知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

ゲーム依存の恐怖… 静岡県内の実情や対策は

 ついつい夢中になってしまうゲーム。スマートフォンで気軽に遊べるようになった分、夏休みのこの時期に熱中してしまう子どもは多いのではないでしょうか。しかし、あまりに度が過ぎてしまうと日常生活に影響を及ぼす場合があります。家族でどこまでルールを決めるか、また静岡県内での相談先や対処法をまとめました。

「ゲーム障害」 子どもどう守る? 保護者、相談や対処に困惑

 ※2022年7月8日 静岡新聞朝刊から

 世界保健機関(WHO)が、オンラインゲームなどのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を国際疾病に正式認定して3年余り。社会的な関心の高まりとともに、県内関係機関への問い合わせや相談がここ数年、増加の一途をたどる。一方、新たに認定された依存症のため、相談先や対処法が分からずに苦慮する保護者も多い。県などは周知や対策を進めている。

静岡県、周知・対策強化
  「昼夜逆転でゲームばかり。健康と社会から離れていくことが心配」。5月、ゲーム依存当事者と保護者のために県が浜松市で開いたセミナー。市内の60代女性が胸の内を明かした。引きこもり生活が続く20代後半の息子は「注意をしても、反応がない」という。
  高校生の息子を持つ50代女性も「朝起きられずに学校を休むようになり、成績もどんどん落ちた。どこに相談していいか分からなかった」とつぶやいた。
  ゲーム障害は自分が制御できず、学校や仕事などの日常生活よりもゲームを優先するなどの特徴がある。一定期間以上続くと、アルコールやギャンブルと同様に治療が必要と判断される。スマートフォンやタブレット端末の普及に伴い、ここ数年、世界中で社会問題化している。
  ゲーム障害に対応する県内の複数の医療機関によると、この数年で子供の依存症を疑う保護者からの相談が急増している。聖明病院(富士市)の担当者は「新型コロナの影響で在宅時間が増えたことも一因」と指摘。一次相談を受ける県と浜松、静岡両政令市の精神保健福祉センターにも問い合わせが相次ぎ、対応を進めている。
  県は19年度から、ゲーム障害の対策を本格化させた。保護者や当事者向けのセミナーを定期的に開催。医療機関の協力を受け、小中学生がネットと離れた環境で、ネットとの付き合い方を見直すキャンプ事業を実施したり、パンフレットを制作したりしている。
  県障害福祉課の担当者は「どう対応したらいいのか、どこに相談したらいいかさえも分からない保護者が多いのが実情」と受け止める。その上で「疾病と判断されるほど深刻化する前に、早期に相談してほしい」と話す。(浜松総局・宮崎浩一)
※表記、肩書、年齢などはいずれも当時

「親子でリテラシー向上を」 富士・聖明病院 松井一裕さんに聞く

 ※2022年7月8日 静岡新聞朝刊から

県のセミナーやパンフレット作成にも協力する公認心理師の松井一裕さん=富士市の聖明病院
県のセミナーやパンフレット作成にも協力する公認心理師の松井一裕さん=富士市の聖明病院
 ゲーム障害を巡っては医療機関など「受け皿」不足も課題に挙がる。県などによると、県内の専門医療機関は数カ所にとどまる。17歳以上のゲーム依存に対応し、県のセミナーにも協力する聖明病院(富士市)の公認心理師松井一裕さん(36)に実情を聞いた。

  ―どのような兆候が見られるのか。
  「朝から夜遅くまでゲームをしている、食事に呼んでも部屋から出てこない、注意すると怒る、学校を休む日が増えた―などは疑うべきだ。ほかの依存症と共通するが、本人が問題を感じても認めたがらない傾向にある。ゲームに基づいた問題が障害を引き起こすことは十分認知されておらず、低年齢化も危惧される。家族がサインに気付き、治療や改善に結びつけてほしい」

  ―健康面などへの影響は。
  「食生活の乱れや運動不足による体力の低下、成長の妨げが考えられる。うつ病やイライラしやすくなることも研究で明らかになった。成績低下や欠席増加で不登校につながることもある。ゲームを取り上げた保護者への暴言や暴力、課金による金銭の浪費も問題」

  ―対策はあるのか。
  「依存などの発覚後にルールを作る保護者が多いが、それでは遅い。最初が大事。ルールも押しつけるのでなく、親子で一緒に決めるべきだ。既に兆候がある場合、ゲームを一方的に遮断するより上限を決め、うまく付き合うことが必要。親子でネットリテラシーを向上させることが深刻化の予防につながる」
※表記、肩書、年齢などはいずれも当時

御前崎の小中学生 ゲーム時間、全国平均を上回る 依存防止に注力

 5月の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、平日にテレビやスマートフォンなどで2時間以上ゲームをする御前崎市の小中学生の割合が全国平均を大きく上回ることが明らかになった。市教育委員会は「大きな問題」として、依存防止の取り組みに引き続き注力する。

平日のゲーム使用時間が1日2時間以上の割合
平日のゲーム使用時間が1日2時間以上の割合
 同テストは全国の小学6年生と中学3年生を対象に行われた。ゲームの使用時間を尋ねる質問は六つの選択肢があり、「4時間以上」「3時間以上4時間未満」「2時間以上3時間未満」のいずれかを選んだ割合は、御前崎市の小6は56・9%、中3は76%だった。全国平均を小6は7・5ポイント、中3は19ポイント上回った。
 同テストと別に市が行った標準学力調査では、小4、小5、中1、中2にテレビを見たりインターネット、ゲームを使ったりする時間を質問し、いずれも全国平均より多い傾向が表れた。
 市教委は学校関係者や保護者、地域住民らで構成する「スクラムスクール運営協議会」で、2019年から子どものネットやゲーム依存の防止を重要なテーマに設定し、解決策を話し合ったり識者の講演を開いたりしてきた。
 河原崎全教育長は「力を入れてきたがまだまだということ」と各調査の結果を受け止め、「生活習慣の乱れや体力、視力の低下などにつながる恐れを児童や生徒、保護者に丁寧に説明していく必要がある」と語った。(木村祐太)
 〈2021.9.15 あなたの静岡新聞〉

スマホやゲーム 家族間のルール重要 久里浜医療センター名誉院長 島田で講演

 島田市教育委員会主催の家庭教育講演会がこのほど、同市のプラザおおるりで開かれた。久里浜医療センター(神奈川県)の樋口進名誉院長が「親子関係が良好になるためのゲーム・スマホとの付き合い方」をテーマに講演した。

ゲームやスマホ依存の対処法などを伝えた樋口名誉院長=島田市のプラザおおるり
ゲームやスマホ依存の対処法などを伝えた樋口名誉院長=島田市のプラザおおるり
 市内の親子ら146人が参加した。樋口名誉院長はインターネットやゲームの依存に伴い、学業成績の低下や家庭内暴力、睡眠障害などあらゆる面で問題が出やすいと指摘。使用する時間や場所、金額など家族間でルールを定めることが大切と説いた。守れなかった場合のルールも定め、必ず書面に残して目に付くところに置くことを勧めた。
 親の望ましい対応として子どもが熱中する訳を理解する努力や、子どもに対する要求が現実的かを考える必要があるとし、改善が見られた場合は「小さなことでも取り上げてほめてあげてほしい」と呼びかけた。(島田支局・池田悠太郎)
〈2023.7.6 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞