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待望の「富士川かりがね橋」3月9日開通 事業開始から約20年を振り返ります

 日本三大急流のひとつに数えられている富士川。その急流ゆえの難所が多いものの、古くから甲斐と駿河とを結ぶ交通路として利用され、地元住民の生活に結びついてきました。富士市の平野部では、川をまたぐ道路は有料道路を除いて富士川橋と新富士川橋の2つに限られ、地元住民は長年の慢性的な交通渋滞に悩まされてきました。事業開始から20年余り。住民との協議を経て、待望の3つ目の橋「富士川かりがね橋(旧:新々富士川)」が完成します。これまでを振り返ります。

事業開始から約20年 待望の橋「富士川かりがね橋」開通へ

 静岡県は(2023年12月)13日、富士市で建設中の「富士川かりがね橋」を2024年3月9日午後3時に供用開始すると発表した。事業開始から20年余りを経て開通を迎える。

 県道に架かる同橋は東名高速道の北側に位置し、同市岩本と同市木島を結ぶ742メートル。片側1車線の車道の北側に歩道を渡す。県は総事業費約130億円を投じ、02年から23年を事業期間として橋を含む延長約1・4キロ区間の整備を進めてきた。1日1万3千台の交通量を想定。市が整備した東側約500メートル部分は今年8月に開通している。
 同市の平野部では、高速道路を除くと東西を結ぶ橋が国道1号の新富士川橋と県道富士由比線の富士川橋に限られている。朝夕の時間帯を中心に渋滞が課題となってきた。富士川橋の代替路となる富士川かりがね橋の開通により、混雑緩和に加え、富士川の東西や山梨県峡南地域との交流促進、災害時緊急輸送路補完などの効果を見込む。
 13日の定例記者会見で開通日を発表した川勝平太知事は「山梨県南部を含めた広範囲の交流が活性化され、地域の発展に大きく寄与する」と期待した。小長井義正富士市長は「長年の悲願だった(橋の完成と)開通日が決定し、大変うれしい。両岸の歴史や思いを乗せ、市民に愛される橋になることを願う」とコメントした。
 県と市は開通日に、国や県、関係者が出席する開通式典を予定している。
 (政治部・青島英治)
<2023.12.14 あなたの静岡新聞>

【2002年】富士市長との話し合いは平行線 住民、生活環境の悪化懸念「白紙に戻してほしい」

 ※2002年6月13日 静岡新聞朝刊から

住民ら50人余りが出席した富士市の上町区新々富士川橋反対同盟委員会と市長との懇談会=同市岩本
住民ら50人余りが出席した富士市の上町区新々富士川橋反対同盟委員会と市長との懇談会=同市岩本
 富士市岩本の「上町区新々富士川橋反対同盟委員会」と(当時)鈴木尚市長との初の懇談会が(2002年6月)11日夜、50人余りが出席して同区公会堂で開かれた。鈴木市長は建設推進の立場から、環境、交通対策に住民の意向をできるだけ反映させる方針を示したが、生活環境の悪化を懸念する住民らとの話し合いは平行線に終わった。
 就任後初の(2002年)2月定例市議会で鈴木市長が、反対住民らと「自らひざを交えて話し合う」意向を示したことを受け、「生の声を聞いてほしい」とする住民側の要請で懇談会が実現した。富士川新橋の必要性では認識は一致したが、ルート公表までの静岡県の姿勢などに住民から不信感が示され、「住民不在の計画。白紙に戻してほしい」と言った意見が相次いだ。
 新々富士川橋(富士川かりがね橋)は、県道富士川橋の慢性的な渋滞解消などを狙いに、富士市岩本―富士川町木島に架ける富士川新橋として三月に県が都市計画決定した。本年度から測量調査などに入る予定。アクセス道北側の上町区住民の反対同盟委員会は、騒音、排ガスなどによる住環境や学校環境の悪化の懸念などを訴えている。二月の市都市計画審議会は「住民の不安感を取り除くため地元と十分に協議を」との異例の付帯意見付きで、アクセス道の計画案を承認した。

【2012年】側道整備などで地元住民と合意 建設へ進展

 ※2012年6月15日 静岡新聞朝刊から

 富士川を挟んで富士市木島地区と岩松地区を結ぶ新々富士川橋の実現を目指す建設促進期成同盟会の総会が(2012年6月)14日、市内で開かれた。県と市、建設反対の地域住民でつくる「対策検討会議」の3者が側道整備などに合意し、用地測量も完了したことが報告された。本年度から橋と周辺道路の設計や用地交渉が進む。
 合意できたのは(2012年6月)13日。県富士土木事務所によると、3者は同橋建設に伴って生じる生活道分断などの課題解決策として、側道などを整備することについて文書で確認した。
 また、同橋と県道鷹岡柚木線を結ぶ500メートルの路線測量も3月に終了した。同橋本体部分の測量は終わっているほか、同県道と市道富士鷹岡線をつなぐ市道部分は、同市が整備を進めている。
 総会には富士、富士宮両市、山梨県南部、身延両町の首長や県議会議員ら約30人が出席。鈴木会長が早期開通に向けた協力を呼び掛けた。新々富士川橋は県が10年前に事業着手。富士地域や山梨県南部の経済活性化、周辺道路の渋滞緩和、災害時の緊急輸送路としての機能などが期待されている。

名称「富士川かりがね橋」の由来は? 地域を守ってきた遺産から

 ※2022年1月27日 静岡新聞朝刊から

富士川かりがね橋の完成イメージ図(県提供)
富士川かりがね橋の完成イメージ図(県提供)
 静岡県は(2022年1月)26日、2023年度中の供用開始を目指し、富士川で建設を進めている新々富士川橋(仮称)について、正式名称を公募した結果、「富士川かりがね橋」に決定したと発表した。
 県道路整備課によると、一般公募で寄せられた名称3064件のうち、18件が「富士川かりがね橋」だった。江戸時代に建設され、富士川の水害から地元住民を守ってきた歴史的遺産「雁堤(かりがねづつみ)」に由来するという。地元関係者でつくる検討委委員会が審査、選定した2023年度中の供用開始。
 富士川かりがね橋は県の事業区間1・4キロ(橋りょう部740メートル)で、東名高速道と新東名高速道の間に位置する。既存の富士川橋で慢性的に発生している交通渋滞の解消や、大規模災害時の輸送ルート確保など、富士川をまたぐ新たな交通インフラとして期待されている。
地域再生大賞