巨大市場「手が届くEV」準備 鈴木俊宏社長に聞く【インド戦略、深化へ スズキ進出40年⑤完】

 インド事業40周年の節目を迎えたスズキ。国土は日本の約9倍、人口は約11倍の巨大市場で、中期経営計画で示す「乗用車市場シェア50%以上」の継続的な獲得に何が必要か。鈴木俊宏社長に戦略を聞いた。

鈴木俊宏社長
鈴木俊宏社長
インドの生産、販売戦略を練るマルチ・スズキの本社=8月29日、インド・ニューデリー
インドの生産、販売戦略を練るマルチ・スズキの本社=8月29日、インド・ニューデリー
鈴木俊宏社長
インドの生産、販売戦略を練るマルチ・スズキの本社=8月29日、インド・ニューデリー

 ―市場動向の変化にいかに対応するか。
 「今はSUV、MPVなど(中大型)に需要が動いている。当社もSUVのラインアップを拡充中だ。ただ、EV(電気自動車)化が進めば、価格的に見て、また小型車に戻るのではないか。その時に備えてしっかりと小型EVを準備する。地場メーカーなどのEVが売れ始めているが、インドで今後、EV化がうまく進行するか不安もある。インフラ準備が整わない中、普及はまだクエスチョン(疑問)だ。この間は、HV(ハイブリッド車)やCNG(圧縮天然ガス)車、バイオ燃料車で対応していく必要がある」
 ―2025年までを目標に掲げるEV投入の進捗(しんちょく)状況は。
 「変更なくやるつもりだ。EVがどういう使い方ができるのか、しっかりと提案していかなくてはならない。前提となる走行距離が違うガソリン車と同じ機能が必要かも含めて考える。スズキの使命は一般の人が手に届く車をどう作っていくかだ。これは日本でも同じ。トヨタ自動車とのアライアンスで開発を進める小型EVのプラットフォームは地域を限定する必要がないし、インドでも使うことを前提に考えている」
 ―シェア「50%」が持つ意味は。
 「現状は40%台の前半。いったん下がれば落ちてしまう。販売網の構築や、インドに根差した車をきちんと造り、歯を食いしばって確保を目指す。1国で1メーカーが50%を確保するのは非常に難しいが、インドのトップメーカーとしてどこまでできるか挑戦していく。人気が高いCNG車も全車種に近い形で増やし、販売台数の3割程度を狙う。(3千店余りの)現在の販売拠点は、全インドをカバーする上ではまだ少ないのではないか。1万は超えていかなくてはならないと思う」
 ―スズキにとってのインド市場とは。
 「生産台数の約6割を占める稼ぎ頭。今後も全社一丸で事業を進める。顧客のため、インドの発展のためにどれだけ貢献できるかが、スズキが置かれた立場だ。今回設立した(スズキ100%出資の)R&Dセンターでは新領域の技術開発を進める。インドの優秀な人材に活躍してもらいたい」

 すずき・としひろ デンソー勤務を経て1994年スズキ入社。専務役員、副社長を経て2015年から現職。浜松市出身。63歳。

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