103万円の壁「どこまで上げられるか 自公や財務省との戦いに」政局のキーパーソン 国民民主党・榛葉賀津也幹事長に聞く
衆議院議員選挙を受けた特別国会が11月11日に召集される前に、各党の動きが活発になっています。自民党の惨敗に終わった今回の衆院選では、野党、特に国民民主党は、議席数を公示前の7から、4倍の28に伸ばす大躍進をみせました。静岡県内でも、4区で初めて小選挙区で勝利を挙げました。猛追を見せた野党勢力の結集はどうなるのか。政局のキーパーソンのひとり・国民民主党の榛葉賀津也幹事長(参議院静岡選出)に迫りました。
<LIVEしずおか 滝澤悠希キャスター>
各党と目まぐるしく会談をしている中で、大変忙しいとは思うのですが、やりがいなど、いかがでしょうか。
<国民民主党・榛葉賀津也幹事長>
国会勢力が大きく変わりましたから、今まで通り与党の思う通りにはならないということでは、大変景色も空気も変わりました。
<滝澤キャスター>
国民民主党は大幅に議席を伸ばしたわけですけれども、改めて、その要因をどう分析していますか。
<榛葉幹事長>
野党各党がほとんどこの裏金問題、政治とカネの問題で与党を追及した。立憲民主党の野田代表は、ある資料によると、9割以上この演説で政治とカネの問題でした。ところが我々はもう国民がこの政治とカネの問題で怒っているというのは、当然ですから、与党がだめなら野党は何をしてくれるんだと。
いま、一番困っているのがデフレから脱却するけれども、なかなか消費に回すお金がない。手取りを増やして経済をしっかり上げていこう。そこで経済成長、特にいままでスポットが当たらなかった「103万円の壁」。これは学生さんやパートさんなんですね。これは我々が見つけたというよりも、国民の皆さんからこういうものをやってくれと、国民から来た政策を我々が訴えて、これが大きく期待が膨らんだということだと思います。
「政治は国民が動かせるんだ」
<滝澤キャスター>
しっかり政策を訴えたことが響いたという考えですよね。
<榛葉幹事長>
これは画期的なことで、どうしても野党はどっちかというと、左にエッジを効かせて、与党は右にエッジを効かせるんですけれども、我々は真ん中のことを政策を愚直に訴えて、それで躍進する。本当に政策を訴えて、選挙に勝てるんだと。真っ当なことを言って選挙に勝てるんだと。これは大きな政治だけではなくて、選挙も大きな変革をもたらしたと思います。
<滝澤キャスター>
週末に行ったJNN世論調査の政党支持率では、国民民主党は9.1%、前回の1.5%に比べて、大幅にアップしています。立憲民主党と比較しても、上昇率の高さがわかると思うんですが、この追い風をどう感じていますか。
<榛葉幹事長>
今までどんなに頑張っても、立憲民主党のみならず、日本維新の会や公明党、共産党を抜くことができなかったんですけれども、今回、公明党、日本維新の会、共産党を抜いて9.1%。立憲民主党が衆議院はいま150人ですから、国民民主党は大きくなったといっても28人。にもかかわらず、立憲民主党が12%で、国民民主党が9.1%というのは、相当期待されているので、政策実現をすることによって国民民主党の支持率を高めたいからではなくて、政策実現をして、県民・国民の皆さんにやはり政治は国民が動かせるんだという実感を共有してほしいと思います。
<LIVEしずおか 井手春希キャスター>
「選挙から1週間が経ちました。政局の中心はいま、国民民主党という状況ですが、これまでと変わった点などありますか」
<榛葉幹事長>
自民党・公明党で過半数ないわけですから、どこかの野党が協力をしないと1本も法律は通らない。予算も通らない、人事も通らない。そこでやはり我々がずっと結党以来、4年間訴えてきた「対決より解決」だと。反対するけども、反対する際には必ず対案を出す。いいものはいい、ダメなものはダメ。この姿勢が我々はずっとやってまいりましたから、当然少数与党からすると、何でも反対の野党ではなくて、対決に解決の政党とまず交渉したいというのは普通だと思います。
「103万円の壁」今までスポットライトを当ててこなかった
<滝澤キャスター>
追い風が吹いている中ですが、続いては国民民主党が訴えている政策についてです。やはり、いま最も注目されているのが、「年収の壁の引き上げ」についてです。玉木代表は今回、「絶対にやりたい」という話をしています。具体的に見てみますと、基礎控除などを拡大し、年収103万円の壁を178万円まで引き上げたいということでした。
これによって、さまざまな世帯に恩恵があります。玉木代表のSNSの発信なんですが、例えば、年収200万円の世帯では、減税効果が8.6万円。800万円の世帯では22.8万円という試算を出しています。静岡市内で働く人に話を聞くと、実現への期待の声が聞かれました。
静岡市葵区にあるスーパーです。「103万円の壁」がパート従業員らの“働き控え”を招いています。
<パート従業員 橋本理恵さん>
「働ける時間はあるんだけれども、税金のことを考えると計算して働かなきゃいけない。もうちょっと働こうと思えば働けるのに、壁があることによって働けない」
時給を1,100円とした場合、103万円を超えないようにするには、1か月の勤務時間を78時間程度に収めなければいけません。
<パート従業員 橋本理恵さん>
「いま(1日)4時間。6時間ぐらいは働きたい」
泣く泣く勤務時間をセーブしていて、特に11月から12月にかけては人手が不足すると言います。
<田子重セナ店 内記寿治店長>
「時給が上がるにつれて減って、今は(月に)75時間とか、80時間切ることが普通になってきて、その分人材を確保しなければいけない、店としては。その辺がすごく大変」
10月に最低賃金が引き上げられましたが、「壁」は103万円のまま変わっていません。今回の制度の見直しには、期待を寄せています。
<田子重セナ店 内記寿治店長>
「人材確保できるのはお店としてはうれしい。皆さんがお金をいっぱいもらえて、給料が上がって生活が豊かになってくれることが一番の望み」
一方、パート従業員からはこんな声も…
<パート従業員 山本支麻さん>
「103万の壁がなくなったとしても、すぐに106万があるじゃないですか。そっちも底上げしていってもらえれば、もう少し働きやすくなるんじゃないかなと思います」
<滝澤キャスター>
働きやすくなるという声もありましたが、どう聞いていましたか。
<榛葉幹事長>
これは2つあって、1つはいま、人手不足。働きたいんだけれども、この壁があるから働くのをやめてしまう。結果、外国人労働者などに頼らざるを得ない。そして、もう1つは、この国の景気を元気にして、景気回復をしてデフレから脱却しなければならないのに、GDPの6割強が個人消費ですから、手取りを増やさなければいけないんだけど、103万円に抑えられるわけです。この30年間で最低賃金というのが1.73倍に上がっているんです。ところが、壁はずっと30年間103万円のままですから、時給が上がれば上がるほど、すぐ103万円に到達して働くのをやめなきゃいけない。こんな制度、早く変えなきゃダメというのは、もうみんなわかっていたけれども、今まで政治がここの分野にスポットライトを当ててこなかったんです。
<滝澤キャスター>
一方で税収の減少の懸念なども出ています。この辺のハードルはどう感じていますか。
<榛葉幹事長>
税収の減少と言いますけれども、200万円で8万6,000円、200万円で生活されている方の8万6,000円の減税というのは、非常にありがたいと思います。1,000万円の方々は、22万8,000円ということで、これはいろいろな調整があると思いますけれども、そもそも、これをやっているのも、すぐネガティブキャンペーンで「財源がない」とか言っていますけれども、日本はこの4年間、過去最高の税収をずっと取り続けているんです。
2023年8月から2024年8月で税収の取り過ぎが25.8%、こんなに税金をとっておいて、国の財源はというと、7兆円を国民の皆さんに渡すわけですから、これは使ってもらえばいいわけですよね。経済も活性化する。税金も増えると。加えて、2023年、財務省が使い切れなかったお金は7兆円。その前は11兆円。使う予定のものを使っていないんだから、財源はあるんです。外国為替資金特別会計だってもうボロ儲けですから。税金は財務省のものじゃないので、国民に返して、積極財政で消費を回してもらうと、すぐ財務省は反対して、ネガティブキャンペーンをやるんですけど、負けないですよね。
予算通過のタイミングで大きな変革が
<滝澤キャスター>
一方で、高所得者に有利な制度・仕組みなようにも思うんですけれども、それについてはどう捉えていますか。
<榛葉幹事長>
そこはさまざまな調整があると思いますけれども、例えば1,000万円の方が22万円減税になっても、消費に回るでしょう。ただ、ここからの交渉は、我々はこの最低賃金が1.73倍なので、それを比率すると控除が178万円。これをどこまで上げられるか。ここが恐らく、今後、自民党や公明党と財務省との戦いになるでしょう。いま、公明党は非常に我々に理解を示してくださっているので、これからの交渉がヤマになると思います。
<滝澤キャスター>
この数字は最も実現したいもので、ここについては議論して変わっていく可能性があるということですか。
<榛葉幹事長>
もっと言うと減税は、これだけじゃないので。例えばガソリン税、1リッターあたり53.8円をとって、買ってもいないガソリン税にまた消費税を乗せたり、電気代も高い。電気代、ガソリン税こういうのも全体的に下げていく。消費税も5%でいい、一律。消費をどんどん回してもらえば。いまは減税をやる時です。
<滝澤キャスター>
続いて、各党との関係について聞きます。さまざまな党と協議をしているわけですが、基本的には政策ごとに協議をしていくというのが、国民民主党のスタンスだと思うんですが、この各党との距離感を同じように保つのは難しくないですか。
<榛葉幹事長>
我々はとにかくいま、与党が過半数ないので、与党とも等距離、特に政治改革。政治とカネの問題は、立憲民主党としっかり協調してやっていかなければなりませんし、今国の国会改革も、それから政治改革も、税制改革もいま、大チャンスなんです。ですから、自民党の足を引っ張るためとか、選挙に勝つためではなくて、国民のためにどういう政治を変えていくか。これはいま、本気でやる大チャンスですから。なので、我々は各党と等距離でやっていく。改革は、日本維新の会も真剣にやっていましたから、維新とも連携するとか、しっかりと連携してやっていくということになるんだろうと思います。
<滝澤キャスター>
最後に国政が今めまぐるしく変わっていく中ですが、どういうものが望ましいと考えていますか。国政が今後どうあるべきだと感じるでしょうか。
<榛葉幹事長>
やはり、国民に近くて、本当に国民の皆さんが望む政治を実現する。ただ、これは石破内閣今後若干不安定になる可能性があります。石破氏というのは正直、自民党の中であまり人気なかった。しかし、国民から人気があったので、この国民人気がある石破氏で何とかこの局面を乗り切って選挙で勝とうという作戦だったんですけども、選挙で負け、国民からの信頼もなくなったというと、このまま、石破氏で参議院選挙を戦えるかというと、自民党参議院の声を聞くと、それだけは勘弁してくれと。したがってこの春、予算が通るあたりに与党内で大きな変革があるかもしれない。
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