【第13回静岡書店大賞授賞式 】実石沙枝子さん、小説部門と映像化したい文庫部門をダブル受賞

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は本日12月2日に行われた「第13回静岡書店大賞」の授賞式を題材に。(文・写真=論説委員・橋爪充)

県内の書店員421人と図書館員178人が選ぶ「第13回静岡書店大賞」は、小説部門に静岡市出身の実石沙枝子さんが書いた「扇谷家の不思議な家じまい」(双葉社)、映像化したい文庫部門に実石さんの「踊れ、かっぽれ」(祥伝社)を選んだ。同一の作家の2部門受賞は史上初。

実石さんの小説部門受賞に当たってのスピーチは次のとおり。

 初めて編集部から本をいただくという経験をしたのが、デビュー作のゲラをもらうときだったんですが、それは(2021年の第9回静岡書店大賞に選ばれた)一穂ミチさんの「スモールワールズ」で、静岡の書店さんのめっちゃいいところに並んでいる時でした。私もいつかこの賞をもらえるぐらいの作家になりたいな、それぐらい応援してもらえるようになりたいなと願っていました。その時期はすごく先だと思っていたんですが、こんなにも早くいただけて、本当にうれしいです。ありがとうございます。
  「扇谷家の不思議な家じまい」は造船業で財を成した地方都市に根を張る不思議な一族の90年間の物語なのですが、造船業というのは外へ飛び出していく、というイメージで書きました。多分海が身近な静岡県で育ったのがインスピレーションになっているんだと思います。
 私はデビューから数年程度の、特にヒットも飛ばしていない作家です。物語をめちゃくちゃ積載して、オールも持たずに海へこぎ出していくヤバい船のようなものです。そんな私に小説やりましょうという編集者さんや、売りましょうよって言ってくれる営業さんはすごいギャンブラーだと思います。
 そういう力をいただいて、風や波や羅針盤にして、私はどうにか航海をしています。その航海の先にある港が図書館や書店の皆さんです。
 応援していただけるのは当たり前じゃないですし、いいところに並べていただけるのも当たり前じゃないよなって思います。こうして賞を与えてくださったこと、応援してくださったこと、近い未来も遠い未来も良かったと思っていただけるように頑張りますのでよろしくお願いします。見守っていてください。
 ここにいる方、全員味方だと考えているのでよろしくお願いします。本日はありがとうございました。


 そのほかの受賞作は次のとおり。
【児童書 新作部門】
1位 江口絵理・文、かわさきしゅんいち・絵、藤原義弘・監修「クジラがしんだら」(童心社)
2位 阿部結「どろぼうジャンボリ」(ほるぷ出版 )
3位 さかとくみ雪「ライオンのくにのネズミ」(中央公論新社)

江口絵理さん

かわさきしゅんいちさん

阿部結さん


【児童書 名作部門】
五味太郎「きんぎょがにげた」(福音館書店)

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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