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ふるさと納税、富士市急伸 物価高騰でトイレットペーパーなど紙製品に需要 11月末で8.6億円

 年末にかけて申請が増える「ふるさと納税」で富士市への寄付額が伸びている。本年度は11月末時点で約8億6千万円と、前年同期比で1・6倍に上る。返礼品の大半はトイレットペーパーなど地場産業の紙製品。市は物価高騰の影響で返礼品に日用消耗品を選ぶ納税者が増えたとみている。

返礼品に用いられているトイレットペーパーの製造現場=12月中旬、富士市の春日製紙工業
返礼品に用いられているトイレットペーパーの製造現場=12月中旬、富士市の春日製紙工業

 市は本年度当初予算で想定額を9億円に設定していたが、物価の上昇が話題になり始めた春先から寄付申請が急増した。5月以降は毎月、前年比1・5倍以上の件数を維持する好況を受け、市は11月の本年度一般会計補正予算で想定額を15億円に修正。返礼品の用意や送料に充てるための3億8500万円を計上した。
 返礼品の上位9割が紙製品で、全体の6割を占めるトイレ紙の件数は昨年度の2倍に迫る。次ぐティッシュなども好調だ。
 市産業政策課の渡辺祐華上席主事は「返礼品で日用消耗品を受け取り、家計の負担を抑えようという需要を感じる」とした上で「外食自粛が緩和され、自宅で楽しむ(他市の)高級食材が若干低調なことも関係しているのでは」と分析する。
 返礼品が自宅に直接届く仕組みも、トイレ紙のような大きな荷物を持ち帰る日常の手間を省け、納税者の選択を後押ししている。
 返礼品を提供している同市比奈の春日製紙工業は、11月末時点で873件と、昨年度の年間217件を大きく上回る。久保田雅則社長は「香りや柄付きはもちろん、店頭にあまり並ばない青色や緑色の商品が選ばれる。返礼品がニーズの調査に役立っている」と手応えを口にした。
 「紙のまち」として発展してきた富士市は長らくPR方法に趣向を凝らしてきた。小長井義正市長は「品質の高い紙製品が県内外の目に触れている良い傾向」と受け止める。今後は納税者の継続的な消費行動につなげられるかが求められる。
(富士支局・国本啓志郎)

 人気返礼品 県内も変化
 ふるさと納税の返礼品の需要は県内各自治体でも変化している。
 島田市は2020年から返礼品に加えたトイレ紙やインスタントコーヒーが、現在は総寄付の約半数を占める主力返礼品に成長した。特にコーヒー類は定期便で届くコースも好まれている。
 紙製品など日用品を多くそろえる富士宮市は、数年前からのリピーター層に加えて新たな納税者から注目が集まる。トイレ紙は大手ポータルサイトの日用品欄でおすすめ順の上位に入るほか、乳製品や炭酸水など普段から消費する品々も申し込みが多い。

 ふるさと納税 地方の活性化を目的に2008年度から開始。豪華な返礼品を呼び水とした寄付獲得競争が過熱し、19年度に返礼品は調達額が寄付額の30%以下の地場産品などとする厳格なルールが設けられた。納税者は居住地に翌年度納める住民税が軽減される。起算が1月のため、期限が迫る年末に申請が増える傾向がある。

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