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プラスチックごみ問題解決へ一歩 静岡県内のユニークアイデアをご紹介

 私たちの生活を便利にしてくれるプラスチック。加工しやすく丈夫で、価格も安いことから、普段何気なく使っているものにも多くのプラスチック製品があります。一方で、焼却時に発生する温室効果ガスや、海に流れ出ることで発生する海洋汚染など、使い捨てられた後の行き先には課題が山積しています。そんな中、プラスチックごみ問題をユニークなアイデアで解決しようと、静岡県内でさまざまな取り組みが進んでいます。いくつかをピックアップして、1ページにまとめました。

海洋プラでサッカーボール⚽ 作って遊んでSDGs学ぼう

 静岡県サッカー協会4種委員会は2024年度から、海洋プラスチックごみを再利用した組み立て式のサッカーボール制作体験会を、県内で開く各大会に合わせて行う。対象は幼稚園や保育園などの園児。SDGs(持続可能な開発目標)を遊びながら学び、サッカーに触れ合う機会の創出を図る。

海洋プラスチックごみを再利用した組み立て式のサッカーボールを制作した園児ら=静岡市清水区の清水総合運動場
海洋プラスチックごみを再利用した組み立て式のサッカーボールを制作した園児ら=静岡市清水区の清水総合運動場
 取り組みに使用するのはスポーツメーカーのモルテン(広島市)が開発した「マイフットボールキット」。地元企業に協力を依頼してキットを購入し、兄弟の大会に同行する園児や開催地周辺の子どもらが、スタッフから海洋プラスチックごみ問題について学びながら制作する。ボールは参加した園児らに寄贈する。サッカーに興味を持ってもらい、競技人口増につなげる。
 2月中旬、静岡市清水区の清水総合運動場で東海大付属静岡翔洋幼稚園の園児を対象に、明治安田生命と試験的に制作体験を実施。園児らはプラスチックが海の生態系に与える悪影響を学び、キットについた組み立て法のイラスト図を参考に作りあげた。制作時間や経費面で実現性が見込めたため、本格実施する運びとなった。
 発案した田中秀和委員長(52)は「子どもに学びの場も提供できる。続けることでサッカーの普及や強化にもつながるはず」と期待した。(東部総局・天羽桜子)
<2024.04.17 あなたの静岡新聞>

リサイクルなど3Rに「断る」「戻す」「回復する」をプラス 静岡県は6R提唱

※2019年5月15日 静岡新聞朝刊から


 プラスチックごみによる海洋汚染が国際的に問題になっていることを受け、静岡県は2019年度、プラスチックごみを減らす取り組みを強化する。プラごみの発生抑制とともに海への流出防止にも力を入れ、県独自のキーフレーズ「6R」を掲げた県民運動を官民で展開していく。
 プラごみ削減に向けて国はリデュース(減らす)、リユース(繰り返し使う)、リサイクル(再資源化する)の英語の頭文字を取った「3R」を提唱している。県はこの3Rにリフューズ(断る)、リターン(戻す)、リカバー(回復する)を加えた6Rを推進する。
 例えばリフューズは買い物時にレジ袋を断る意味で用いる。リターンは外出時のごみ持ち帰りの徹底、リカバーは捨てられたプラごみを拾う海岸や河川の清掃活動などを表す。
 6Rは、分別や回収を柱にした3Rよりも幅広い視野でプラごみ削減を進めてもらおうと県職員が発案した。6Rの考え方に含まれるポイ捨て防止を徹底すれば、プラごみの海洋流出を抑制できるという。官民の関係団体でつくる県民運動の推進本部も、策定中の基本方針に6Rの考え方を盛り込む方針。
 一方、県は19年度、企業から排出されるプラごみの発生抑制にも取り組む。県内の産業廃棄物処理業者30社に、廃棄物処理に精通した専門家をアドバイザーとして派遣。産廃となるプラごみの効果的な再生利用を促し、最終的に埋め立てられるプラごみの削減を図る。(大橋弘典)

粉じんのマイクロプラ汚染を防げ 静岡市のシェアサイクルに天然素材タイヤ

 環境素材の開発を手がけるリッパー(富士市)は15日、静岡市で運営されているシェアサイクル「パルクル」に天然素材のナノセルロースを用いたBXホワイトタイヤを取り付け、耐久性を確認する実証実験を開始した。7月14日まで。

実証実験を開始したホワイトタイヤの自転車=15日午前、静岡市のJR静岡駅北口
実証実験を開始したホワイトタイヤの自転車=15日午前、静岡市のJR静岡駅北口
 一般的なタイヤは石油由来の強化剤を用いるため製造・廃棄時の二酸化炭素(CO2)排出量が多く、タイヤの粉じんによるマイクロプラスチック汚染が大きな問題になっている。一方、木材由来のナノセルロースで強化するホワイトタイヤは、廃棄時に自然環境で生分解されるため環境負荷が少ないとされる。同社は2023年に市の事業支援計画アクセラレーションプログラムに採択され、TOKAIケーブルネットワークと連携して実証実験の準備を進めてきた。
 実験では、ホワイトタイヤと通常タイヤをそれぞれ装着した自転車各3台を配置し、約3カ月間で摩耗度や耐候性などの違いを調べる。奈良県でも6月から同様の実験を始め、データを集めて25年中の商品化を目指す。鈴木幹久社長は「ホワイトタイヤのCO2排出量は従来比8割減が目標。いずれは自動車のタイヤメーカーにも素材を提供したい」と語る。
<2024.04.16 あなたの静岡新聞>

ネイルチップ展示見本を再利用 闘病中も前向きに

 ネイルサロン運営のビューティースマイル(浜松市中央区)は9日、通常は廃棄する展示見本用のネイルチップ(付け爪)を再利用し、がん患者ら病気療養中や体が不自由な人に提供するEC(電子商取引)サービスを始める。コロナ禍の2020年に始めたがん患者らへの寄付の試みを発展させて事業化した。

サービス開始に向けて準備を進める高橋繁世代表(左)ら=1月下旬、浜松市中央区
サービス開始に向けて準備を進める高橋繁世代表(左)ら=1月下旬、浜松市中央区
 開設するスマートフォン向けサイト「ネイルドネーション」にAR(拡張現実)技術を活用した爪のサイズ計測機能を盛り込んだ。初回は無料(送料別)。高橋繁世代表(45)は「柔軟に取り外しできるネイルチップで、闘病中もおしゃれを楽しみ、前向きに過ごしてほしい」と話す。
 プロネイリストが季節や流行に沿って作るチップは、一点ものの多種多様なデザインがそろうが、古くなればその都度捨てていた。コロナ禍の休業期間を利用して活用アイデアを社内で募り、抗がん剤治療による爪の変色に悩む患者らに、県外団体を通じて寄付する取り組みを始めた。本年度約500人に到達した。
 爪の大きさは千差万別のため、提供したチップを実際に身につけてもらうことができるかが課題だった。今回構築したシステムは、AR技術でスマートフォン上に浮き出るマークに合わせ、自分の親指などの爪のサイズをSMLで測る。チップは賛同する全国のネイルサロンから無償提供を受けてリメイク。顧客がデザインを選ぶと、画面に各サロンの紹介を掲載する。
 昨夏、浜松いわた信用金庫が実施した起業家支援の米シリコンバレー派遣事業で海外の投資家らにプレゼンしたところ、プラスチック削減を含めSDGs(持続可能な開発目標)推進に資する事業と評価を得たという。高橋代表は「まずは国内でサービスを広めたい。状況が落ち着いたら、能登半島地震の被災者の方にも目を向けてもらえたら」と話す。(浜松総局・山本雅子)
<2024.02.03 あなたの静岡新聞>
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