静岡人インタビュー「この人」 御殿場馬車鉄道の車両復元に尽力した 勝又祐介さん(御殿場市)

 明治から昭和初期まで御殿場市や小山町を走った御殿場馬車鉄道の客車を復元した御殿場馬車鉄道研究会の事務局長。昨年12月にお披露目会を開き、人を乗せて人力で動かした。43歳。

勝又祐介さん
勝又祐介さん

 -御殿場馬車鉄道とは。
 「1898年から1928年まで運行し、最盛期には現在の御殿場駅前と籠坂峠間の約18キロメートルを結んだ。多くの富士登山者が乗車した。当時の東海道線で御殿場に運ばれた物資を山梨県側に運んだ。運転手が鳴らすラッパの音『テトウテトウ』にちなみ『テト馬車』と呼ばれた」
 -復元した理由は。
 「御殿場馬車鉄道を知る人は減っている。地域の人が出資し苦労して作った歴史の継承を目指した。運営会社は経営難から『御殿場馬鹿(ばか)鉄道株スリ会社』と皮肉られたと伝わるが、山梨県で生産が盛んだった絹の搬出の需要を見込み、収益性を勘案していた。そうした事実を伝えるには象徴的なものを作るのが一番だと考えた」
 -復元のこだわり、苦労は。
 「図面はなく、白黒写真が数枚残るだけだったが、できるだけ忠実に復元した。当時全国にあった馬車鉄道の特徴を参考にした。車両を見たことがある高齢者に聞き取りを行い、私がかつて勤めた鉄道総合技術研究所の先輩の助言も受けた。人を乗せるため強度やブレーキは現在の安全基準に合わせた」
 -今後の展望は。
 「来年には馬が引く様子をお披露目したい。色や細部の形など想像の部分も多く、今の車両はたたき台。新しい資料が見つかれば本来の姿に近づける。子どもの地域学習に活用してもらいたい。若者が鉄道をPRし、関連商品開発といった動きが生まれればうれしい。馬車鉄道サミットを御殿場で開きたい」
 (御殿場支局・矢嶋宏行)

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