リニア訴訟 JR側、権利侵害の主張不十分と反論 静岡地裁

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、大井川流域の住民らがJR東海を相手取り、県内区間(10・7キロ)の工事差し止めを求めた訴訟の第5回口頭弁論が21日、静岡地裁(増田吉則裁判長)であった。JR側は改めて「権利侵害の蓋然(がいぜん)性が主張されていない」と述べ、増田裁判長は原告側に対して蓋然性を明確にする主張の補充を求めた。

静岡地裁
静岡地裁

 JR側は新たな準備書面で、原告側が主張する環境権や自然享有権は工事差し止め請求の根拠にならないと指摘。「私法上の個人の具体的権利や法律上保護された利益とは言えない」などとした。
 一方で原告側は準備書面で、大井川の水の利用状況を市町ごとに挙げ「減水により、大井川流域住民が平穏に生活する権利としての人格権そのものが否定される」などと主張した。
 牧之原市に住む茶農家の男性は、原告側の意見陳述で「工事をすれば地下水と植物共生環境ネットワークは崩れる。下流域で栽培される農林産物や駿河湾の水産業などに悪影響が及び、持続可能な農業技術開発は難しくなる」と訴えた。

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