社説(4月18日)新茶シーズン到来 生産現場に先端技術を

 日本一の茶集散地、静岡市葵区の静岡茶市場できょう、「新茶初取引」式典が行われ、シーズンが本格スタートする。今季は静岡茶業再生を掲げる県茶業振興計画の初年度でもある。新型コロナ下で今回も制約ある式典になるが、持続可能な構造へと転換を進めることを誓い合い、本県を代表する地場産業が再び輝きを増す契機にしたい。
 本県茶産業を変えるには、茶価低迷で苦境が続く生産現場に先端技術を普及させ、効率化したり、農作業の魅力を高めたりする取り組みが必要だ。
 本県の荒茶生産量は長年、減少傾向にある。農林水産省の統計によると2021年は新型コロナウイルス禍が新茶期を直撃した20年から若干持ち直したものの、3年連続で3万トンを下回り、ピークから半減した。
 県は茶業振興計画の策定に当たり試算した30年までの国内需給見通しで、輸出を含めた緑茶需要量は現状と同程度で推移する一方、荒茶生産量は今後も減少基調が続いて3年後に約9千トン、8年後に約1万4千トンの供給不足に陥るとしている。
 静岡茶を将来にわたって安定供給するには、60歳以上が約7割、50歳未満が1割程度とされる農業従事者の不均衡な年齢構成の改善が欠かせない。茶園に検知器や測定器を配して生育状況を可視化したり、乗用型管理機の走行や農薬散布を自動調整するシステムを採用したりするスマート農業の実装を進め、荒茶生産に関心を持つ後継者や新たな担い手を育て、増やしたい。
 先端技術で省力化や自動化を実現した生産者は稼ぐ力が強まり、ロシアのウクライナ侵攻や円安進行で拍車が掛かったエネルギー価格高騰への対応力もつく。今季は園地管理や荒茶製造、物流など幅広い面でコスト高が懸念される。ただ国内消費の回復の鈍さから最終消費財の価格に転嫁しにくい状況にもあり、増大するコストを吸収できる強固な経営体質が求められよう。
 商工業者には、茶生産者とデジタル技術を活用したデータ共有を図ってほしい。オンライン通販や動画配信などで静岡茶の魅力や機能性を効果的に訴求したり、多様化する暮らしの様式や価値観に呼応した製品・サービスの開発を加速したりすることで、消費者に評価される作物や加工食品を円滑に届ける仕組みを構築したい。
 巨大な産地でイノベーションを推進するには、相応の資金や支援人材の手当てが欠かせない。地域金融機関や経済団体には、本県の特色ある産業の発展に大切な取り組みとして万全なサポートを期待する。

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