富士山“入山料”2,000円「ちょうど良い」が6割…山梨は義務化も、静岡は「検討中」のワケ
3月4日、山梨県で条例案を可決され、2024年夏から山梨側から登る人は義務として2,000円を支払うことになります。一方、3つの登山道を抱える静岡はどうするのでしょうか。
<会議参加者>
「地元関係者との合意形成もなく、このようなことが県主導でどんどん決定してしまう」
「地元の山小屋組合の全員反対という意見を押し切ってやったと。そんなに無理してやる背景はいったい何なのか」
3月13日、山梨県富士吉田市で行われた富士山の環境整備などを協議する会議。地元の不満が噴き出ました。ほこ先は、山梨県議会が4日に全会一致で可決した富士山の「入山規制案」です。
その内容とは、
▽通行料2000円を徴収
▽吉田口にゲートを設け深夜帯の通行を制限
▽登山できる人数も4000人に制限するというのです。
背景にあるのが、後を絶たない無謀な弾丸登山。これを何とかしたいと思い切った策を打ちましたが、地元から思わぬ反発を受けてしまいました。
「2,000円」って高い?安い?
<長崎幸太郎山梨県知事>
「それだけのお金をご負担いただいても、登られる方のご理解は間違いなく得られると思う」
今回、特に注目を集めたのが入山料。これまでも、保全協力金として任意で1000円を集めてきましたが、今度は義務。みなさんはこの値段設定、どう思いますか。
<東京在住の女性「ちょうど良い」>
「2,000円なら払えるかな。1,000円なら安いけど」
<山梨・富士吉田市在住の男性「高い」>
「寄付金もあるからトータル3,000円。地元の人間としては手軽に登ってもらいたい」
<静岡・富士宮市在住の女性「ちょうど良い」>
「(富士山の環境)維持のためにはそれぐらい必要かな」
<東京在住の男性「ちょうど良い」>
「インバウンドでスポット化しているので(2,000円は)いいじゃないか」
30人に聞いたところ、結果は「ちょうど良い」が6割、「安い」と感じた人も2割いました。では、静岡はどうするのか。どうも簡単にはいかないというのです。
<静岡県富士山世界遺産課 大石正幸課長>
「静岡県で規制や通行料の徴収を考えると大きく2つの課題がある。山梨県側は8合目以下は県有地だが、静岡は県有地ではない」
比較的、自由が利く山梨側に対し、静岡側はゲートひとつ作るにしてもさまざまな調整が必要なのです。さらに…。
<静岡県富士山世界遺産課 大石正幸課長>
「山梨はほとんどの方が通る道は地形的に絞り込めるが、静岡側は登山口によってはいろんなところから入山できる状況がある」
富士山には山梨側に1つ、静岡側には富士宮、御殿場、須走と3つの登山口があります。中でも御殿場口5合目付近を見ると山頂へと続く道は5つもあるのです。
各ルートすべてにゲートを置くだけでも莫大な費用がかかり、1人2,000円の徴収では賄いきれません。ならば、登山道が1本化される場所で徴収を、という声もありますが、標高の高い場所で24時間対応ーというのは、現実的ではありません。
そこで、静岡は2024年の夏はこんなアイデアを考えました。
「普通に考えてもこっちに流れてくるだろうなと」
<静岡県 川勝平太知事>
「登山者が山小屋宿泊予約の有無や登山計画等の情報を事前に登録するウェブシステムの構築に取り組みます」
<SBS NEWS DIG 金國賢一>
「富士山二合目水ヶ塚駐車場です。静岡県は今年の夏、ここから富士山を目指す人に対し山小屋を予約したかなど、スマートフォンなどを使って確認したいと考えています」
ただ、これはあくまで実験段階で強制力はありません。そこで心配なのが、登山料の支払いを嫌う登山客が静岡側に流れ、結果的に登山客が急増するのではないかということです。
<富士山表富士宮口登山組合 池田裕之組合長>
「普通に考えてもこっちに流れてくるだろうなと。夜の弾丸登山が増えると、今度は静岡側がてんてこ舞いになってしまう」
こう指摘するのは、富士宮口の山小屋で作る組合の池田裕之組合長です。一方、従来のままではいけないと今回の規制に期待も寄せます。
<富士山表富士宮口登山組合 池田裕之組合長>
「本当にお金のかかる富士登山になってきているが、それも富士山を守る観点からみればしょうがない。だから僕らも知りたい。山梨の規制の成果を」
実は静岡県では、富士山の地元とともに「エコツーリズム推進法」という法律の活用の検討を始めることにしました。この法律は、環境保全と観光活用の両立を図るためのもので現在、屋久島などで26地域で適用されています。認定を受けると入れる人数の制限や手数料という形での徴収も可能となります。
今回の規制が効果を発揮するのか、そして、弾丸登山などの問題解決につながるのか、しっかり見ていく必要があります。
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