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〈 静岡で開催 パラ自転車の見どころは 〉

 東京パラリンピックは24日開幕し、自転車競技は伊豆市と小山町で25日から9月3日まで行われます。残念ながら無観客開催が決まりましたが、練習を積み重ねてきた選手が大会に懸ける思いはいささかも変わりません。注目選手や競技の見どころを紹介します。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

女子ロード 杉浦佳子選手(掛川西高出身) 新星50歳、満身創痍も思い描く頂点 「人生、後悔だけはしたくない」

 自転車の杉浦佳子は4年前に始めた競技生活を第二の人生として駆け抜けてきた。最初で最後のパラリンピックに臨む50歳の新星が狙うのは女子ロード種目の頂点。「笑顔でフィニッシュしたい」と栄光の瞬間を思い描く。

女子自転車ロード種目で金メダルを狙う50歳の杉浦佳子(左)=4月下旬、群馬県内
女子自転車ロード種目で金メダルを狙う50歳の杉浦佳子(左)=4月下旬、群馬県内
 「生きる希望すら見失いかけていた」。2016年4月、趣味のトライアスロン中に転倒し、順風満帆の人生が一転した。出産や子育てを経験し、薬剤師としてキャリアを積み重ねていたさなかの事故。脳挫傷を負い意識不明の重体に。後遺症の高次脳機能障害などの影響で家族の顔や文字も忘れた。「なぜ、死なせてくれなかったんだろう」。泣いて悔やんだ。
 モチベーションがどん底に落ちた杉浦を救ったのが自転車だった。リハビリ治療で自転車型トレーニング器具を使ったのがきっかけで「もう一度、乗りたい」と奮起。医師からは「運動は難しい」と告げられていたが、信念と驚異の回復力でパラアスリートの道を切り開いた。
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杉浦佳子選手

 持ち味はレース終盤で発揮する粘り強さだ。46歳でパラ自転車に参戦すると17年世界選手権タイムトライアルで優勝。18年にも同ロードレースを制し、国際自転車連合の年間表彰で日本初の「パラサイクリング賞」に輝くなど世界に存在感を示した。
 東京パラの金メダル候補-。周囲はそう呼ぶようになったが、ライバルは多い。最も警戒するのは19年世界選手権ロードレースで苦杯を喫した中国人選手。ゴール手前で追い抜かれ僅差で敗れた。「簡単に勝たせてくれる相手ではないが絶対にやり返したい」
 50歳の身体は今、「ボロボロ」だ。若手選手と比べ筋肉の回復は遅く疲労が蓄積。新型コロナ禍の影響で東京大会の1年延期が決定した際は「1年後は急成長を遂げる海外勢にかなわないかもしれない」と引退の文字も頭をよぎった。
 今年5月にはまひの無い左脚の痛みが悪化。身体の衝撃吸収の役割を果たす「股関節唇」の損傷が発覚し、選手として致命的になりかねない大けがを負った。
 満身創痍(そうい)。それでも、杉浦は言う。「人生後悔だけはしたくない。だから私は金メダルを奪いにいく」。有言実行を果たした時、競技開催地となる静岡県は歓喜に沸く。

 すぎうら・けいこ 北里大薬学部を卒業後、薬剤師として薬局に就職。長年、訪問型の薬剤管理指導に携わってきた。薬学知識を生かしスポーツファーマシストとしても活躍する。掛川西高出、楽天ソシオビジネス。
 〈2021.8.19 あなたの静岡新聞〉

自転車競技に挑む静岡県勢

 川本翔大(自転車C2)

川本翔大選手
川本翔大選手
 トラック種目の若手有望株。前回リオ大会は競技歴8カ月で出場した。5年前から活動拠点を伊豆に置く。生後2カ月で左足を切断。3月に自己記録を更新し上位躍進を伺う。
 広島県出身。25歳。

 藤井美穂(自転車C2)
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藤井美穂選手

  パラリンピック出場を夢見て6年前、陸上から転向。実績は少ないが、活動拠点を伊豆に移し記録を伸ばしてきた。生後間もなく右足を切断し、片足でこぐ。目標は8位入賞。
 茨城県出身。26歳。

 〈2021.8.21 あなたの静岡新聞〉

競技連盟広報/ラジオパーソナリティー 大西さん(裾野市)、「二足のわらじ」でパラ自転車の魅力発信

 24日に開幕する東京パラリンピックで、静岡県は25日から自転車競技が繰り広げられる。日本パラサイクリング連盟の広報を務めるラジオパーソナリティー大西涼太郎さん(46)=裾野市=は、“二足のわらじ”を生かして競技の普及とPRに尽力している。開幕を控え、「世界の超人が一堂に会すまたとない機会。パラサイクリングが静岡に密着したスポーツになれば」と期待する。

ラジオ番組でパラサイクリングの魅力を発信する大西涼太郎さん=7月中旬、三島市のボイス・キュー
ラジオ番組でパラサイクリングの魅力を発信する大西涼太郎さん=7月中旬、三島市のボイス・キュー
 競技経験のない大西さんは2015年秋、伊豆市の日本サイクルスポーツセンターで開かれた国際大会でMCを務め、パラサイクリングに魅了された。「すごいの一言。感動した」。レースの迫力に圧倒されたという。
 一方で、観客の少なさにショックを受けた。「もっと多くの人に見てもらいたい」。約1カ月後にはエフエムみしま・かんなみ「ボイス・キュー」で放送する自身の番組に、競技の魅力を紹介するコーナーを設けた。自転車専門番組も企画し、選手が出演するようになった。
 パラサイクリング界への貢献が認められ、19年秋から連盟の広報を担う。県東部を中心に展開する体験イベントで子どもたちに競技の魅力を伝え、SNSで強化合宿の様子などを発信する。
 大西さんは「素人感覚を忘れない」を信条に、分かりやすい表現で競技を紹介する。さらに「選手の人間性を知ってもらいたい」と、ラジオ番組や動画配信のインタビューでは、趣味や休日の過ごし方など素顔も引き出すよう心掛ける。
 大会期間中はテレビ中継解説者を務める。無観客での開催となったが、「パラサイクリングと競技を知らない人たちの橋渡し役になり、大会後も多くの人に親しんでもらえるようにしたい」と意気込んでいる。
 ■多様性とスピード感 トップ選手は時速100キロも 自転車競技見どころ
 大西涼太郎さんに、東京パラリンピック自転車競技の魅力や見どころを聞いた。
 パラリンピックで使われる自転車は通常の二輪だけでなく、三輪のトライシクル、腕でこぐハンドサイクル、2人乗りのタンデム自転車と、四肢障害やまひ、視覚障害など、障害に応じて4種類ある。さまざまな障害に対応している競技は陸上や水泳など数少ない。自転車もその一つで、多様性が楽しめる。魅力はなんと言ってもスピード感。トップ級の選手だと時速60キロを超えるレースの迫力を見てほしい。視覚障害者がアシスト役の健常者と乗るタンデム自転車では約100キロも出ることもある。スピードだけでなく、障害があるからこそ鍛え上げられた選手の肉体美も見どころだろう。
 日本勢は1996年のアトランタから6大会連続でメダルを獲得している。今回初出場の杉浦佳子選手(掛川西高出)はメダルの有力候補。小柄だが、上りが強くてスタミナがある。アップダウンが多いロードレース種目は特に期待できる。過去3大会で五つのメダルを獲得した藤田征樹選手、伊豆を拠点にしている川本翔大選手と藤井美穂選手も調子を上げている。
 〈2021.8.23 あなたの静岡新聞〉

東京パラ 全競技、無観客開催 画面越しに声援を

 東京パラリンピックが静岡県の自転車競技を含む全競技会場で無観客での開催に決まったのを受け、川勝平太知事は16日、「観覧を楽しみにしていたチケットホルダーには大変残念な結果となった」とコメントを発表した。

松木正一郎市長(左)から、「日米友好の灯」(奥)から採火した火を受ける伊豆の国特別支援学校伊豆下田分校の児童生徒=16日午前、下田市三丁目のペリー上陸記念公園
松木正一郎市長(左)から、「日米友好の灯」(奥)から採火した火を受ける伊豆の国特別支援学校伊豆下田分校の児童生徒=16日午前、下田市三丁目のペリー上陸記念公園
 静岡県のパラ自転車競技は25~28日に伊豆ベロドローム(伊豆市)でトラック、31日~9月3日に富士スピードウェイ(小山町)でロードを計画している。
 県によると、競技会場の最寄り駅で観客を案内する「県都市ボランティア」は無観客開催により活動の機会がなくなるため、代替措置を検討する。子どもに観戦の機会を与える「学校連携観戦プログラム」については、4者協議の方針に基づき実施する方向。当初、90校を数えた参加希望校は感染拡大の影響で辞退が相次ぎ、現在、数校にとどまる。
 〈2021.8.17 あなたの静岡新聞〉
※静岡県内の「学校連携観戦プログラム」参加希望校は20日時点でゼロになりました。