大自在(5月20日)伊東祐親

 伊東祐親[すけちか]という歴史上の人物を伊東支局に赴任するまで知らなかった。今年も伊東市で開催された「伊東祐親まつり」の水上薪能は赴任した1998年に新たな呼び物として初上演された。闇夜に照らされた特設舞台の幻想的な雰囲気を写真で伝えるため撮影に苦労したのを覚えている。
 伊東の名を全国に広めたといわれる祐親は平安末期の豪族。一般には本人より子や孫の方がよく知られている。仇[あだ]討ちで有名な曽我兄弟の祖父で、相撲の決まり手である河津掛けの名前の由来となった河津祐泰[すけやす]の父―などと本紙はこれまで紹介してきた。
 静岡県が舞台となった曽我兄弟の仇討ちは、日本三大仇討ちの一つで、河津掛けはめったに見られない荒技。歴史好きでも相撲に興味がない人には少し分かりづらい紹介の仕方だったかもしれない。
 祐親は放映中の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも登場する。祐親の子や孫はドラマに欠かせない人物ばかり。主人公の北条義時や頼朝の正室北条政子は祐親の孫。頼朝の最初の妻と設定されている八重は祐親の娘である。
 祐親は平家方。八重が敵方の頼朝と逢瀬[おうせ]を重ねたと伝えられる音無神社も伊東市にある。境内で毎年行われる尻つみ祭りは「天下の奇祭」ともいわれる。恒例の尻相撲は、音無しどころか歓声が響き渡る。
 大河ドラマでは北条義時は小栗旬さん、八重は新垣結衣さんと人気俳優が演じている。今年の祐親まつりで静岡新聞は祐親を曽我兄弟の祖父で八重の父と紹介した。この方が分かりやすい。義時の祖父で八重の父でもよかっただろう。

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