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静岡でパラ聖火リレー開催

 東京パラリンピックの聖火リレーが静岡県内で行われました。リレーのコンセプトは、お互いの価値を認め合おうという意味を込めた「Share Your Light/あなたは、きっと、誰かの光だ」。共生社会の実現に向けて総勢127人が希望の火をつなぎました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

浜松、御前崎、菊川でリレー 聖火は開催都市・東京へ

 東京パラリンピック開幕を1週間後に控えた17日、聖火リレーが静岡県からスタートし、浜松市中区の四ツ池公園陸上競技場と御前崎・菊川両市の公道区間で総勢127人のランナーが走った。新型コロナウイルスの感染防止策を講じながら共生社会の実現へ希望の火をつなぎ、同競技場で開催都市・東京への出立式も行った。

聖火皿に聖火をともす最終ランナー=浜松市中区の四ツ池公園陸上競技場
聖火皿に聖火をともす最終ランナー=浜松市中区の四ツ池公園陸上競技場
 雨の中での出立式ではリオデジャネイロ大会の陸上銅メダリスト佐藤圭太さん(藤枝市出身)が「県内35市町で生まれ、県民の思いを乗せたこの聖火を開催都市・東京都に送る出立を宣言します」と力強く誓った。
 聖火リレーを予定していた熱海市は土石流災害、静岡市はまん延防止等重点措置の影響で中止となり、両市のランナーは代替措置で浜松市の同競技場を走った。県選出枠で参加したランナーのうちの約30人は障害者で、目標に向かって挑戦する姿勢をアピールした。
 東京パラの競技会場がある4都県のうち、東京、千葉、埼玉は新型コロナの緊急事態宣言発令で公道でのリレーを中止したため、御前崎・菊川両市が唯一の公道区間となった。

写真特集 笑顔でつないだ聖火の輪

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トーチを手に走るランナー=浜松市中区の四ツ池公園陸上競技場
 
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公道で行われたパラリンピックの聖火リレーでトーチキスをするランナー=御前崎市
 
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「集火式」で集まった各市町で採火された火。地域の特色を生かした方法で火を採りランタンで持ち寄られた=静岡市清水区の日本平夢テラス

観覧エリアに手を振るランナー=浜松市の四ツ池公園陸上競技場
観覧エリアに手を振るランナー=浜松市の四ツ池公園陸上競技場

リレーに込めた思いは 熱海出身・難病の出口さん「自分にもできることある」/元バレー選手・両下肢まひの小松さん「障害者の力に」

 「支えてくれる全ての人に感謝を伝えたい」。東京パラリンピック聖火リレーで17日、浜松市中区の四ツ池公園陸上競技場を走ったランナーは、共生社会の実現へ思いをつないだ。

観覧エリアに手を振る出口隼詩さん=浜松市中区の四ツ池公園陸上競技場
観覧エリアに手を振る出口隼詩さん=浜松市中区の四ツ池公園陸上競技場
 電動車いすで100メートルを完走した大学2年の出口隼詩さん(20)=熱海市出身=は、周囲の人たちへ感謝の言葉を繰り返した。競技場で見守った両親や友人には満面の笑みで気持ちを伝えた。
 10万人に2人が発症する脊髄性筋萎縮症という進行性の難病を抱える出口さん。車いす生活は熱海中時代から。コロナ禍に都内で始めた大学生活は同級生らが支えてくれる。
 大会開催に賛否がある中、リレーの意義を考え参加を決めた。7月には故郷で土石流が発生し、「自分にも何かできることはある」と決意を強くした。
 介助者を付けなかったのは自力で強く生きる意志も示すため。トーチを次に託す直前に降雨で車いすの運転が危うくなったが、「人生は想定外の連続。一瞬一瞬をしっかりと生きていく」とやり遂げた。
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競技場の観客に手を振る小松沙季さん=浜松市中区の四ツ池公園陸上競技場

   浜松市区間に参加したのは、バレーボールVリーグ女子2部の「ブレス浜松」を引退後に両下肢まひになった小松沙季さん(26)=高知県四万十市=。「静岡県民にパラスポーツを身近に感じてほしい」との願いを込めた。東京パラでは、競技開始からわずか半年にもかかわらず、カヌー・女子バーシングル200メートルに出場する。
 2018年に指導者へ転身したが翌年、体調を崩して入院。両足と左手にまひが残った。今年3月に関係者の誘いでカヌーを本格的に始めると、5月のワールドカップで5位に入り、東京パラ出場権を得た。
 「リレーに参加し、温かくしてくれた浜松への思いが一層強くなった。障害者の力になりたいし、もう一度両足が動くことも諦めない」。言葉に決意をにじませた。

五輪メダリストも参加 陸上の飯塚翔太選手、地元でラン/体操男子・水鳥監督がエール

 静岡県で17日に行われた東京パラリンピック聖火リレーで、東京五輪で3大会連続の五輪出場を果たした陸上の飯塚翔太選手(30)=ミズノ、藤枝明誠高出=が聖火ランナーとして出身地の御前崎市に凱旋(がいせん)した。「今までで一番長い200メートルでした」―。慣れ親しんだ街の空気を懐かしむように、100分の1秒にこだわってきた距離をゆっくりと走った。

パラリンピックの聖火ランナーを務めた飯塚翔太選手㊧と水鳥寿思さん㊨
パラリンピックの聖火ランナーを務めた飯塚翔太選手㊧と水鳥寿思さん㊨
 飯塚選手は他のランナーと3人一組で“第1走者”を務め、地元ファンが見守る中、浜岡福祉会館前をスタート。「競技場だと観客席との距離が遠い。手を振ったり声を掛けてもらったり、お客さんを近くに感じながら走れた」と、普段と異なる200メートルを振り返った。
 新型コロナウイルス禍の中、24日に開幕するパラリンピックについては「開催して良かったと思える大会になってほしい」と願った。自身の競技人生は「限界を決めずに走り続ける。(2024年の)パリ五輪、その次も、ぐらいの気持ち」と爽やかに言い切った。
 東京五輪で体操男子を監督として率いた水鳥寿思さん(41)=静岡市出身=は第2区間の最終走者を務めた。東京五輪で体操男子はメダル4個の活躍。「選手たちはベストを尽くす演技ができた。その流れをパラ選手にも引き継ぎたい」。感染者が急増する中で迎える今大会に、「われわれのようにパラ選手も自信を持って臨んでほしい」と応援する気持ちを込めた。
 アテネ五輪で金メダルに輝き、県民栄誉賞を受賞している水鳥さん。体操の道に進むため高校から本県を離れたが、「ランナーを務めることで、なんとか静岡に貢献したいと思った」と地元への思いを語った。
 〈記事、写真はいずれも2021.8.18 あなたの静岡新聞〉
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