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杭州アジア大会閉幕 静岡県勢の活躍は

 連日の熱戦に沸いた「中国・杭州アジア大会」が10月8日、幕を閉じました。静岡県勢は24のメダルを獲得。静岡新聞は臨時支局を設けて、現地から活躍を届けてきました。柔道や卓球、自転車やサッカーと、来年夏に控えるパリ五輪に向けて活躍が光った選手たち。戦いの軌跡をまとめました。

勝負師、橋本壮市「五輪で」雪辱誓う 柔道「銀」

 日本柔道界では大ベテランの域に達しても常に戦いの中に身を置く。男子史上最年長の32歳でパリ五輪代表に内定した73キロ級の橋本壮市(パーク24、浜松市中区出身)は、男子の早期内定組でただ1人、25日の中国・杭州アジア大会に参戦した。今大会県勢初メダルにも「銀」では悔しさばかりが募ったが、もともと多くの敗戦を糧に地力を磨いてきたたたき上げ。今度も「反省を生かし五輪で金メダルを取る」。

男子73キロ級決勝 ウズベキスタン選手に敗れ、悔しがる橋本壮市=25日午後、中国・杭州(静岡新聞社臨時支局・二神亨)
男子73キロ級決勝 ウズベキスタン選手に敗れ、悔しがる橋本壮市=25日午後、中国・杭州(静岡新聞社臨時支局・二神亨)
 2017年に世界選手権で初出場優勝。強豪が集う主要国際大会でも10度の優勝を誇る。ただ、対戦を重ねれば研究され、勝ちきれない場面も増えていく。5度の世界選手権は全てメダルを手にしたが優勝は最初の1度だけ。それは、同学年で同階級五輪2連覇の大野将平氏(旭化成)が、出場大会を絞って絶対的な強さを示したのとは対照的なスタイルだった。
 結果的に直接対決がないまま東京五輪は補欠に甘んじた。だが、信条は変わらない。「研究されても、さらに自分のレベルを上げていく」。今春、ライバルが第一線から退いた後も、国内外で泥くさく戦い続け、パリ切符を手にした。
 今大会も出場の打診は五輪内定前。代表選考の対象にならないことは分かっていたが迷いはなかったという。22年世界王者のツェンドチル・ツォグトバータル(モンゴル)、決勝で敗れた今年の世界3位ムロジョン・ユルドシェフ(ウズベキスタン)らアジア圏に強豪が集う同階級。「次に向けて頑張るだけ」。屈辱の前哨戦で勝負師の闘志に火がついた。
(杭州=静岡新聞社臨時支局・山本一真)
〈2023.09.26 あなたの静岡新聞〉

卓球女子団体「銀」 平野美宇、王国に粘り

 杭州アジア大会第4日の26日、卓球女子団体は決勝で中国に0-3で敗れ、銀メダルだった。平野美宇(木下グループ、沼津市出身)は2番手で世界ランク2位の陳夢と対戦し、一時はゲームカウント2-1とリードしたが逆転負けした。

女子団体決勝 中国戦に出場した平野美宇=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
女子団体決勝 中国戦に出場した平野美宇=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
▽女子団体決勝
中国 3―0 日本
○ 孫穎莎 3(11―6 12―10 8―11 11―9)1 早田(日本生命) 
○ 陳夢 3(12―10 8―11 7―11 11―8 11―5)2 平野美(木下グループ) 
○ 王曼昱 3(6―11 11―4 11―7 13―11)1 張本美(木下アカデミー)

平野 攻防進化  中国の背中はまだ遠い。だが、敵地の大舞台で日本は確かな可能性を示した。早田が孫穎莎に一矢報い、平野は陳夢をあと一歩まで追い詰める。15歳の張本も王曼昱から1ゲームを奪った。優勝が至上命令の自国開催で、世界ランクトップ3を投入した本気の王国と渡り合った。
 2番手の平野は第1ゲーム、10-8から4連続失点で奪われた。東京五輪シングルス女王は鉄壁の受けでどんな強打も返してくる。得意のラリーで打ち負けた展開に、以前なら一方的な試合になっていたかもしれない。だが、ここからの攻防に平野の進化が表れた。
 第2ゲームからサーブやレシーブで陳夢のフォア前への短いボールを意識的に増やした。高速ラリーのイメージが強いが「もともと台上技術は得意」と平野。ネット際の技術戦で好機をつくり一気に仕留める。緩急を生かした組み立てで2ゲームを連取。最後は強引にラリーに持ち込まれて逆転されたが、渡辺監督も「台上技術は中国人コーチとすごく練習している。プレーのバランスが良くなってきた」と成長を認める。
 ストレート負けながら3時間に迫る大熱戦には、百戦錬磨の相手指揮官も「近年で最も苦しく、激しい試合。今後何年も国際大会の決勝で戦うことになる」と警戒感を口にせざるを得ない。「中国との距離は縮まっている」と平野。パリ五輪代表選考にも関わるシングルスでそれを証明する。
(杭州=静岡新聞社臨時支局・山本一真)
〈2023.09.27 あなたの静岡新聞〉

サッカー日本女子「金」 千葉(藤枝順心高出)とどめの4点目

 杭州アジア大会は6日、中国浙江省杭州市でサッカー女子決勝を行い、日本が4―1で北朝鮮を破り、2大会連続3度目の金メダルに輝いた。

日本―北朝鮮 後半、チーム4点目のゴールを決める千葉=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
日本―北朝鮮 後半、チーム4点目のゴールを決める千葉=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)

 ▽女子決勝
 日本 4(1―1 3―0)1 北朝鮮
 ▽得点者【日】中嶋、大沢、谷川、千葉【北】キム・ギョンヨン
 
 決勝は過去1勝2敗。2大会前に優勝を阻まれた北朝鮮を若き日本が大量4発で圧倒した。同時期に国際親善試合が組まれたため実質的な“B代表”。規定で「なでしこジャパン」の愛称も名乗れないチームがアジア連覇で選手層の厚さを見せつけた。
 強靱(きょうじん)な身体能力と個人技で押し込まれたが、ワールドカップ(W杯)8強の主力組と遜色ない組織力で勝機を見いだした。
 前半10分に右サイドの山本(日テレ東京V、掛川JFC出)が浮き球で中嶋(広島)の先制ゴールを演出した。1―1の後半はGK浅野(ちふれ埼玉、JFAアカデミー福島出)が再三の好セーブ。21分にCKから勝ち越すと、試合を決定づけたのは県勢2人の豪快な一発だ。
 24分に谷川(JFAアカデミー福島)が中央で左足を振り抜き、3分後には左サイドを抜けた千葉(千葉、藤枝順心高出)が弾丸ライナーで突き刺し、6分間で3得点。日本の国歌斉唱にブーイングが響いた完全アウェーのスタジアムを“沈黙”させた。
 W杯組で唯一参戦した千葉は大会を通じて7得点。代表初招集の若手も躍動した。パリ五輪での世界一奪還へ、チームは大きく底上げされた。
(杭州=静岡新聞社臨時支局・山本一真)
〈2023.10.07 あなたの静岡新聞〉

【スライドショー】輝く静岡県勢アスリート

  

 中国・杭州で8日まで、熱戦が続くアジア大会。40競技481種目を繰り広げ、五輪競技はもちろん、クリケットなどアジア諸国で人気の高い競技も実施される。開会式では花火の打ち上げが恒例だが、環境への影響に配慮してデジタル演出となった。アスリートの活躍を中心に、ここまでの大会を振り返る。

(杭州=静岡新聞社臨時支局・二神亨)
〈2023.10.06 あなたの静岡新聞〉

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