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いよいよ知事選 2候補の違いは

 静岡県知事選挙の投票日が、いよいよ今週末20日に迫ってきました。今後4年間の静岡のかじ取り役を選ぶ大切な選挙。改めて候補者2人のプロフィール、主張の違いをまとめます。大切な一票を投じる参考になれば幸いです。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

川勝氏、岩井氏 それぞれの経歴は

まずは候補者2人の経歴を改めて見てみましょう。
川勝 平太氏 =写真左、届け出順①=
無所属/現職/72歳
▽現=知事、県スポーツ協会長、県観光協会長▽元=静岡文化芸術大学長、国際日本文化研究センター教授、早大政経学部教授。京都府出身。英オックスフォード大大学院博士号。静岡市葵区安東

岩井 茂樹氏 =写真右、届け出順②=
無所属/新人/53歳/自民推薦
▽現=無職▽前=参院議員▽元=国土交通副大臣、経済産業兼内閣府兼復興政務官、富士常葉大非常勤講師、参院議員秘書、建設会社社員。名古屋市出身。名古屋大大学院修了。三島市富士ビレッジ

リニア、コロナ... 告示前の政策対談を再度じっくりチェック

 知事選(6月3日告示、20日投開票)に立候補を表明している現職の川勝平太氏(72)と新人の元参院議員岩井茂樹氏(52)=自民推薦=が5月26日夜、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で政策対談を行った。リニア中央新幹線工事に伴う大井川流量減少問題や新型コロナウイルス対策、県の将来展望など県政の主要課題について熱のこもった議論を繰り広げた。

知事選告示を前に対談し肘タッチする川勝平太氏(左)と岩井茂樹氏=5月26日夜、静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館
知事選告示を前に対談し肘タッチする川勝平太氏(左)と岩井茂樹氏=5月26日夜、静岡市駿河区登呂の静岡新聞放送会館
 県の将来像を巡っては両氏の特色が出た。川勝氏はトヨタ自動車が裾野市で進める先進技術の実証都市「ウーブン・シティ」に絡み、「県東部地域を健康で最新技術があふれる地域にする」との構想を示した。隣接する長泉町で先進的な医療城下町づくりが進んでいるとして「互いに実験的な都市づくりで親和性がある。ウーブン・シティという大輪の花が咲くよう額縁を整えたい」と語り、魅力ある地域の創生に意欲を示した。
 一方の岩井氏は将来の県に最も必要なこととして人口減少の克服を上げ、「稼ぐ力がなくてはならない。トップセールスで魅力ある企業にきてもらうことに全力を傾けたい」と自ら企業誘致の先頭に立つ考えを明らかにした。また、女性活躍の必要性も強調し、「女性の能力を生かしたい。女性が当たり前に活躍できるまちになれば少子化克服や若者の人口流出減にもつながる」と訴えた。
 リニア問題では、両氏ともJR東海に対する厳しい姿勢を強調。川勝氏は問題の根源は、JR東海の不十分な調査だと指摘。流量減少以外にも水質や生態系など問題は山積しているとして「リニア自体に反対ではないが、突然、静岡がルートになった。一回立ち止まった方がいい」と訴えた。岩井氏も「JRは説明不足」と現状のままリニア工事を推進することに否定的な見解を示した。決定権は事業者にあるとしながらルート変更や事業中止が選択肢に入るのは当然だとし「(推薦を受けた)自民党がどう考えるかではなく、知事は県民のために何をするかが問われる」と語った。コロナ対策では岩井氏がワクチン接種会場にもなり得る医療従事者の育成センターの創設を提案したのに対し、川勝氏は検査体制を充実させるため、県内に感染症病院を新たに建設する構想を示した。
〈2021.5.27 あなたの静岡新聞〉⇒元記事

一つの焦点「3期12年」 有権者評価は

 20日の投開票に向けて後半戦に入った静岡県知事選では、「多選」を巡っても候補者が舌戦を繰り広げている。3期12年の実績をアピールし、政策の継続性や安定性を4期目の旗印とする現職の川勝平太氏(72)。対する前参院議員の新人岩井茂樹氏(53)=自民推薦=は川勝氏の12年間の政治手法を断じ、年齢も絡めて刷新を訴える。

静岡県の戦後歴代知事(丸数字は当選回数)
静岡県の戦後歴代知事(丸数字は当選回数)
 「現場を知って初めて問題が分かり、初めて政策ができる。常に現場の人々と考えてきた」。13日、静岡市葵区。川勝氏は街頭演説で声を張り上げ、12年の県政運営を誇った。
 これまで、新型コロナウイルス対応やリニア中央新幹線の大井川水問題など「解決に向けてやらなければならないことがある」と主張してきた。各地を回っての演説では、76歳までは働き盛りの世代と定義する県の人生区分をたびたび引き合いに出すなど、“高齢批判”をかわそうとする意識もうかがえる。
 一方の岩井氏は、川勝県政の12年間で県内に閉そく感が広がっているとし「皆さんのもやもやした気持ちに風穴をあけ、新鮮な空気を広げる」などと強調している。「若さ」に言及することで、川勝氏との違いを打ち出そうとする場面も多い。
 党の応援弁士も、多選を念頭に置いた演説が目立つ。13日、静岡市葵区の街頭に立った茂木敏充外相は「静岡県は新しいものが生まれるポテンシャルを持っているが、残念ながらこの10年ぐらい生きていない。刺激が必要だ」と呼び掛けた。
 1947年の地方自治法施行以降、本県の歴代知事は川勝氏を含めて7人。このうち4選を果たしたのは斎藤寿夫氏(51~67年)と石川嘉延氏(93~2009年)の2人。
 県立大の前山亮吉教授(政治学)は4選の例が県政史で少ないことに加え、70代で挑むのは川勝氏が初めてとなった点に着目する。岩井氏の出馬によって「多選の是非や年齢ではっきりした選択肢ができた。4選は多選に当たるかどうかの『分かれ道』。有権者も慎重に判断しなければいけない」と指摘する。
 
 ■4期「多選」の分かれ目
 知事選で注目される「多選」の論戦。全国の都道府県の状況はどうか。全国知事会の公表データによると、公選となった1947年(沖縄は本土復帰の72年)以降、全国の歴代知事は334人で、4期以上は現職を含め94人。3期以上とすると178人まで広がり、5期以上は42人に絞られる。4期は多選か否かの評価が最も分かれる期数と言えそうだ。
 現職の最長は石川・谷本正憲氏の7期。5期が青森・三村申吾、栃木・福田富一、岐阜・古田肇、兵庫・井戸敏三、徳島・飯泉嘉門、大分・広瀬勝貞の6氏、4期は岩手・達増拓也氏ら8人。一方、1期は16人と現職で一番人数が多く、全体の34%を占める。
 過去の最も長い任期は、63~94年の石川・中西陽一氏と51~80年の奈良・奥田良三氏の8期。石川は谷本氏が中西氏の後任で、両氏2人で58年以上県政運営が担われている。
 4期以上務めた知事がいないのは滋賀、大阪、鹿児島、沖縄の4府県。知事の交代が相対的に多いのは宮城、新潟、大阪で、いずれもこれまでに10人(現職含む)が知事に就いた。

ファクトチェック 川勝氏と岩井氏の街頭演説検証

 20日の知事選の投開票が近づき、4選を目指す現職の川勝平太氏(72)と新人の前参院議員岩井茂樹氏(53)=自民推薦=は熱のこもった論戦を繰り広げている。両氏の街頭演説における発言の正確性や妥当性について検証した。

(写真左から)川勝平太氏と岩井茂樹氏
(写真左から)川勝平太氏と岩井茂樹氏

 ■川勝氏の発言
 ワクチン接種が遅いと言われているが、静岡県は医療従事者が日本全体の中で10万人当たり少ない。ですから接種の割合が少ないのは当たり前。(3日、JR静岡駅前)
 【不正確】「人口10万人当たりの医師数」より実態に即した指標とされる医師偏在指標によると、静岡県は47都道府県中39位と医療従事者が全国的に少ないのは確か。14日現在のワクチン接種率(1回目、高齢者)は全国43位で、相関関係があるようにも見えるが、静岡県より指標が下回っている8県のうち、県より接種率が低いのは1県のみ。接種率はさまざまな要因があり、医療従事者が少ないから低いのが「当たり前」とは言い切れない。

 (岩井氏を指して)国策として進めるリニア推進議連の事務局長をしていた人が候補に出ている。(14日、東伊豆町)
 【不正確】岩井氏を「リニア推進派」とする根拠の一つとして同様の発言を繰り返しているが、正確ではない。岩井氏が務めていたのは自民党本部内の組織「超電導リニア鉄道に関する特別委員会」の事務局次長。同党はリニア中央新幹線整備を推進しているが、特別委は政策を議論する党内組織で、政策実現を目指す議連とは性格が異なる。

 ■岩井氏の発言
 国が緊急事態宣言発令区域外でも時短要請に応じた飲食店に1日4万円の協力金を出す制度を作ったが、川勝知事はまったく動かなかった。(12日、JR沼津駅前)
 【不正確】県は全県的に飲食店などへの時短要請を行っていないが、新型コロナウイルス特別措置法に基づく時短要請をこれまで2度実施している。昨年12月23日から2週間、富士市を対象に要請し、応じた飲食店には4万円の協力金を支給。先月19日には湖西市を対象に2週間の時短要請を行い、1日当たり2万5000~7万5000円、大企業は最大1日20万円の協力金の支給を決めた。「まったく動かなかった」というのは不正確な表現といえる。

 JR東海が大井川流域の住民に説明に来ていない。川勝知事が流域住民に説明に行くなとJRに言っているから。(16日、磐田市)
 【不正確】県と流域10市町、利水団体は2018年、大井川利水関係協議会を設立した。会の規約でJR東海との連絡、調整、交渉は県を通じて行うこととし、難波喬司副知事がJRに個別交渉を控えるよう文書で要請した。県に交渉窓口を一本化したのは県のみの判断ではなく、知事がJR東海の説明を止めているとの趣旨の発言は不正確といえる。

 ファクトチェック 政治家や公人の発言の信ぴょう性を検証する報道手法で、近年、国内で注目を集めている。根拠となる統計データや資料と突き合わせて、発言の正確性を確認する。選挙中の候補者の発言は有権者の投票判断の一つになると考え、今回、知事選担当記者が行った。
〈2021.6.18 あなたの静岡新聞〉⇒元記事
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