「若者の読書離れはデマ!? 10年で読書をやめたのは、まさかの『あの世代』だった」
気がつけばすっかり日が短くなり、秋の夜長を楽しめる季節になりましたね。皆さんはどんな秋をお過ごしでしょうか。
先日、久しぶりに書店を訪れたところ、話題のベストセラーや静岡にゆかりのある本、新たな発見となる書籍など、気になる本がありすぎて選びきれませんでした。
書店での「一期一会の出会い」を享受できる喜びは格別ですが、このデジタル時代において、皆さんは最近どのように本を購入し、読書を楽しんでいるでしょうか。
そこで今回は、静岡市にお住まいの皆さんの「読書事情」を、SBS生活DATAライブラリの調査データから読み解いてみたいと思います。
下のグラフは毎年11月に実施している「SBS生活DATAライブラリ静岡市調査」にて「最近3か月以内に読書をしたことがある」と回答した人の割合について、10年間の変化を表したものです。

グラフ①を見ると、この10年の間で3か月以内に読書をした人の割合は減少傾向にあることがわかります。最も読書をした人が多かった2016年の28.5%と比べると、2024年は17.8%で10ポイント以上の差が生じています。
ちなみに、2016年は話題作が豊富な年でした。日本出版販売株式会社が公開している2016年の年間ベストセラーの上位には、舞台も話題となった「ハリー・ポッターと呪いの子 第一部・第二部 特別リハーサル版」や住野よるさんの「君の膵臓を食べたい」「また、同じ夢を見ていた」、SNSやテレビでも話題になった岸見一郎さん、古賀史健さんの「嫌われる勇気 自己啓発の源流『アドラー』の教え」「幸せになる勇気 自己啓発の源流『アドラー』の教え」、2015年にピース又吉直樹さんが芥川賞を受賞した「火花」、2016年の芥川賞受賞作・村田 沙耶香さんの「コンビニ人間」など、今でも人気の続く作品が多くラインナップされています。確かに自分も読んだなあと思い当たる方も多いのではないでしょうか。
読書をする人が全体的に減少傾向にあるということは先のグラフで示した通りですが、では、読書をする人の年齢層に変化はあるのでしょうか?
2014年と2024年を年代別で比較したのがグラフ②③です。

グラフ②③を比較すると、大きく目立つのが30代の減少です。2014年には22.2%が「3か月以内に読書をした」と回答したのに対し、2024年調査では7.5%まで減少しています。また、同じく減少傾向にあるのが50代で、こちらも2014年と比較すると10ポイント近く減少しています。
一方で、意外にも大きな変化が見られなかったのが10代です。20代においては減少どころか2014年よりも2024年の方が「読書をした」人の割合が高くなっています。若者の読書離れ、という言葉を耳にする機会がありますが、10代・20代においては読書の機会に大きな変化はないのかもしれません。
この傾向は、「読書離れ」の主要因が、書籍の活字を読む若年層の減少ではなく、ライフステージ(子育て・キャリア形成)が変化する世代の時間の使い方にある可能性を示唆しています。
3か月以内に読書をした人の割合は上述の通りですが、では、静岡市民は1か月あたりにどのくらいの本を読むのでしょうか。平均冊数について10年間の推移を見てみました。

ここでの書籍はマンガは含まない、という前提で回答いただいています。また、電子書籍は書籍に含んでいます。
経年でみると、「本・書籍は読まない」は2019年以降、4割以上で推移しています。一方で、「1冊未満」の人の割合は大きな変化はせずに20%前後を推移しているほか、「2~3冊くらい」や「4冊以上」という複数冊読む人の割合も大きな変化はみられていません。
減少傾向がみられるのは「1冊くらい」と回答した人。2014年には14.4%でしたが、2024年には10.1%まで減少しています。月に1冊程度のライトな読者が「本・書籍は読まない」に徐々に移行し、もともと本をたくさん読まれる方には大きな変化がない、と考えられそうです。
ちなみに、先ほどのグラフはマンガを含んでいませんが、「1週間にマンガを読む頻度」について経年の変化を見たのがグラフ⑤です。こちらは2022年からの調査項目のため、3年間の比較を見てみました。

3年間で比較すると、先ほどの「読書」の減少とは反対に、「マンガは読まない」の割合が減少傾向にあります。一方、「必ず毎日読む」と「決まっていない」は増加傾向にあるようです。こちらはまだ調査年数が少ないため、今後も注視が必要ですが、これは活字離れではなく、読者が娯楽として消費するコンテンツを「書籍」から「マンガ」へとシフトさせている可能性を示唆しています。
さて、少し脱線してしまいましたが本の話に戻りたいと思います。
Amazonや楽天など、ネット上での買い物が用意になったことによって本の購入場所が変わってきた、という人も多いのではないでしょうか。調査では本の購入先に関する設問もあったのでご紹介します。今回は書店・インターネット書店・コンビニ・古本屋で比較を行ってみました。

本の購入先の経年変化を見ると、インターネット書店は2018〜2020年にかけて増加傾向にありましたが、現在は33%前後で頭打ちとなっているようです。
一方、書店・コンビニ・古本屋はいずれも減少傾向がみられます。特に書店は2021年以降で減少を続け、2018年では74.8%だったのに対し、2024年では67.9%となっており、書店離れが進んでいる可能性が高いことがわかります。
では、本を購入する際に皆さんが意識されていることは何でしょうか。
様々な理由がありますが、今回はとくに変化が大きかった「書店の特集コーナーや棚を見て」と「インターネット上の書評で」の2つについてみていきたいと思います。

グラフ⑦を見ると、「書店の特集コーナーや棚を見て」のピークが2018年の45.2%に対し、2024年では33.7%と10ポイント近く減少しています。とはいえ、「インターネット上の書評で」と比べると、いずれの年も数字は上回っているため、まだまだ書店をきっかけに購入する人は多いようです。
一方で、「インターネット上の書評で」の割合は、2018〜2022年にかけて増加し、「書店の特集コーナーや棚を見て」との差が小さくなってきているものの、2022年以降は3割弱で横ばいとなっているため今後の動きに注視したいところです。
データを7点ほどご紹介しましたが、統計は年々、読書離れの進行を示唆する結果となりました。この背景には、スマートフォンの普及により、日常における娯楽の選択肢が爆発的に増加したことが挙げられます。これにより、読書が可処分時間の競争に巻き込まれ、特に多忙な世代にとって、読書を楽しむ時間の確保が困難になっている社会的な構造変化が読み取れます。
半年ほど前の話ですが、静岡市内のとある書店を訪れたところ、表紙が隠され、番号が振られた本が並ぶ本棚がありました。くじを引いた番号の本を購入できるというコーナーで、データでは測れない「一期一会の感情的な出会い」を創出する取り組みが生まれていました。(現在は終了してしまったようですが⋯)
本との一期一会の出会いや、書店員さんのこだわりが詰まったコーナーを楽しめるのが本屋さんならではの醍醐味ですね。たまには本を片手に秋の夜長を楽しんでみてはいかがでしょうか?
出典:
日本出版販売株式会社 https://www.nippan.co.jp/wp-content/uploads/2016/11/annual_2016.pdf
2014年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 562サンプル)
2015年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 562サンプル)
2016年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 562サンプル)
2017年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 564サンプル)
2018年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 564サンプル)
2019年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 562サンプル)
2020年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 562サンプル)
2021年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 563サンプル)
2022年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 562サンプル)
2023年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 562サンプル)
2024年11月SBS生活DATAライブラリ静岡市調査 (男女13~69歳 563サンプル)
株式会社トムス