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トヨタ未来都市 3~4年後一部開業へ

 トヨタは裾野市内に建設している先端技術の実証都市「ウーブン・シティ」について、2024~25年に一部オープンする見通しを示しました。生活に自動運転や人工知能(AI)を活用した未来都市とは、どのような姿になるのでしょう。これまでに判明している情報を整理してお伝えします。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

主要エネルギーは水素 トヨタ子会社CEО見通し 脱炭素の都市生活

 トヨタ自動車子会社「ウーブン・プラネット・ホールディングス」のジェームス・カフナー最高経営責任者(CEO)は5日、トヨタが裾野市内に建設している先端技術の実証都市「ウーブン・シティ」について、2024~25年に第1期工事を終え、一部オープンする見通しを示した。

ウーブン・シティと裾野市の連携について説明するジェームス・カフナーCEO=裾野市
ウーブン・シティと裾野市の連携について説明するジェームス・カフナーCEO=裾野市
 市が市役所で開いた市民向けのまちづくり説明会後の記者会見で述べた。ウーブン・シティは現在、建設用地の造成工事中で、カフナー氏は「来年から建物造りに入る」とした。実証都市内での主なエネルギーとして、燃焼しても二酸化炭素(CO2)を排出しない水素を活用する方針も示した。
 説明会でカフナー氏は、市のまちづくりと連携する姿勢を強調。ウーブン・シティに近いJR岩波駅の周辺整備事業の支援へ、トヨタとして企業版ふるさと納税制度を活用して市に寄付したことを明らかにした。寄付の理由を「(建設地にあった)トヨタ自動車東日本東富士工場の閉鎖に伴う税収の落ち込みを補う。市への投資」と説明した。
 今後も地域住民に情報提供の機会を持つ意向を示し「地域社会との共存が大切。よく対話し、良いパートナーシップを構築したい」と述べた。
 高村謙二市長は「最先端の技術開発を後押しするため、規制緩和など最大限の支援をしたい」と強調した。
 〈2021.10.6 あなたの静岡新聞〉

将来2千人居住へ 建設用地70万平方メートル トヨタ東日本東富士工場跡地

 トヨタ自動車は23日(※2月23日)、裾野市で先進技術の実証都市「ウーブン・シティ」の建設に着手した。2025年までに人が住み始められるよう工事を進める。住人が自動運転や人工知能(AI)、ロボットなどの技術を使いながら実証する場とし、自動車業界の枠を超えて社会課題を解決するイノベーションに取り組む。

トヨタ自動車が建設する先進技術実証都市のイメージ
トヨタ自動車が建設する先進技術実証都市のイメージ
 
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トヨタ自動車が建設する先進技術実証都市のイメージ

 昨年12月に閉鎖したトヨタ自動車東日本東富士工場跡地で地鎮祭を開いた。豊田章男社長や川勝平太知事、高村謙二裾野市長ら16人が出席し、工事の安全を祈願した。豊田社長は「東富士工場のDNAを受け継ぐ。地域に愛され、頼りにされる会社になりたいとの思いはこれから先も変わらない」とあいさつした。
 建設用地70・8万平方メートルのうち、最初に整備する区域は用地の南端に位置し、同工場生産の完成車を置いていた旧車両ヤード約5万平方メートル。トヨタは整備する施設など詳細を明らかにしていない。
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 ウーブン・シティには、最初に高齢者や子育て世代ら360人程度が入居し、将来的にはトヨタ従業員を含む2千人が暮らす街になるとしている。社会課題解決を図る技術革新に向けたパートナーには、3600の個人・法人から応募があったという。
 川勝知事は同日、御殿場市で開かれた富士山の日関連イベントでウーブン・シティに触れ「トヨタが社運を賭けて試みるまちづくりのくわ入れ式も行われ、富士山の日に花を添えた」と述べた。

 ■「イノベーション発信」 社長、異例の取り組み意欲
 豊田章男社長は23日、裾野市で開いた実証都市「ウーブン・シティ」の地鎮祭後、静岡新聞社などの取材に応じ「多様性から生まれるイノベーションの発信の場にする」と意欲を示した。
 跡地がウーブン・シティの建設地となるトヨタ自動車東日本東富士工場について「53年間、ありとあらゆる車を作り、日本のモータリゼーションを支えてくれた。良いたすきをもらって、未来につなげる」と述べた。
 自動車メーカーが街を造る異例の取り組み。豊田社長は自動運転技術などを念頭に「今後は車を作るだけでなく、インフラとのセットが重要になる」と説明。「トヨタは工業製品をばらつきなく作り上げる均一性で強みを発揮してきた。今度は多様性でイノベーションに向かう大きなモデルチェンジをする」と強調した。
 〈2021.2.24 あなたの静岡新聞〉

立地自治体の裾野市 岩波駅前に交流拠点整備へ 実証都市と地域の融合目指す

 裾野市は22日(※4月22日)、トヨタ自動車が市内に建設している先進技術の実証都市「ウーブン・シティ」と地域の融合を目指す「北部地域まちづくり基本構想」を発表した。ウーブン・シティの玄関口となるJR岩波駅前に交流拠点を整備し、実証都市の効果が広範囲に及ぶよう次世代産業の誘致なども進めていく方針を示した。

ウーブン・シティの建設予定地。トヨタ自動車東日本東富士工場跡に整備する=2月20日、裾野市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
ウーブン・シティの建設予定地。トヨタ自動車東日本東富士工場跡に整備する=2月20日、裾野市(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
 構想期間は2035年度までの15年間。25年度までの短期構想では、岩波駅周辺エリアの整備に注力する。ウーブン・シティ建設に伴う関係・交流人口拡大を見据え、情報発信や物産販売、子育て支援の機能を持たせた交流拠点を駅前に整備する。駅前ロータリーや駐車場も整備して広域の交通結節点とし、アクセス向上を図る。
 中長期的にはウーブン・シティの効果をより広範囲に広げることを狙う。新産業の企業誘致エリアや職住近接の居住エリアの整備、空き家を使った起業を促すほか、箱根方面と岩波地区を結ぶ道路を延伸し、東名高速道裾野インターチェンジの取り付け道路につなげる方針も掲げた。
 市は本年度、地域住民と意見交換しながら短期構想を具体化した基本計画を策定する。
 〈2021.4.23 あなたの静岡新聞〉

東富士工場閉鎖で税収減… 財政非常事態の裾野市 経済効果に期待も

 裾野市は15日(※2月15日)、新型コロナウイルス感染拡大に伴う税収減により将来的に財源不足に陥る恐れがあるとして、独自の「財政非常事態宣言」を発令した。企業の業績悪化やトヨタ自動車東日本東富士工場の閉鎖で税収が落ち込み、財源不足を補う財政調整基金(財調)が2023年度にも払底する見通し。高村謙二市長は「市民と危機感を共有し、財政健全化に取り組みたい」と訴えた。

 市によると、21年度は税収が約10億円落ち込み、繰り越し分などを除いた実質単年度収支は10年度から12年連続で赤字となるという。09年度に約86億円あった財調は、21年度に約18億円を取り崩し、残高は約21億円と1998年度以降で最低水準になる見込み。経常的に財調を取り崩す財政運営になっていて、現在と同規模の予算編成を継続すると、2023年度には払底する見通しを示した。
 リーマン・ショック以降、市税の約3割を占めていた法人市民税が減少。税収が潤沢だった1990~2000年代に整備した公共施設の維持管理や大型公共工事による起債などで、今も経常経費がかさみ、財政を圧迫している。コロナ禍と東富士工場の閉鎖が追い打ちをかけた。
 22年度予算から本格的に支出削減を図るため、総人件費の抑制、公共施設の在り方の見直し、大型公共事業の一時停止や先送りなどを重点に、今年7月末までに具体的な取り組みをまとめる。実質単年度収支の黒字化を宣言解除の目安とする。
 県市町行財政課によると、20年度の同市の財政力指数は0・99と県内市町で5番目に高い。同課は「財政力は高い部類に入るが、近年は基金に頼った財政運営が続いていた。宣言は体質改善に向けた決意だろう」とみた。
 〈2021.2.16 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞