後半から80年代前半のシティ・ポップ。その時代を作り上げ、後に僕たちを見つけてくれた武藤さんのトリビュート。この二つの線をつなげようとしたんです」と佐藤。プロ音楽家の何たるかを教わった武藤氏が関わった「ワインの匂い」(オフ・コース)や「出航SASURAI」(寺尾聰)を本作の核に据えた。
 シティ・ポップは、国内外でブームになっているが、曲を選ぶ際は、知名度の高さはほとんど考慮しなかった。「2人組だった頃のオフ・コース、SHŌGUN、CREATION、稲垣潤一さん-。楽曲のクオリティーの高さ、サウンドや演奏の格好良さが重要。『武藤さんがニヤッとしてくれるかどうか』を考えながら選曲しました」
 録音時には、かつて山下達郎から授かった「カバーがまともにできないのにオリジナルうんぬん言っている場合じゃない」との教えが胸にある。今回も同じだった。
 「プロのシンガーは、元の楽曲の表現をどう解釈するかが問われる。なぞりすぎたら物まねに過ぎないし、自分の色を出しすぎるとカラオケになる。千差万別の表現手法から、何を選び取るか。カバー曲では常にそれを意識しています」

珠玉のシティ・ポップ 選曲理由は


 「Cornerstones8」をリリースした佐藤竹善に、収録した一部楽曲について、選曲の理由や自らとの関わりについて聞いた。 photo02 「radioJAOR~Cornerstones8~」ジャケット                  
■「LONELYMAN」(SHŌGUN、1979年)
シティ・ポップのカバーをすることになってまず思いついたバンド。70年代後半という時代なのに、早くも楽曲が全編英語です。当時のスタジオミュージシャンのトップの人たちが集まった〝玄人集団〟で、僕にはシティ・ポップの魂のように感じられました。

■「ロンリー・ハート」(CREATION、1981年)
竹田和夫さん率いるクリエイションは、ブルース・ロックが主体で、海外のシーンからも一目置かれる存在でした。この曲はポップではあるけれどサウンドはあくまでクリエイション。シティ・ポップは玉石混淆だけれど、しっかり芯のあるアンサンブルが聴けます。

■「ワインの匂い」(オフ・コース、1975年)
僕にとってオフ・コース(オフコース)は5人になる前の、小田和正さんと鈴木康博さんのデュオ時代が大きいんです。今聴いても、アンサンブルのクオリティーがとても高い。シング・ライク・トーキングのサウンドに直結しています。

■「青春」(オフ・コース、1976年)
70年代半ばのオフ・コースの楽曲は、シングルか否かを問わず僕の体がスポンジのように吸収しています。この曲はアンサンブルが完璧。だから今回の作品では、スタジオミュージシャンにあえて完コピをお願いしました。

■「雨のリグレット」(稲垣潤一、1982年)
テレビ番組「夜のヒットスタジオ」で偶然、歌っているのを見て一気に引き込まれました。タワーレコードでアルバムを買ってクレジットを見たら武藤さんの名前がある。びっくりしました。
 

12月25日 浜松でライブ
 佐藤竹善は12月25日、浜松市福祉交流センター(同市中区)でライブを行う。2014年から続くジャズトリオとのツアー「YourChristmasNight」の一環。自身がこれまでにカバーしたクリスマスソングや、新作の楽曲をジャズアレンジで披露する。
 開演は午後5時。料金などの問い合わせはSBSラジオのEメール<record@digisbs.com>へ。

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