「カリブの学港」が描く新しい教育のカタチ
静岡新聞社発の海洋新規事業プロジェクト「海結研究所(みゆラボ)」。日本一深い駿河湾を舞台に、「教育×地域×産業」をつなぐ新しい地域モデルづくりに挑戦しています。「海の価値を再編集し、地域の新しい産業を創る」をミッションに掲げ、体験格差の解消や漁業の課題解決、そして次世代の育成を目指す取り組みを取材しレポートします。
海と生きものを入り口にした探究型プロジェクトが始動
2026年5月5日、海と生きものをテーマにした新しい探究型教育プロジェクト「カリブの学港」が開港した。港長を務めるのは、“岸壁幼魚採集家”として知られ、幼魚水族館館長としても活動する鈴木香里武氏。オンライン学習とリアル体験を組み合わせながら、子どもたちが海の不思議を自ら発見し、探究する学びの場を目指している。
「学港」という名称には、“学びの港”として、多様な人が集まり、新しい知識や体験へ出航していくという思いが込められている。活動内容は、岸壁採集や海洋観察、オンライン授業、生きもの研究など幅広く、単なる自然体験にとどまらず、「なぜ?」「どうして?」を深掘りする探究型プログラムが特徴だ。
特に印象的なのは、“教わる”だけではなく、“自分で見つける”ことを重視している点である。足元の海を観察するだけでも、そこには多様な生きものが暮らし、それぞれに物語がある。子どもたちは実際の自然に触れながら、観察力や考察力を育んでいく。
港の足元に広がっていた“小さな海の世界”
カリブの学港初のリアルイベントとして開催された「岸壁採集で海の“なぜ?”を解き明かせ!」。その前半プログラムでは、下田の港を舞台にした“岸壁採集”が行われた。岸壁採集とは、海に潜るのではなく、漁港や桟橋の足元を網で観察しながら、小さな魚や海洋生物を採集する体験だ。一見すると静かな港だが、水面をよく覗き込むと、そこには驚くほど多様な生き物たちが暮らしている。
参加した子どもたちは、小さな網を片手に夢中で魚を追いかける。「いた!」「すごい!」という歓声が上がり、会場は一気に探究モードへ。
特に印象的だったのは、“見つける”だけで終わらない点だ。どこに魚が隠れているのか、なぜそこにいるのか、どんな特徴があるのか。子どもたちは自然と「観察する目」を養っていく。イベントでは最終的に25種類もの生き物が確認され、参加者からは驚きの声が上がった。普段何気なく見ている海にも、実は豊かな生態系が広がっている。岸壁採集は、そんな“足元の海の面白さ”を実感できる体験となっていた。

“魚を見る力”を育てる特別授業
午後から行われた講演では、鈴木香里武氏が、午前中に採集した魚たちを題材に、“魚の見分け方”や“海の生き物の不思議”について解説した。
会場に並べられた水槽には、子どもたちが採集した魚がずらり。「全部で何種類いると思う?」という問いかけから講演はスタート。参加者たちは真剣な表情で水槽を観察し、魚の形や模様の違いを見比べながら種類を予想していった。
講演の中で特に盛り上がったのは、“幼魚と成魚はまったく姿が違う”という話だ。縞模様の小さな魚が、大きくなると全く別の見た目へ変化する例などが紹介され、会場からは驚きの声が上がった。
また鈴木氏は、魚を見分けるポイントとして「ヒレ」に注目。背びれ、胸びれ、腹びれなどの形や本数が、魚の種類を見分ける重要な手がかりになると解説した。子どもたちは実際に魚を観察しながらヒレを書き写し、“研究者の視点”を体験していた。
単なる知識の講義ではなく、「自分で観察し、考え、発見する」ことを大切にした今回のイベント。海を入り口にした探究学習の魅力が詰まった時間となっていた。
海と人、人と学びをつなぐ新しい教育コミュニティとして、「カリブの学港」は今後大きな注目を集めそうだ。