
アーツカウンシルしずおかの「文化芸術による地域振興プログラム」の助成事業は5年目に突入した。東京五輪・パラリンピックの文化プログラムの推進委員会を土台として発足。まちづくり、観光、福祉、教育、産業などさまざまな分野と文化芸術が協働する「アートプロジェクト」の実践例がどんどん積み上がっている。
文化プログラムから移行した直後は、県民の多くが「アートプロジェクト、はて?」という受け止めだったのは否めないだろう。だが事業採択された各団体の活動が、年を経るごとに県民の生活にじわじわと入り込んでいる。

加藤種男アーツカウンシル長は、組織の発足当初から「全ての県民を表現者にする」というコンセプトを語ってきた。これをしつこく言い続けてきた。27団体の代表が集まった今年のキックオフミーティングでも口にした。そして、次のように続けた。
「芸術、文化はこれまでどちらかというと専門的な人が作って、大勢の“われわれ”が鑑賞するものだった。“作り手”の立場は専門家が独占しているようなところがあった。この独占から(文化芸術を)解き放ち、誰もが“作り手”に参画できる仕組みを考えたい。専門の表現者を排除するわけではないが、もっと一般的なところにウエイトを置きたい」
加藤さんはこれまで「県民誰でも表現者」の説明に、床の間の生け花をたとえ話として使っていた。何気ないテーブルの一輪挿しも「表現である」としていた。今回の発言も「生け花」論と地続きであるが、さらに一歩踏み込んだように聞こえた。
県民の創造性とは何か。「既存の素材を活用して、何か一ひねりして新しいものを付け加える」と説明していた。それが結果的にまちづくり、産業に寄与し、福祉、教育の領域との接点を持ちうるという。なるほど。
アートと異分野の掛け合わせでどんなことが起こるのか。4年間の実験と実践を経て、さまざまな成果が「見える化」されつつある。コツコツ積み重ねてきた各団体と、アーツカウンシルしずおかの面々に敬意を表したい。
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