熱海土石流 被災者支援は
熱海市伊豆山(いずさん)で発生した土石流で、500人以上(7日現在)の市民が避難生活を余儀なくされています。避難生活の長期化が懸念される中、官民による支援の動きがこれから本格化します。被災者と支援の現状を追いました。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉
ホテル2カ所、住民の避難所に 「いつまでいられるか」不安も
熱海市伊豆山で発生した大規模な土石流への対応で、市は2カ所の観光ホテルを避難所として活用している。ホテルを活用することで市職員を他の業務に振り向けられるほか、コロナ禍の対策や避難所の効率運営が可能になるなど利点は大きい。ただ、現状の対応がいつまで続くかは不透明。避難者は先行きに不安を抱きつつ、避難生活を送っている。
同室の妻(54)は介護職。ホテルを拠点に訪問介護の仕事を再開した。避難生活への不満はないというが、1階が土砂に埋まった自宅が気がかりだ。「家の中を整理したいが、いつ帰宅できるのだろうか。まったく見通しが立たないのがつらい」とこぼした。
市によると、2カ所のホテルに避難するのは562人(6日現在)。ニューフジヤホテルに507人、ホテルニューアカオには福祉施設の入居者と職員55人が避難している。
ホテルニューアカオ企画室の杉山聖也マネジャーは「市民のためにできることを考えた。市の要請の前に避難者の受け入れが可能と伝えた」と説明する。
全国有数の観光地という特性を生かした対応が避難者の負担軽減につながっている一方、避難生活が長期化する懸念がくすぶる。新型コロナワクチンの接種が進む中で迎える夏の行楽期を控え、いつまで観光ホテルを活用できるかも未知数だ。
避難者数が今後、増える可能性も否定できない。市は6日、一度は閉鎖した市立第一小の指定避難所を再び開設した。避難者16人がニューフジヤホテルに入れなかったことが理由で、今後も調整が難航する可能性もあり、綱渡りの対応を強いられている。
〈2021.7.7 あなたの静岡新聞〉 ⇒元記事
救援物資全般の受け入れ停止 熱海市 ホテル滞在で充足 金銭支援を呼びかけ
熱海市の土石流被害で全国各地から支援物資が大量に届き、市は7日時点で受け入れを中断した。避難者の9割は市内のホテルに滞在し、プライバシーや食事も確保できているため。市は生活再建に向けた義援金を呼び掛けている。
市の担当者は「一般的な避難所生活では必要でも、今回は使わない物資も多い。避難者が現在置かれている環境は通常のホテル滞在時と変わらず、状況がうまく伝わらずにミスマッチが生じている」と説明。「避難者の精神的ケアと、生活再建に向けた義援金やふるさと納税での寄付による金銭的支援をお願いしたい」とした。
■熱海市が義援金口座開設 市役所に募金箱も
熱海市は、大規模土石流で甚大な被害を受けた住民の支援に役立てるため、市災害義援金の口座を開設した。
市役所1階受付に募金箱も設置し、協力を呼び掛けている。市役所南熱海支所、泉支所にも12日に設置する。義援金は生活再建を支援するために被災した市民に配分する。
振り込みは三島信用金庫熱海支店、普通預金1198255、口座名義「熱海市災害義援金」で受け付ける。
〈2021.7.7 あなたの静岡新聞〉 ⇒元記事 ⇒元記事
ボランティア登録、静岡県東部在住者限定 作業は土の除去など想定
熱海市災害ボランティアセンターが5日、開設され、静岡県東部地区在住者を対象に、災害ボランティアの事前登録などの情報発信を始めた。活動のめどが立ち次第、比較的被害の少ない地域から順に派遣する方針。
運営費は「赤い羽根共同募金」の県共同募金会が300万円を助成する。同会は県災害ボランティア本部・情報センターを設置した県社協にも、300万円を支援する。
詳細は熱海市災害ボランティアセンターホームページへ。
〈2021.7.6 あなたの静岡新聞〉 ⇒元記事
生活インフラ復旧「全力で対応」 棚橋防災相 斉藤市長は観光支援を国に求める
棚橋泰文防災担当相は6日、大規模な土石流被害に見舞われた熱海市伊豆山地区と、住民が避難生活を送っている市内のホテルを視察した。道路網などの生活インフラの復旧について「政府としてできることを全力で対応する」と述べた。
難波副知事は県が土石流の被害拡大を招いたと推定する開発行為を話題に挙げたとして「是正措置が法的に弱い」として改善を要請した。斉藤市長は「土石流による風評被害で宿泊キャンセルがかなり出ている」と訴え、国に支援を求めた。
〈2021.7.7 あなたの静岡新聞〉 ⇒元記事