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若いアイディアと情熱で新商品を! 企業とのコラボで続々誕生

 生徒や学生と企業がコラボし、食品などの商品開発を行う事例が最近も続々誕生しています。開発に関わるのは商品の味からパッケージのデザインなど本格的。大ヒットとなった例もあり、開発した商品を元にした地域活性化にも期待がかかります。若者たちのアイディアと情熱が生んだ事例をまとめました。

フェアトレード菓子に新味 静岡文化芸術大サークル、今秋発売へ

 発展途上国などの生産品を適正価格で取引する「フェアトレード」に取り組む静岡文化芸術大(浜松市中区)のサークル「りとるあーす」が、フィリピン産のフェアトレードの黒糖などを使った菓子「メリエンダ」の新しい味の開発に取り組んでいる。10年ほど前に卒業生が開発に携わった菓子で、節目の年に「新商品でさらに学内外に浸透させたい」と一新を図る。

新しい「カスカラ味」を試食して意見を交わす学生=18日、浜松市中区の静岡文化芸術大
新しい「カスカラ味」を試食して意見を交わす学生=18日、浜松市中区の静岡文化芸術大
 メリエンダは、タガログ語で「おやつ」という意味のクッキー。当時の学生と、静岡市のフェアトレードショップ「Teebom(テーボム)」、就労継続支援B型事業所「ひまわり工房」が共同開発した。2013年に発売され、現在、アーモンド、雑穀など6種類の味がある。同店で購入を続けるファンもいるロングセラーになっているほか、宮城県の店舗や鹿児島県のギャラリーなど県外でも販売されているという。1袋70グラムで税込み350円。
 一方、同大での認知度は低いことから、関係者がパッケージデザインの見直しや新しい味の開発を提案した。新しい味の開発は、14年以来9年ぶり。コーヒーの生産過程で廃棄されるコーヒーチェリーの果肉や皮の部分「カスカラ」を乾燥させて、クッキー生地に練り込む「カスカラ味」を考案した。
 カスカラもフェアトレード商品で、エルサルバドルで生産されている。気候変動や温暖化によって将来コーヒーの生産量が減少する危険性から、豆以外で収入を得る方法として注目され、現地の生産者の自立や生活支援につながる。
 18日、学生とテーボム、ひまわり工房をオンラインでつなぎ、カスカラ味の試食会が開かれた。3種類の試作品を食べ比べ、「少し酸味があり、レーズンのよう。香りもいい」「果実感があると、香りは少し弱い」と意見を交換した。
 今秋の販売を目指している。りとるあーす代表の渡辺さらさん(国際文化学科2年)は「商品の魅力を感じてもらいながら、フェアトレードを知る機会になればうれしい。学内での啓発を進めていきたい」と意気込みを語った。
 新しいパッケージデザインを担当した川名春野さん(デザイン学科3年)は「若年層へのアピールを意識した。カスカラ味は薄いピンクでフルーティーさを表現し、他の味も素材を想像しやすい色や柄にした」と話した。
(浜松総局・日比野都麦)
〈2023.7.25 あなたの静岡新聞〉
 

伊豆伊東高生 ニューサマーオレンジゼリー開発 地元企業と

 伊豆伊東高の総合探究部フロンティア班が伊東市の氏原製菓と共同で新商品「伊豆ニューサマーオレンジゼリー」を完成させ、売り出した。市内3高校が統合して伊豆伊東高となってから開発した商品で、爽やかなかんきつ類の味わいを生かした菓子が誕生した。

商品をPRする生徒=伊東市内
商品をPRする生徒=伊東市内
 前身の伊東商高フロンティア部は氏原製菓とともに「伊豆ニューサマーオレンジラングドシャ」を送り出し、商業高校フードグランプリ(伊藤忠食品主催)で大賞を獲得。大ヒット商品になった。そのラングドシャに続く商品を開発しようと、今回も両者がタッグを組んだ。
 商品は8個入りと12個入りの2種類。ゼリーを個包装にして、手を汚さずに食べやすいように工夫した。生徒たちは味や形状の開発過程に関わり、外箱のパッケージデザインや同封する商品の特徴を記したメッセージなども手がけた。
 学校統合で新体制となったフロンティア班には旧伊東高城ケ崎分校の生徒や1年生も加わり、発想を取り入れた。リーダーの山田彩乃さん(2年)は「幅広い年齢の人に楽しんでもらえる。家族みんなで食べてほしい」とPRした。
 伊豆地域の土産物店などで販売し、販路拡大を目指す。氏原製菓の内山直樹社長(43)は「間違いなく売れる商品になった」と胸を張り、フードグランプリにも出品を予定する。
(伊東支局・白柳一樹)
〈2023.7.19 あなたの静岡新聞〉

湖西のバナナで新商品開発へ 浜松大平台高生 農園見学

 浜松市西区の浜松大平台高国際情報ビジネス系列の3年生16人が12日、篠原建設(同区)がバナナの無農薬栽培を行う湖西市利木の農園と古民家カフェを見学した。総合実践の授業の一環で、地元企業と連携して同社が栽培するバナナを使った商品開発に取り組み、10月の販売を目指す。

榊原社長(左端)の説明を聞きながらジェラートを試食する生徒=湖西市利木の古民家カフェ「r cafe」
榊原社長(左端)の説明を聞きながらジェラートを試食する生徒=湖西市利木の古民家カフェ「r cafe」
 生徒は同社の榊原夏雄社長の案内で農園を見学し、今年4月に開店した古民家カフェ「r cafe(アール・カフェ)」を訪問した。カフェでは県内産の果物などを使ったジェラートを試食し、バナナを使って地域活性化につなげる商品のアイデアを班ごとに話し合った。
 同社との連携による授業は2年目で、昨年度の3年生はバナナを使ったシュークリームとタルトを考案した。小野田莉帆さん(17)は「ジェラートは果物の味がはっきりしていておいしかった。昨年の先輩たちとは違う斬新なものを作りたい」と意気込んだ。
 生徒は今後、地域経済の課題などを学ぶ授業を受けながら商品のアイデアを考え、9月に菓子メーカーのシェフに提案する。商品化に選ばれた製品は10月28、29の両日に遠鉄百貨店で販売する予定。
(湖西支局・杉崎素子)
〈2023.7.13 あなたの静岡新聞〉

「みそっこツナちゃん」完成 ごはんのお供に 富士宮・富岳館高生

 富士宮市の富岳館高環境科学研究部が由比缶詰所(静岡市清水区)と共同開発したツナの瓶詰め「みそっこツナちゃん」が完成し、10日に同校で開かれた毎月恒例の朝市「岳市楽座」で発売した。企画始動から2年かけ、同校で製造しているみそを使った、ご飯に合う逸品に仕上がった。

新商品「みそっこツナちゃん」をアピールする生徒=富士宮市の富岳館高
新商品「みそっこツナちゃん」をアピールする生徒=富士宮市の富岳館高
 新商品は、同校生物生命系列の3年生が作ったみそを譲り受け、メバチマグロのツナと合わせた調味みそ。隠し味にカレー粉が入っていて、芳醇(ほうじゅん)なみそとスパイスの香りが食欲を刺激する。1瓶150グラム入り250円を約200食用意した。岳市楽座限定で販売する。
 共同開発は2021年春、卒業生が就職する同社との話し合いをきっかけに始まった。製造現場の見学や味付けの協議を重ねて発売する計画は新型コロナウイルス禍で活動に制限がかかり大幅に遅れ、23年春に新商品が出来上がった。卒業生で同部元部長の古屋慎悟さん(19)は「自分たちの代で完成できず、企画がつぶれていないか不安だった」といい、完成品を手に安堵(あんど)した。
 発売初日は、当初予定していた50食が開始10分で売り切れた。3年の桐山茉海副部長(17)は「学校のみそが引き立っている味わいを多くの人に楽しんでほしい」と話した。
〈2023.6.11 あなたの静岡新聞〉
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