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見据えるミラノ五輪「金」 スノボ世界女王・三木つばき選手 強さの秘訣は

 2023年2月、スノーボード世界選手権女子パラレル大回転で日本人初優勝を飾った三木つばき選手(20)=浜松いわた信用金庫、掛川市=。スポーツ界で優秀な成績を収めた静岡県関係の選手、指導者などをたたえる第72回静岡新聞社・静岡放送スポーツ賞の大賞に輝きました。これまでの活躍とともに、「8割の力で金メダル」を目指すミラノ五輪への意気込みをまとめます。

「マイナー競技応援に感謝」 さらなる飛躍へ決意

 ※2024年2月10日 あなたの静岡新聞から

スポーツ大賞の表彰を受ける三木つばき選手=9日午前、静岡市駿河区の静岡 新聞放送会館(写真部・小糸恵介)
スポーツ大賞の表彰を受ける三木つばき選手=9日午前、静岡市駿河区の静岡 新聞放送会館(写真部・小糸恵介)
 第72回静岡新聞社・静岡放送スポーツ賞の表彰式が9日、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で行われた。スポーツ界で優秀な成績を収めた静岡県関係の選手、指導者や、スポーツ振興に尽力した功労者ら6個人1団体が受賞し、さらなる飛躍へ決意を新たにした。
 「スポーツ大賞」は昨年2月のスノーボード世界選手権女子パラレル大回転で日本人初優勝を飾った三木つばき(20)=浜松いわた信用金庫、掛川市=。受賞者を代表し「県民の皆さまに、スノーボードアルペンというマイナー競技を優しく朗らかに応援していただき幸せを感じている。静岡のスポーツ界をもっと盛り上げていきたい」とあいさつした。
 静岡新聞社・静岡放送の大須賀紳晃社長は「積み重ねた努力が実を結び、県民に大きな感動をもたらしくれた。受賞をステップに次のステージを目指してほしい」と選手を激励。功労者と指導者には「長きにわたり後進の指導、育成に力を注いでいただいた。それぞれの分野で走り続ける背中を見せていただきたい」と述べた。

“雪なし県”から世界へ 19歳で女王に

 ※2023年4月13日 あなたの静岡新聞から

スノーボードの世界選手権で女子パラレル大回転を制し、表彰式で笑顔の三木つばき(中央)。スノーボードのアルペン種目で日本勢として初の世界一に輝いた=2月、ジョージアのバクリアニ(共同)
スノーボードの世界選手権で女子パラレル大回転を制し、表彰式で笑顔の三木つばき(中央)。スノーボードのアルペン種目で日本勢として初の世界一に輝いた=2月、ジョージアのバクリアニ(共同)
 暴れるボードを全身で押さえ込み、19歳の新星が世界一のループを描いた。スノーボード世界選手権(2月、ジョージア)女子パラレル大回転。三木つばき(キャタラー、掛川市)は決勝のスタートゲートで「滑りたいように滑ろうと吹っ切れていた」。大荒れのコースも意に介さず、北京五輪2位のダニエラ・ウルビング(オーストリア)を追い込む。“雪なし県”静岡から日本アルペン界初の世界女王が誕生した。

滑るアイデア 静岡から生まれる 目標は3年後五輪で金
 長野県で生まれ、5歳で掛川市へ。単身で山ごもりするなど雪を求めた時期もあるが、今は「雪から離れなければいけない時間が長いから、雪のありがたさを感じる」。新しいアイデアが浮かぶのは、意外にも静岡で過ごす時間。あんなふうに滑りたい-。次に雪上に立てる時を思い描くとトレーニングにも力が入るという。
 1年前の北京五輪は決勝トーナメント1回戦で途中棄権した。昨年12月のワールドカップ(W杯)は3戦とも転倒。そこから目指したのは、荒れたコースで限界まで攻めても絶対に転倒しない滑りだ。コーチ不在の今季は技術指導を受けられない上、練習環境の確保にも奔走。1月末までW杯の表彰台に届かずくじけかけたが貫いた信念が大一番でものをいった。
 世界選手権の決勝は二つ目の旗門でいきなりバランスを崩した。後に「バンクを使ってスピードに乗る作戦だったが、予想以上に荒れていた」と明かしたミスで出遅れた。だが、そこからはどれだけ雪面にボードがとられても、紙一重で踏みとどまる。「やってきたことは間違っていない」。両腕を突き上げゴールに飛び込んだ。
 ただ19歳は日本人初の快挙にも冷静だ。2日後のパラレル回転は9位に終わり、「一つ優勝したから『世界一』という競技ではない」と自覚する。目標は3年後。「ミラノ(五輪)で必ず金メダルを取る。高みを目指していきたい」

 みき・つばき 2003年6月1日、長野県で生まれ、4歳からスノーボードを始めた。最年少15歳で日本代表に選ばれワールドカップ(W杯)に出場。全日本選手権も史上最年少優勝を果たし、22年北京五輪に18歳で出場した。23年世界選手権はパラレル大回転で日本アルペン界初の優勝。世界ジュニア選手権も制した。日体大2年。19歳。
 ※内容は当時のまま

独占インタビュー 「8割の力で金メダル」

 ※2024年2月11日 あなたの静岡新聞から

インタビューに応じる三木つばき選手=静岡市駿河区の静岡 新聞放送会館(写真部・小糸恵介)
インタビューに応じる三木つばき選手=静岡市駿河区の静岡 新聞放送会館(写真部・小糸恵介)
 昨年2月のスノーボード世界選手権女子パラレル大回転で優勝し、第72回静岡新聞社・静岡放送スポーツ賞の大賞に輝いた三木つばき選手(20)=浜松いわた信用金庫、掛川市=が9日、インタビューに応じました。日本アルペン界初の快挙から1年。ワールドカップ(W杯)9戦で優勝1度、3位4度と好成績を残す今季の手応え、2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への意気込みを聞きました。
―世界選手権の優勝を振り返ってください。
 「『絶対に優勝するぞ』という気持ちではなく、一本一本いい滑りをしたことの積み重ねでした。現地で『日本人初めてです』と言われて、後からうれしさが沸いてきました」
―優勝後に心境は変化しましたか。
 「世界選手権という誰もが分かるタイトルを獲得し、メディアにも取り上げてもらえました。スノーボードアルペンというマイナー競技を認知してもらい、業界に少しでも貢献できたかなと思います。また、「三木つばき」という名前を広めることができ、応援してくださるスポンサーの方々に恩返しができたかなとも思います」
―今季は好成績を残しています。
 「練習環境を向上させることができたのが結果につながっています。道具のメンテナンスが大事な競技で、板のメンテナンスを専門とするサービスマンを付けることができたのがすごく大きいです。自身としては、パラレル大回転で五輪までに習得したい技術が具体的になり、迷いがなくりました」
―サービスマンの存在は心強いですか。
 「コースは雪を氷のように仕上げるので、ターンする時に板のエッジを雪にめり込ませなければいけません。エッジを包丁のように研いでおかないと、転倒につながります。世界選手権は滑走ごとに研ぐことができず、優勝後に『よく、こんな板で勝てたな』と驚かれました。今は板を120%信頼できますし、板も応えてくれています。(競技環境としては)他の選手に並んだ感じですが、自分の中ではむしろ「有利だな」と感じて雪上に向かえています」
―技術面の目標を教えてください。
 「男子選手のような滑りすることが大きなテーマです。男子の方が女子より圧倒的に速く、そこを目指せば必然的に女子の中でも上位にいけます。今は上半身と下半身を連動させた3次元的な動きを意識しています。苦手だった緩斜面のコースでも結果を残せていて、成績、技術面とも目標をクリアできていると思います」
―今季は開幕前にエステル・レデツカ選手(チェコ)を参考に、滑りに「ひねり」の要素を加えることを掲げていました。完成度はいかがですか。
 「練習で少しやってみましたが、基礎からだなと思ってます。ひねりを取り入れる前に必要な技術が2段階あって、1段階目がようやく習得できそうなところです。五輪までの2年間のスパンで取り組みたいと思いますが、もう2段階速くなれるなと感じています」
―技術面で今季中の目標はありますか。
 「フロントサイドターンで、エッジをより雪にかませる動きがひねりを取り入れるために必要になります。昨年12月から練習し、だいぶ完成してきました。バックサイドターンでも練習中の動きがあります。かなり反復練習が必要で、今は『もろ刃の剣』なんですが、1月のW杯で1、2ターン試したら板の加速が全く違いました。習得すればめっちゃ速いです」
―五輪まであと2年、ここからのビジョンを教えてください。
 「最終目標は五輪の金メダルです。来季は世界選手権が開催されるので大回転を連覇し、前回9位だった回転との2冠を狙っていきます。今季は例年と比べてもトップクラスの成績を残せていると思いますが、『2勝を含む3度の表彰台、準決勝進出率6割』という目標に少し足りません。W杯残り4戦で優勝1度、3度のベスト4進出を決めて目標を達成したいです」
―W杯ではレデツカ選手との対戦もありました。どんな印象を感じましたか。
 「タイムでは僅差で負けた形ですが、レデツカ選手はスキーをやりながらぱっとスノーボードに参戦しスキーに戻っていきます。滑りに余裕があり、7~8割で確実に勝ちに来ていました。本気で滑っているように見えた予選1本目のタイムは自分より1秒近く速いです。勝たない限り圧倒的な差があります」
―静岡への思いを教えてください。
 「雪上スポーツをしたことがない人が多い中で、応援してもらえるのは特別なことです。雪が降らないことを不利に感じたことはありません。雪から離れることでより競技に熱中できます。気候が暖かく、地域の方も朗らかでニコニコ。100分の1秒を、命を削って滑っているので、帰った時に「つばきちゃん頑張ってるね」と声をかけられると、「頑張ろう」と思えます。(長野生まれでも)心は根っからの静岡県民。静岡に住めて良かったなと思います」
―五輪への意気込みをお願いします。
 「世界選手権の優勝で、五輪の金メダルに現実味を感じてもらえたと思います。あと2年で『8割の力で金メダル』という目標にぎりぎり到達できそうです。応援してくれる方々に優勝する姿をお見せしたいです」
 (聞き手=運動部・山本一真)

動 画

今季の成績は パラレル大回転でW杯2勝目

 ※2024年1月27日 あなたの静岡新聞から

W杯パラレル大回転で今季初勝利を挙げた三木つばき(中央)=ログラ(FIS提供・共同)
W杯パラレル大回転で今季初勝利を挙げた三木つばき(中央)=ログラ(FIS提供・共同)
 スノーボード女子アルペン種目の三木つばき(浜松いわた信用金庫、掛川市)が25日、スロベニアのログラで行われたワールドカップ(W杯)パラレル大回転で今季初優勝した。同着だった2022年3月のパラレル回転以来、通算2勝目。欧州の練習拠点としている場所で頂点に立ち「ホームで初の単独優勝ができて、とてもうれしい」と喜んだ。
 予選を2位で通過。決勝トーナメントを順当に勝ち上がり、決勝で予選1位のミヘーレ・デッカー(オランダ)を0秒03差で破った。
 昨季は世界選手権を初制覇したがW杯は未勝利だっただけに「やっと優勝の報告ができて安心している」。さらなる飛躍を期す今季は非五輪種目のパラレル回転も含めてW杯8試合中5試合で表彰台と力を付けている。
(共同)
地域再生大賞