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単なる生産者ではない。地域課題を解決し全国展開を目指す「サステナブル陸上養殖システム」<後編>

前編でNTTグリーン&フード(以下:NTTG&F)の磐田プラントが国内最大級のシロアシエビ(バナメイエビ)陸上養殖技術を実践している現場をレポートしました。初期投資を抑える「居抜き」物件の活用、良質な地下水という地理的優位性、そしてICTを駆使した効率的な運用システム—。

これらはすべて、NTTグループが描く壮大な社会課題解決ビジョンの「実験と実践の場」だったことがわかりました。

なぜ、通信インフラの巨人は、リスクが高いとされる一次産業、特に陸上養殖に本気で挑むのか。その真の狙いは、日本各地が抱える課題を一挙に解決する「サステナブル陸上養殖システム」の提供にありました。

後編では、その戦略の深層と、事業拡大に不可欠な「共創」の形、そして全国の課題に挑む具体的な取り組みについて、戦略・営業部担当部長の古川裕透さんに聞きました。  

通信の巨人が一次産業に挑む、「極めて戦略的」な理由

NTTグループは今、食料安全保障や環境問題の解決という社会的な責任(サステナビリティ経営)を果たすために、一次産業領域への成長投資を戦略的に推し進めています。その核となるのが、2023年にNTTと京大発ベンチャー「リージョナルフィッシュ」の合弁で設立されたNTTグリーン&フード株式会社(以下:NTTG&F)です。

同社の事業構想は、単なる生産・販売モデルではありません。

参照:https://www.ntt-green-and-food.com/business/

目指すのは「三位一体」の課題解決モデル

・グリーン(藻類の研究): 魚の餌のもととなる藻類の生産・販売。水中でCO2の吸着量が多いとされる微細藻類に関するNTT研究所の知見を活用し、環境負荷の低い循環型のエコシステムの基盤を開発しています。

・フード(魚介類の生産・販売): 成長が速く、高機能性を持つ魚介類を陸上養殖で生産。現在はシロアシエビ(バナメイエビ)を日本最大級の規模で手掛けています。

システム開発・提供: NTTグループの情報通信技術(ICT)や資本力を活用し、実用化が難しい陸上養殖の技術やノウハウを確立。これをパッケージ化して、地域が抱える課題解決のための「サステナブル陸上養殖システム」として全国に提供します。

このように、NTTG&FはNTTグループの技術と資本力を背景に、地域の課題解決を起点とした新しい産業構造を創出するという、極めて戦略的な取り組みを進めています。

エビ陸上養殖推進の原動力:地域の資源と力を結集する官民連携モデル

磐田の陸上養殖事業は単なるビジネスに留まらず、行政をも巻き込んだ戦略的な官民連携モデルとして、加速しています。

事業推進の大きな原動力は、水産業活性化を目指す磐田市の強い意向と、「地域経済の活性化」「雇用創出」というNTTG&Fの事業計画が完全に一致したことです。この合意形成を基盤に、グループ会社であるNTT西日本も交えた磐田市との連携協定を締結。「磐田のエビを特産品として盛り上げる」という地域ブランド構築を確固たるゴールとして見据えました。

NTT磐田ビルウィンドウに飾られたイラスト

このビジョンを牽引するのが、地域密着のネットワークを持つ古川さんです。NTT西日本時代に培った静岡県内の企業・自治体・経営者との広範なネットワークと、地域活性化への揺るぎない熱意は、この共創プロジェクトにおける最大の「人的アセット」となっています。

緻密な「出口戦略」とリスク分散のための二軸ブランド設計

成功が難しいとされる陸上養殖で、NTTG&Fは「作ったものを確実に売る」ための緻密な出口戦略を初期段階から設計しています。

単にエビを売るのではなく、プラントの特性を活かした二軸のブランド戦略です。

このブランド分けは、市場に異なる価値を提案する戦略です。さらに、両ブランドを合わせて「磐田の『幸』『福』なえび」としてプロモーションすることで、地域全体の特産品としてのブランド価値を高めることを狙っています。

福えび(ふくえび):身がしっかりしていて、プリプリとした食感を楽しめる
幸えび(ゆきえび): 豊かな風味とクリーミーな味わい。殻まで丸ごと食べられる

単に美味しいエビを生産・販売するだけでなく、地域のブランドとしてどのように価値を高めていくか。ここで培われる技術、ノウハウ、そしてブランド戦略、出口戦略こそが、次の事業展開の大きな財産となります。

古川さん:「魚を作る技術はあっても、作った魚がきちんと流通し、事業採算ベースに載せられるような出口戦略がないとうまくいかない。それをコンサルし、実現できるのが我々の強みです

「システム」として展開へ!地域固有の課題に挑む陸上養殖ソリューション

NTTG&Fの最終的な目標は、磐田で蓄積した成功ノウハウを「サステナブルな陸上養殖システム」として全国に横展開することです。

【事例:宮城県気仙沼市の海水温上昇問題への取り組み】

宮城県気仙沼市では、基幹産業である銀鮭の海面養殖が、近年の海水温上昇により深刻な危機に直面しています。水温上昇で十分な生育期間が確保できず、収益が悪化していました。

この課題に対し、同社は以下の解決策を提示しています。

1.ノウハウの提供:暑さに強い銀鮭の品種改良、陸上養殖のシステム設計・運用ノウハウをパッケージとして提供

2.稚魚の安定供給:水温を精密にコントロールできる陸上養殖施設を整備することで、天候に左右されない健康な稚魚を計画的に生産・供給。

3.復興と産業再構築:東日本大震災で更地となった地域に新たな産業を生み出し、気候変動に負けない安定的な基幹産業の再構築に貢献する。

2027年頃の事業スタートを目指すこの計画は、NTTG&Fが目指す「地域課題解決システム」の全国展開モデルとして、注目を集めています。

「エビ」という有形アイテムが拓く、異分野との多様な地域共創

「エビ」という具体的な商品(アイテム)を持ったことで、通信事業では生まれにくかった、新しい地域とのつながりを獲得しました。地域社会の課題解決と振興に貢献する「身近なパートナー」として認識され始めたのです。

老舗企業との連携: 静岡の「わさびの田丸屋」との「えびの佃煮」共同開発。

流通・消費の促進: 地元飲食店でのメニュー提供、Jリーグスタジアムでのコラボレーション。

社会貢献:エビの加工事業における福祉労働力の活用検討など、持続可能な産業づくりへの連携が多岐にわたって始まっています。

2025年10月に開催された「エビフェアinいわた」では地元飲食店でエビメニューを提供した

参照:https://www.city.iwata.shizuoka.jp/event/moyooshi_matsuri/1015325.html

「この指とまれ」NTTG&Fが求める未来の共創パートナー

NTTG&Fが求めるのは、単なる取引先ではなく、日本の未来を共に創るパートナーです。古川さんが求めるのは、以下のような方々です。

1.エビというアイテムの可能性を信じ、地域特産品を一緒に開発・販売してくれるパートナー
2.日本各地で、将来的に陸上養殖事業を立ち上げたいと考えている地域の事業者や起業家

古川さん:「我々のような養殖事業をやりたいという方には、最終的にその成功ノウハウをご提供していくことが目的です。だからこそ、今から繋がっておきたい。」

これは、技術やノウハウを独占せず、共有することで日本の水産業全体を底上げしようという、NTTG&Fの開かれた姿勢の表れだと感じました。

実はNTTグリーン&フードは準備会社から3ヶ月でできた会社。「まだ何もしていないですがビジョンを語ることで人が集まり、そこで話し、座組が決まるような感じです。」

新しい産業を創造したいという情熱、そしてあなたの持つ技術・アセットを、地域課題解決という大きなエコシステムに活かしたい方。

ぜひ、NTTグリーン&フードが呼びかける「この指とまれ」にご参加ください。

前編記事はこちら


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あなたの持つ技術やリソースを、地域の課題解決に活かすための共創パートナーを探してみませんか?NTTグリーン&フードのような、異業種からの挑戦事例から、次の事業機会を見つけましょう。

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