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週刊静岡経済 9月12日

 日曜日の〈知っとこ〉は「週刊静岡経済」です。直近1週間に発信した記事から「あなたの静岡新聞」編集部おすすめの経済記事をまとめます。原油高騰の影響や、藤枝駅前のマンション建設合意など4項目をお届けします。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

原油の高騰 産業、家計に痛手 製茶機の燃料代/ガソリン代…需要増、国際情勢不安が背景

 国際的な原油高騰が、重油やガソリン、軽油を使う農業や物流などの産業、消費者の家計を直撃している。レギュラーガソリンの静岡県内平均小売価格は22週連続で150円台と高止まりの状態。中東産油国周辺の政情不安などから、高値が当面続く観測が強まっており、関係者は価格動向に神経をとがらせている。

足久保ティーワークスの製茶工場。燃料高騰はコスト増加に直結する=静岡市葵区
足久保ティーワークスの製茶工場。燃料高騰はコスト増加に直結する=静岡市葵区
 「燃料の使用量は減らせない。コスト増加に直結する」。静岡県などでの重油価格は7月時点で前年同月比2割以上も上昇し、9月下旬以降の秋冬番茶の生産を控えた足久保ティーワークス茶農業協同組合(静岡市葵区)では、生葉を蒸してもむ製茶機に使う燃料代高騰に直面している。
 吉本邦弘組合長(59)は「番茶は販売価格が安い。経費削減を続けてきたが、製造原価に占める燃料代の割合が増えることで利益を圧迫しかねない」と心配顔だ。
 経済産業省が1日発表したレギュラーガソリンの県内平均小売価格は158円10銭と、3月下旬に150円を超えて以来、高止まりが続く。葵区内のガソリンスタンドで給油した30代男性は「1円でも安いスタンドを探して利用している。なるべく不要不急の外出は控えたい」と話す。
 県石油商業組合の由井吉一専務理事は「新型コロナウイルス禍の外出自粛ムードに高値が追い打ちをかけ、給油量が半分近く減ったスタンドもある。廃業する事業者が増えかねない」と指摘する。
 ハイブリッド車などの普及で、ガソリン需要は減少傾向の厳しい状況にあり、ガソリンスタンドを運営する遠州日石(浜松市南区)の鈴木裕司社長は「調達コストが上がってもそのまま価格に転嫁するのは難しい」と語る。
 燃料高騰はコロナ禍からの回復基調にある物流業界にも影を落とす。県トラック協会の担当者は「働き方改革や賃金上昇など待遇改善を進めている事業者が多い。燃料代が経営に与える影響は小さくない」と懸念する。

 ■値下がり要因乏しく
 原油価格の高騰は、米国や中国の経済回復で石油需要が増加する中で産油国が原油の大幅な増産に慎重な姿勢を保っていることが背景にある。
 静岡経済研究所の恒友仁常務理事は「アフガニスタン情勢悪化で周辺の中東産油国からの原油供給が不安定になる可能性がある。中国などの石油需要は堅調で、当面は価格が大きく下がる要因に乏しい」と見通す。
 ガスや電気の価格も上昇傾向であることを踏まえ、「企業のコスト増につながり新型コロナの再拡大とともに経済回復にブレーキをかける要因になる」と話す。
 〈2021.9.7 あなたの静岡新聞〉

藤枝駅前一丁目9街区 高層マンション建設に合意 19階建て

 市街地の再開発計画が進むJR藤枝駅北口近くの駅前一丁目9街区の再開発準備組合は7日夜、総会を市内で開き、低層階に商業施設が入った高層マンションの建設事業を進めることに合意した。今後、本格的な手続きに入る。2026年度に工事が完了し、入居が始まる見通し。

藤枝駅前一丁目9街区で建設計画が進む高層マンションのイメージ。低層階に商業施設が入る
藤枝駅前一丁目9街区で建設計画が進む高層マンションのイメージ。低層階に商業施設が入る
 9街区は同駅の北東にある3千平方メートルの区画で、飲食店や住宅などが並ぶ。マンションは19階建てで、3~19階に118戸の分譲住宅が入る。1、2階はカフェやビジネス交流スペースとして利用するほか、大学のサテライト拠点や専門学校などの誘致を目指す。穴吹興産(高松市)などの共同体が事業を進める。
 同組合は今後、マンション建設に併せて景観の向上やにぎわい創出などを図る都市計画案を市に提出する。市は本年度中に計画を決定し、県による認可などを経て23年度の着工を目指す。
 9街区は住民の高齢化が進むほか、建設から年数が経過した建物も多く、住民らが再開発について意見交換を重ねてきた。近くの6街区でも同様のマンションの建設計画があり、同じく26年度の完成に向けて協議が進んでいる。
 〈2021.9.9 あなたの静岡新聞〉

熱海沖で採取、海洋酵母由来のカロテノイド 化粧品原料化に挑戦

 化学メーカーのケイ・アイ化成(磐田市)と化粧品原料メーカーのビタミンC60バイオリサーチ(VC60、東京)は、熱海沖で採取された海洋酵母が生成する天然色素「カロテノイド」を化粧品原料として活用する事業に取り組んでいる。海洋資源を新産業の創出につなげる県の「MaOIプロジェクト」の補助金を利用し、新規カロテノイドが有する美白やしわ抑制などの抗酸化作用の機能性を化粧品で実用化し、2024年度中に市場での販売開始を目指す。

試験抽出したカロテノイド溶液
試験抽出したカロテノイド溶液
 ケイ・アイ化成は自社の培養装置などの設備を活用し、海洋酵母の工業的大量培養やカロテノイドの抽出といった製造技術の確立を担う。VC60は、抗酸化作用のある成分「フラーレン」を世界で初めて化粧品原料として実用化した実績を強みに、抽出物に含まれる有用成分の分析や評価、化粧品処方の作成などを進める。
 実用化に向けて、VC60は海洋酵母の保有者である海洋研究開発機構(JAMSTEC)と生物資源利用の約款を結び、ケイ・アイ化成と共同で海洋酵母が生合成する新規カロテノイドを産業利用するための開発を進めている。
 カロテノイドが持つ抗酸化作用を発見した明治大農学部の浜本牧子教授との共同研究で、化粧品原料として肌にもたらす効果も詳しく調べている。県内企業を中核に企業や大学、研究機関を巻き込んだオープンイノベーション体制で進める取り組みとして成果が注目されている。
 ケイ・アイ化成の担当者は「今後の研究開発が成功すれば世界初の化粧品原料を本県から発信できる。国内有数の化粧品出荷額を誇る本県関連産業の活性化に貢献したい」と意欲を語る。

 <メモ>カロテノイド 動植物や微生物などによって合成される天然色素の一群。自然界でこれまでに数百種類が見つかっている。代表的な例には、トマトに多く含まれるリコピン、サケやイクラなどに含まれるアスタキサンチンなどがある。
 〈2021.9.9 あなたの静岡新聞〉

機内食で旅行気分 新東名SAで販売 静鉄リテイリング

 静鉄リテイリング(静岡市葵区)は、全日本空輸の機内食を新東名静岡サービスエリアしずおかマルシェ上り店、同下り店、富士山静岡空港しずおかマルシェ売店で販売している。10月31日までの期間限定。

期間限定で販売するカレーとスープ=静岡市葵区
期間限定で販売するカレーとスープ=静岡市葵区
 販売しているのは、ファーストクラスのレトルトパウチ機内食の「阿波尾鶏とマッシュルームのカレー」(税込み853円)、各クラスで提供する「ビーフコンソメスープ(粉末)」(810円)。国内空港で販売しているマシュマロ、クラッカーといった限定商品も扱っている。
 静鉄リテイリングの担当者は「新型コロナウイルス下でも飛行機での旅行気分を味わってほしい」と話す。
 〈2021.9.11 あなたの静岡新聞〉
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