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静岡県知事選 投票率にも注目 異例の超短期決戦、影響は【ニュースを追う】

 川勝平太前知事の突然の辞職に伴う知事選(26日投開票)には、6氏が立候補し、静岡県内を駆け回って舌戦を繰り広げている。川勝氏が初当選した2009年以来、15年ぶりの新人同士の戦いだが、異例の超短期決戦の中で各候補が県内全域でどの程度浸透しているかは未知数だ。低投票率の場合は組織力で勝る陣営に軍配が上がるとの見方が根強いが、今回はどうなるか。過去の知事選の投票率を比較し、傾向を分析した。
期日前投票で1票を投じる有権者。投票率の行方も注目される=10日、静岡市役所静岡庁舎
 ■最高は1951年の88%

 戦後、県内では20回の知事選が行われた。過去に最も投票率が高かったのは1951年(88・17%)。戦後の初代知事小林武治氏(47~51年、1期)の任期満了に伴い行われ、自由党の斎藤寿夫氏と社会党の長谷川保氏による新人同士の一騎打ちだった。小林氏は長野県出身で、この選挙は静岡県出身の知事を誕生させたいとする声が盛り上がる中で行われたとされる。富士市出身の斎藤氏と浜松市出身の長谷川氏が戦い、斎藤氏が勝利した。
 一方で、過去ワーストは石川嘉延氏(93~2009年、4期)が初当選した1993年の選挙(35・14%)。石川氏は自民、社会、公明、社民各党などが支持する相乗り候補だった。対抗馬は共産党の坂田博嗣氏のみで、石川氏が8割以上の得票率で圧勝した。
 過去ワースト2の投票率は41・64%で、石川氏が2選を果たした97年の選挙。この時も石川氏は自民、民主などの政党から支持を受ける相乗り候補だった。

 ■2000年以降 50%超3回
 2000年以降の知事選は01年から21年までに6回行われた。このうち、投票率が50%を超えたのは01年(62・15%)、09年(61・06%)、21年(52・93%)の3回。01年は石川氏が3選した選挙で、候補者が5人と乱立した。09年は当時の民主党政権誕生の前哨戦的な選挙となり、民主など推薦の川勝氏が自民推薦候補を僅差で破って初当選した。自民が支援した候補が知事選で敗れるのはこの時が初めてだった。
 17年の知事選では3選に挑んだ川勝氏が、投票率が5割に達しなかった場合「当選しても即辞職する」との見解を示したが、その後撤回した。選挙権年齢の「18歳以上」への引き下げ後初の知事選としても注目されたが、投票率は46・44%にとどまった。
 21年は川勝氏の4選を阻止しようと自民が当時参院議員だった岩井茂樹東伊豆町長を擁立。自民にとっては09年以来12年ぶりの党本部推薦候補で、大物国会議員を応援弁士に迎えるなど総力戦を展開したが、川勝氏が圧勝した。リニア中央新幹線建設を巡る大井川の水問題が争点となり、国やJR東海と対峙(たいじ)する川勝氏の姿勢が多くの県民の共感を得て、浮動票の獲得につながった。

 ■若者の低さ顕著

 若者の低投票率が叫ばれて久しいが、この傾向は40年以上前から変わっておらず、20代の投票率は常に各年代で最も低い。30代は、1990年代ごろまでは全体の投票率と同程度だったが、2000年代に入ってからは全体より10ポイント前後下回るように。20代も含めて高齢層との差の大きさは顕著になり、若者の政治離れは加速していると言える。
 県選管の担当者は「今も昔も若者の政治への関心は高齢層に比べて低い。年齢を重ね、社会との接点が増えるごとに政治への不満が顕在化し、投票に行くようになるのではないか」と指摘する。

 ■西高東低の傾向
 静岡県の全県選挙の投票率は西部地区ほど高く、東部・伊豆地域で低い「西高東低」の傾向がある。過去3回の知事選を振り返ると、いずれも西部、中部、東部の順で推移している。直近の21年の知事選では西部が55・50%、東部が50・12%で、差は5・38ポイントだった。専門家は「今回の選挙は東部出身者がおらず、有権者の関心に影響する可能性がある」と話す。

新人対決、50%超えるべき選挙 ​議会との関係も判断材料に
 過去の知事選の投票率から読み取れる傾向や今回選の注目点について、県内政治に詳しい静岡大の井柳美紀教授(政治学)に聞いた。
井柳美紀静岡大教授(政治学)
 ―知事選の投票率の推移から分かることは。
 「過去最高投票率の1951年(88・17%)は新人同士の一騎打ち、3番目に高かった74年(81・04%)は当選者と次点候補が4千票差の接戦という結果からも、新人による戦いや接戦の場合に投票率が上がる傾向がある。2021年の知事選はリニア中央新幹線トンネル工事に伴う大井川の水問題が争点で、前回選より6・49ポイント向上。明確な争点がある場合も投票率がアップすると言える。一方、与野党相乗りなど、有権者が置き去りになりがちな選挙は投票率が低い」
 ―今回は「地域対決」「与野党対決」などとも言われる。注目ポイントは。
 「地域対決を打ち消す声があるが、候補者の出身地を意識することで各地域が抱える県政への不満が明らかになるのは悪くはない。深刻な対立になるのは良くないが、選挙が終われば、新たな知事が各課題をどう解決していくか、バランスを取っていくべき話だ。与野党対決との指摘については、国政と地方の構図は別だと考えるが、現在の県議会は最大会派の自民改革会議の議員がほぼ半数を占める。誰が当選するかによって、議会と協調的になるか、緊張感がある状態になるかが変わる。知事の議会との向き合い方のあり方も判断材料になる」
 ―投票率はどうなると考えるか。
 「新しい知事を選択できる機会なので重みがある。新人同士の知事選では投票率が上がる傾向があり、今までのデータから見たら50%を超えなければならない選挙。一方、候補者が出ていない東部の関心が下がることが懸念と言える。各候補者はリーダーシップ型や対話を重視するタイプなど、それぞれ違ったリーダー像を持っている。どのような県政の方向性が望ましいと考えるのかも、候補者を選ぶポイントではないか」
 (政治部・池谷遥子)

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