5類移行から1年、行事元通り 給食も対面、人間関係の悩み増加

 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行して8日で1年がたった。給食の「黙食」や話し合い学習の取りやめなどコロナ禍で多くの制約があった学校は、にぎやかさを取り戻しつつある。「やっと元に戻った」と喜ぶ声が上がる一方、人間関係で悩みを抱える子どもが増えたとの指摘もある。有識者は、学校行事の中止や縮小の影響が残っているとみる。

教室で歌を歌う1年生の子どもたち=4月、東京都豊島区の区立朋有小
教室で歌を歌う1年生の子どもたち=4月、東京都豊島区の区立朋有小

 「友達100人できるかな」。4月中旬、東京都豊島区立朋有小の教室では、入学直後の1年生が口をいっぱいに開けて歌っていた。新入生歓迎行事の練習風景。「大きい声を出し過ぎて、のどがかれちゃう」。男児が得意げに笑った。
 この行事は昨年まで、コロナ対策で歌唱を控えていた。担任の女性教員は「今年は全校に披露できる」と喜ぶ。
 5年生の教室では、児童が机を向かい合わせて給食を楽しんでいた。この数年、前を向いて無言で食べる黙食が当たり前だった。違いを尋ねると、あちこちから「友達と食べるご飯はおいしい」と答えが返ってきた。
 朋有小では5類移行後もインフルエンザが流行。対面での給食は最近ようやく解禁した。石川悦子校長は「授業中に話し合う光景もよく見る。やっとコロナ禍前に戻った」とほっとした様子だ。
 一方、子どもの変化を感じるとの証言もある。関東の県立高校に勤める50代教頭は「友人のつくり方や、関係性をどう維持すればいいのかという生徒からの相談が増えている」と表情を曇らせる。今の高校生は、中学で行事が次々中止になった世代。マスクで表情が見えず、周囲と満足におしゃべりできなかった。教頭は「人との付き合い方を学ぶ機会が乏しかったことが影響したかもしれない」と推測する。
 文部科学省によると、不登校の小中学生は、コロナの制約が残った2022年度に過去最多の29万9048人に達した。教員らからは、対人関係で困難を抱えやすくなったことが一因との見方が出る。5類移行で減るかどうかは見通せない。
 上越教育大の赤坂真二教授(学級経営)は、運動会や文化祭、修学旅行といった行事や生徒会活動が、人間関係を築く重要な場だと指摘。コロナ禍で縮小を余儀なくされ、悪影響は今も続いているとする。「子どもが、なかなか本音を出せず、行事にも積極的に関わりたがらないといった話を聞く。参加を促す仕掛けをつくるなどして、つながりの再構築が求められる。回復には時間がかかるだろう」と話した。

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