『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』でフィーチャー!シャリア・ブルは富野監督の初期構想から存在していたキャラだった

SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回は『機動戦士ガンダム』の初期案についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

『ガンダム』の初期構想とシャリア・ブルに込められた想い

『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』(以下「ジークアクス」)では、『機動戦士ガンダム』に登場したシャリア・ブルというキャラクターがフィーチャーされています。このキャラクターは、実は富野監督が最初に書いたガンダムのストーリーの叩き台の時点から存在していた人物なんです。

『機動戦士ガンダム』の放送は翌1979年4月。企画はその前年の78年夏に始まります。夏から秋にかけて、富野監督はすでにある程度まとまったアイデアを書き起こしていました。1978年8月28日付で、「ガンボーイ・アプローチ」という、こんな作品を作りたいという趣旨のメモが残っています。そこから徐々に具体的な内容が固まっていき、12月に新企画「ガンボイ」となり、最終的に「ガンダム」としてスタートします。

初期段階で、富野監督は1年のテレビシリーズを想定していました。1年ということは全52話。富野監督はまずメインの物語として、6話ひとまとまりを1ブロックとする、7つのエピソードを構成していました。つまりこれで42話分。あとの10話は再放送や番外編を加えて、52本で1年にするというプランです。1話完結ではなく、ストーリーの連続性を意識していたことがわかります。

第1ブロックは「大地」。主人公がロボットに乗って飛び立ち、戦争に巻き込まれていきます。第2が「前線」。ここで戦いが本格化します。このときのメモには様々な敵キャラが記されており、TVシリーズでは脱走兵として描かれたククルス・ドアンも、当初はかなり強いキャラクターとして設定されていました。そして「鬼神」「さすらい」「激突」と続き、第6の「誕生」では序盤に登場した敵役のシャアが復活。そして第7ブロックの「深淵」で、主人公は敵であるシャリア・ブルと対話をする、という大まかな流れが組み立てられていたのです。

10月30日付で「ラストメッセージ シャリア・ブルとの対話」と記されたメモが残されています。ここで、主人公はシャリア・ブルと人類の未来について語ります。富野監督は、かなり初期の段階から「エスパー的な存在を導入し、人類の進化を描きたい」と考えていました。78年11月3日付の資料には、「最後の人類の進化を語るメッセージ」として、「レギュラーの中にエスパーの導入あり得る」と記されており、後に作成された人物相関図では、星印の付いたキャラクターがエスパーである可能性が示されていました。このような構想の中の重要人物としてシャリア・ブルは想定されていたのです。

しかし、実際にTVシリーズを制作していく過程でシャリア・ブルの立ち位置は大きく変化し、本編では、木星帰りのニュータイプというゲストキャラクターで登場することになります。初期構想の段階でシャリア・ブルが担っていた役割は、ララァ・スンという少女が担うことになります。この点で、第41話でおこなわれた主人公アムロと、敵のララァ・スンとの対話の原型は「ラストメッセージ シャリア・ブルとの対話」にあると考えていいでしょう。

では、シャリア・ブルは1話だけのゲストキャラクターで終わってしまったかというと、そうではありません。富野監督のノベライズ『機動戦士ガンダム』(全3巻)では、後半にシャリア・ブルと、TV本編には登場しなかったクスコ・アルというふたりが、かなり重要な役割を果たすようになります。富野監督の中でシャリア・ブルは、依然大きな存在を持っていたのです。それがめぐりめぐって、『ジークアクス』で主人公と対峙するキャラクターとしてシャリア・ブルが再登場したというのは、非常に面白い流れだと感じました。

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