介護施設にデジタル化の波 職員の負担軽減、利用者も快適

 静岡県内の介護現場に「デジタル化」の波が押し寄せている。現場の人手不足が慢性化する中、介護を必要とする高齢者は今後も増加が予想され、各施設は省力化や効率化を図るため、高齢者の生活状況を自動で把握できるセンサーなどのデジタル機器の導入を急ぐ。職員の負担の軽減により、離職を防ぐ効果も期待されている。

介護福祉施設で導入が進む機器。心拍数や呼吸の状態も分かる=5月下旬、沼津市の老人ホーム「岡宮グリーンヒル」
介護福祉施設で導入が進む機器。心拍数や呼吸の状態も分かる=5月下旬、沼津市の老人ホーム「岡宮グリーンヒル」

 沼津市大岡の介護老人福祉施設「沼津フジビューホーム」は介護用のデジタル機器を導入し、入居者の様子を24時間態勢で見守る。睡眠・目覚め・起き上がり・離床をセンサーで把握し、状態に合わせた対応が取れるようになった。夜間にベッドから転落するなどした場合には通知が届く。
 河野義文施設長は「夜間は2時間おきに介護士が見回りを行うなど、これまでは時間がかかる業務が多かった。機器の導入で職員の負担が軽減され、入居者も熟睡できる。お互いにメリットがある」と話す。
 同市岡宮の老人ホーム「岡宮グリーンヒル」も積極的にデジタル機器を取り入れる。女性職員は「睡眠状況や生活習慣がデータ化されているので、入居者の家族に分かりやすく説明することができる」と導入効果を実感する。
 ただ、デジタル化には課題もある。高額な医療機器は補助金などの制度を活用しないと導入が困難だという。静岡市葵区の老人ホームの女性職員によると「補助金などはありがたいが、それでも入居者全員の部屋に機器を導入することは難しい」。複雑な機器の操作を習得することも必要で、「同僚は40代が多く、覚えるのが大変」と本音を漏らす。
 沼津フジビューホームの河野施設長は「課題は確かにあるが、今後も試行錯誤を続けていく。職員と介護者両方への一助となれば」と期待をかける。
 ■県の補助金申請が増加
 介護職員の身体的・精神的負担の軽減、離職防止や職場定着を図ることを目的に、県は2018年、「介護分野ICT化等事業費補助金」を設けた。
 県福祉長寿局によると、21年度の事業所からの申請は、20年度の1.5倍になったという。「現場の負担を軽減させる成果があった」と手応えを口にする。
 21年度からは助成の対象機器に「移動支援機器」「排せつ支援機器」「コミュニケーション機器」を追加して支援を強化。同局は「今後も支援事業は必要。事業所のICT化、ロボット化が進み、サービスの向上につながれば」と話した。

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