「自分の命を守るのは自分自身...新たな情報で安心度が増せば」海底地震津波観測網の最前線 地殻変動の観測から探る巨大地震の姿【わたしの防災】

「わたしの防災」です。30年以内の発生確率が「80%程度」に引き上げられた南海トラフ地震。地震の発生をいち早く捉えるとともに、地殻変動の観測から巨大地震の姿を明らかにしようとする研究が進められています。

茨城県つくば市にある防災科学技術研究所です。

<防災科学技術研究所 青井真研究領域長>
「こちらはですね、全国にあります地震の観測点からリアルタイムでデータが入ってくる。そういう部屋になっています」

全国約2100個の地震観測点からデータを収集。気象庁の緊急地震速報などに活用されています。取材中にも…。

<青井真 研究領域長>
「ちょっと待ってください、地震起きました。これ」

<防災担当 和田啓記者>
「能登の余震ですか?」

<青井真 研究領域長>
「そうですね。たぶん近くにいれば体感くらいの地震ですね」

今、特に力を入れているのは海で発生する地震や津波を素早く検知するための「海底地震津波観測網」です。東日本大震災を引き起こした「日本海溝」や南海トラフ地震の想定震源域をカバーし、さらに西の高知県沖から日向灘にかけての観測網(N-net)も整備しています。

<青井真 研究領域長>
「こちらに以前起こった地震の観測データを持ってきています。この赤い星印が書かれているところで地震が起こっています。星印が消えてここの丸が色が変わってきていますけどもこれは海底においた地震計が揺れを捉えた証拠。右上の水色の波形見ていただくと地震が確かに起こっていますけども、揺れがまだ陸に届いてないので海底の観測網S-netがなかったころであるとまだ我々は地震が起こったことを知る術がなかったわけですけども、こういうふうに揺れが陸に届くと右下にありますように確かに陸域の観測網でも地震が捉えられているということで、今この動画は1倍速再生していますので、私が説明をしていた約22秒早く地震が捉えられたということになります」

海底に観測網があることで陸地の地震計より20秒ほど早く揺れをキャッチできました。緊急地震速報や津波警報などをいち早く発表することで命を守る行動につながると期待されています。

<青井真 研究領域長>
「最後自分の命を守るのは自分自身ですので、そういう防災情報だけじゃなくて揺れたら逃げる、あるいは警報が出たら逃げる、そこにさらに新たな情報が加わって安心度が増せばということでこういうような情報が使われていけば我々としては研究のやりがいがあるというふうに思っています」

一方、駿河湾では海底での地殻変動の観測が進められています。静岡大学と東海大学海洋学部の共同研究に同行しました。海側のプレートが陸側のプレートに沈み込み、それが跳ね返ることで発生する巨大地震。駿河湾の観測ではプレートの動きを捉えようとしています。

<静岡大学 生田領野准教授>
「海の底に沈めたトランスポンダー(海底局)の位置を正確に決めようとしています。(海底局が)海底と一緒に動いていますので、海底の動きが見えるということになります」

あらかじめ海底に沈めてある海底局と船の観測機器との間で音波のやり取りをします。海底局の位置に変化があればプレートが動いたということになります。深い海では通信が難しいといいます。

そこで、船を動かしながら毎月4時間、約2000回の音波のやり取りをして観測の精度を高めています。

<生田領野 准教授>
「これですね、ピーピピっていう。音波が返ってくるのを拾っています。大体8秒おきに出していてすごくいい波形ですね。戻ってきた音波が捉えられています」

観測を続けた結果、海側のプレートが陸側のプレートを年間2.5センチから3センチ押し込み続けていることが分かりました。170年前の安政東海地震から陸側のプレートが5メートルほど縮んだ計算になります。

<生田領野 准教授>
「それまで溜まっている分が全部解放されたら5メートルプレートの境界が動くということになります。M8の地震に相当するような滑りは起こるでしょうと」

駿河湾での研究からも南海トラフ地震は着実にエネルギーをため込んでいることが分かります。地震や津波の観測網は日々、充実してきています。その情報を生かして私たちが命を守る行動を起こすことで初めて効果が発揮されます。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

人気記事ランキング

ライターから記事を探す

エリアの記事を探す

stat_1