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大雨被害 沼津や富士も深刻

 大雨による被害は熱海市だけでなく、沼津市や富士市などの静岡県東部でも深刻です。沼津市では黄瀬川大橋が一部崩落、富士市では住宅の浸水被害が多発しました。被害状況や復旧活動の様子をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

崩落の黄瀬川大橋「復旧に年単位」 沼津市ー清水町、影響長期化

 大雨の影響で一部崩落した沼津市と清水町をつなぐ黄瀬川大橋について、管理者の県沼津土木事務所は4日、現場を調査し、復旧は「年単位でかかる」との見通しを示した。地元にとって主要道路のため、日常生活への影響は長期化しそうだ。

洪水対策のため、堤防に積み上げた土のう=4日午後、沼津市大岡の黄瀬川大橋付近
洪水対策のため、堤防に積み上げた土のう=4日午後、沼津市大岡の黄瀬川大橋付近
 橋脚4基のうち1基が損傷し、橋の西側部分がV字形に崩壊した。国土交通省沼津河川国道事務所は同日、橋脚の損傷で下がった橋桁が水の流れを阻害し、水量が増した時には堤防を越える可能性があると判断。重さ1トンの大型土のう約200個を橋周辺の堤防60~70メートルに積み上げた。
 通行止めだった黄瀬川大橋下流の黄瀬川橋は県沼津土木事務所職員が橋桁などに損傷がないか確認し、通行止めを解除した。復旧まで迂回(うかい)対策を求めるため、「大型車は可能な限り国道1号を利用してほしい」と呼び掛けている。

橋脚損傷でV字形に折れ曲がる 住宅も1棟流される

 梅雨前線の停滞に伴う大雨の影響で、沼津市では3日、土砂災害や浸水被害が相次いで発生した。沼津市と清水町をつなぐ黄瀬川大橋が午前10時ごろに一部崩壊し、通行止めになった。県沼津土木事務所は「復旧の見通しは立っていない」としていて、周辺住民らの生活への影響が懸念されている。

一部崩壊した黄瀬川大橋=3日午前11時半ごろ、清水町長沢
一部崩壊した黄瀬川大橋=3日午前11時半ごろ、清水町長沢
 県道富士清水線(旧国道1号)に架かる黄瀬川大橋は、橋脚4基のうち1基が損傷。全長83メートルの橋の西側34メートル部分がV字形に折れ曲がるように崩壊した。沼津署によると、人的被害はなかった。
 橋の近くに住む会社員男性(51)は「『ドン』という音がし、外を見たら橋が折れていた。発生当初は車が橋を通っていて危ないと思ったが、人の被害がなくて良かった」と話した。
 地域住民が通勤や買い物などに利用し、朝夕に交通渋滞が発生するほど通行量が多い幹線道路が寸断された。清水町の主婦(62)は「旧国1が使えないとかなり不便になる。復旧にどれくらい時間がかかるのか心配」と不安げに橋を見つめた。
 上流の沼津市大岡では黄瀬川の増水で護岸が崩れ、2階建て住宅1棟が流された。沼津署によると、午前8時35分ごろに近隣住民から「家が川に流れそう。白い煙が上がっている」と110番があった。住人2人は避難し、無事だった。民家が流される瞬間を目撃した近所の50代女性は「護岸が崩れ始めて大丈夫かと見ていたら、家が少しずつ傾いて流されてしまった。あっという間だった」と話した。
 同市西部の原、愛鷹地区では、家屋の浸水や道路冠水が広範囲に及んだ。原地区では、水が引いた後も、地域住民らが道路上などに残った泥の片付けに追われた。同市一本松の鈴木タエ子さん(72)は自宅が浸水し、原東小に避難した。「家に入り込んだ水で畳が浮くほどだった。こんなにひどい状況になるとは」と嘆いた。  
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黄瀬川の増水により流された住宅跡=3日午後1時ごろ、沼津市大岡
 

沼津・原地区は大規模浸水被害 住民、復旧作業に追われる

 静岡県東部を中心に甚大な被害をもたらした大雨から一夜明けた4日、大規模な浸水に見舞われた沼津市原地区では復旧作業に追われた。頼重秀一市長ら市職員も同日、同地区や一部崩壊した黄瀬川大橋などを視察し、被害状況の確認を急いだ。

堆積した泥の撤去作業が続く中、住民から被害状況を聞き取る頼重市長(右)=沼津市原町中
堆積した泥の撤去作業が続く中、住民から被害状況を聞き取る頼重市長(右)=沼津市原町中
 市危機管理課によると、市西部を流れる高橋川があふれるなどして浸水が発生。エリアが広範におよび、被害棟数などの詳細は確認できていないという。
 原地区では小雨が降り続く中、住民らが同日早朝から重機やシャベルを使い、家屋や道路に堆積した泥の撤去作業にいそしんだ。頼重市長らも現地で被害状況を調査。一時は成人男性の腰辺りまで道路が冠水したことや、高橋川の護岸補強の要望などを聞き取った。沼津信用金庫原支店では現金自動預払機(ATM)が浸水で壊れ、床下のコード類も交換が必要なため、5日も臨時休業となる見通しなどの説明を受けた。
 頼重市長は4日午前中に橋脚が損壊した黄瀬川大橋を視察し、「大橋は県道だが、通行止めが長期に及べば市民生活への支障が大きくなる。国や県と連携して早期復旧を図りたい。浸水被害も予想以上に深刻で、迅速に対処する」と述べた。

浸水は富士でも多発 少なくとも78棟が被害

 梅雨前線の停滞による大雨で3日に住宅の浸水被害が多発した富士市東部では4日、浸水した住宅周辺の水が引き、市による被害調査も始まり被害の概況が判明した。小雨が断続的に降り続く中、住民は後片付けに追われた。

 同日午前、小長井義正市長が現場を視察して被害状況を聞き取ったほか、職員が各家庭の浸水状況を確認した。市によると、同日午後5時現在、床上浸水21、床下浸水57の計78棟で被害が確認された。5日も住民の留守などで未調査の約20棟の調査を続ける。
 冠水した市道8カ所のうち、同市西船津の富士東小西の市道1カ所は通行止めが続く。
 市は5日から、ごみ集積所に出された災害ごみの回収を当面は毎日継続する。須津まちづくりセンターでは、消毒液の配布を行う。
 江尾江川の越水で被害が拡大したとみられる同市江尾周辺では、過去に複数回の浸水害が発生している。
 
地域再生大賞