​【吉原祇園太鼓セッションズ (富士市)の初アルバム「Taiko!」】青は藍より出でて藍より青し。おはやしの進化形=音楽の本質がここにある

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は、2025年8月20日にCDと配信でリリースされた吉原祇園太鼓セッションズ (富士市)の初アルバム「Taiko!」を題材に。

2015年結成の9人組「吉原祇園太鼓セッションズ」の11曲からなる初アルバム。結成から10年をかけて、ゆっくりゆっくり培ってきたおはやしビートの、まさに「結晶」がここに詰まっている。

日本酒を思い浮かべた。この作品は袋取りの酒である。熟練の杜氏が整えたもろみを酒袋に入れてつるし、ぽたりぽたりと落ちる極上の滴を時間をかけて瓶に受け止めた。そんな音がする。

富士市吉原に伝わるおはやしを換骨奪胎、音楽として前に進めている。「おはやしにファンク、レゲエ、中南米音楽を取り入れた」という表現では弱い。このバンドは地元のおはやしを音楽として再構築している。おはやしという古民家を一度解体し、海外の各種音楽を最新の建材として招き入れ、最終的に大伽藍を組み上げている。音楽はこうやって進化していくのだ、と実感できる。

吉原のおはやしには大きく分けて「にくずし」「おだわら」の2曲があるという。スローテンポでシンプルな「にくずし」。威勢がよく力強く「おだわら」。極端な言い方をすれば「Taiko!」には、この2曲+アルファしかない。

だが、メンバーの想像力と創造力によって、このおはやしグルーヴが細野晴臣さんの「蝶々さん」やスカタライツ「FUGITIVE 」などに無理なく接続されていく。おはやしを藍に例えるなら、出てきた楽曲は藍より青い。

白眉は最終トラック、スカタライツもカバーしたというフィリピン民謡 「ダヒル・サヨ」。ゲストボーカリストのナツ・サマーさんの歌声とサックスの乾いた音に乗せた、胸が締め付けられるようなメロディーに「夏の終わり」をイメージした。

(は)

<DATA>
吉原祇園太鼓セッションズの東京での初ライブが決まった。
■AJATE鑑賞会
出演:AJATE、吉原祇園太鼓セッションズ、AMA UU(DJ)、SHOCHANG(同)
日時:9月4日(木)午後7時半開場
※吉原祇園太鼓セッションズは午後8時半頃に登場
会場:渋谷ROOTS(東京都渋谷区宇田川町11-6 渋谷宇多川KKビル3階)
入場料:1000円

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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