
袋井市のアートスペース「樂土舎」を主宰するマツダ・イチロウさんからずっしり重い書物が届いた。
量ってみたら1.5キロ近くあった。黒々とした堅牢な装丁。デボス加工でアルファベット表記のタイトルが刻まれた表紙をめくると、漆黒のページがいくつか続いた後、村松さんのインスタレーション作品のモノクロ写真が次から次へこちらに迫ってくる。
1953年生まれの村松さんのキャリアを振り返る内容と言っていいのだろうか。一番古いものは1981年、東京の真木画廊で開いた個展。鉄板、メタルラス(金属製金網)、石こう、木材で630×800×250センチの空間に手を施した。規則的な網の目を浮かび上がらせながら、ところどころひび割れたり、はがれ落ちたりしている白い壁が正面に屹立する。無機物だけで構成されているのに、画面左からの光の入り方も相まって、「鎮魂」「祈り」といった人間の行為を連想させる。
モノクロームのざらついた写真の質感が、少しずつ胸の中に沈殿していく。1982年の法政大学学生会館(東京)、2008年の月見の里学遊館(袋井市)でのカットが多い。後者は同館で開かれたアートフェスティバル「里の秋・創造学校」の作品だろう。当時の静岡新聞記事で「高さ6メートル超」と伝えられる巨大な鉄の円柱の足元で、無数の自然石が身を寄せ合っている。
そこに身を置いていないのに「インスタレーション」としての心のざわつき、ざわめきがある。写真の力であり、作品の力である。国内外で絵画や彫刻を超えた「インスタレーション」という概念が広がり始めたのは1970年代とされるが、村松さんはかなり早い時期からこの形式に取り組んでいたことになる。特に1980年代の作品については、作品そのもの以上に「これを見た人はどう感じただろう」という想像を巡らすのが楽しい。
作品集は2026年2月14日から3月15日まで、浜松市中央区の「ギャラリーCAVE」で開かれる個展(土日曜のみ)で販売される予定。
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