【佐野美術館の「岩合光昭写真展『ご当地ねこ』」】47都道府県のネコを一堂に。5月9日は岩合さんによるギャラリートークも

静岡県のアートやカルチャーに関するコラム。今回は4月11日に開幕した佐野美術館の「岩合光昭写真展『ご当地ねこ』」を題材に。展覧会の関連企画として5月9日、写真家岩合光昭さんのギャラリートークがある。
(文と写真=論説委員・橋爪充)

2012年から続くNHK番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」の取材を通じて岩合さんが出合った、日本全国47都道府県のネコたちが集合している。北海道から沖縄に至る、風景とネコを収めた約140点。「完全制覇」とのうたい文句にうそはない。

1970年代からネコの写真を撮り続ける岩合さんの、視点のバリエーションに驚かされる。ある時は画面いっぱいが顔だし、ある時は水を張った田んぼのあぜ道をトコトコと歩く姿をロングショットで捉える。

被写体とカメラの位置関係もさまざま。やはり相手がネコだけに、グランドレベルまで自分の目線を下げるケースが多いようだ。岐阜県の大垣城では、砂利道を闊歩(かっぽ)するネコの背後に天守閣がある。前を向くネコの目線より下から撮っている。地面に横たわるカメラマンの姿が浮かぶ。

ネコ好きも、そうでない人も、さまざまにテーマや切り口を見つけやすい展覧会だろう。個人的には「動」「静」の切り分けで作品を味わった。動のネコ、静のネコ。どちらもネコらしさに満ちている。

「動」の一番手は東京・新宿ゴールデン街の「グッチ」だ。幅3メートルもないだろう昼日中の飲み屋街。無造作に置かれた自転車やエアコンの室外機が、一層道幅を狭くしている。赤や青のポーチ、ステッカーが貼られた電信柱。

この猥雑(わいざつ)な町の真ん中を、こちらに向かって黒白のネコが懸命に走り来る。けなげさより、何か「こうしたいんだ」といった強い意志のようなものを感じる。ゴールデン街の酔客と互角に渡り合うネコ、といったありもしない風景が頭に浮かぶ。物語を喚起させる力は「岩合マジック」と言うべきか。

「静」は何と言っても埼玉県川越市の「すず」だろう。鐘撞通りの石畳に腰を下ろす姿は、清楚かつ高潔なたたずまい。もちろん猫背ではあるのだが、背筋がピンとしているような印象を与える。前足をまっすぐそろえ、どこか貴婦人のような雰囲気。彼女なりの「モデル立ち」だろうか。夕暮れの柔らかい光の中、どこか憂いを秘めた表情も魅力的だ。

人の営みに寄り添うさまざまなネコたち。自分もいつか、彼ら彼女らに出合う旅に出たい。

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■佐野美術館「岩合光昭写真展『ご当地ねこ』」
住所:三島市中田町1-43 
開館:午前10時~午後5時(木曜休館)
入館料金(当日):一般・大学生1400円、小・中・高校生700円
会期:6月28日(日)まで
★岩合光昭さん来館記念イベント ギャラリートーク
5月9日(土)午前11時、午後2時
 

静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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