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今年で70回目 安倍川花火大会 始まりは?

 静岡市の夏の風物詩、安倍川花火大会が今年も開催されます。第70回となる今年は、昨年より規模が拡大され一層の盛り上がりが予想されます。多くの人々の想いが込められてきた安倍川花火。その歩みを1ページで紹介します。

今年は規模拡大 1時間半で1万5千発 午後7時半から同9時まで

 

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2022年の「安倍川花火大会」=23日午後8時半ごろ、静岡市葵区の安倍川河川敷(写真部・小糸恵介、多重露光)

  静岡市の夏の風物詩「安倍川花火大会」の大会本部は16日、同市葵区で総会を開き、今年の大会を7月22日に開催すると正式に決定した。昨年は新型コロナウイルスの感染対策で1時間に短縮した打ち上げ時間を午後7時半から同9時までの1時間半とし、約1万5千発を打ち上げる方針も決めた。
 
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記者会見で安倍川花火大会の概要を説明する原田正男会長(右)=16日午後、静岡市葵区

 打ち上げ場所は昨年同様、安西橋下流側の4カ所に設ける方向で準備していて、観客の分散や混雑の回避を図る。露店は河川敷内のみとする。昨年は約35万人だった来場者は約40万人を見込む。荒天などの場合の予備日は設けない。昨年9月の台風15号の影響で河川敷の整備が必要なため、桟敷席を設置できるかは市と検討しているという。
 1953年に始めた大会は第70回の節目。総会後に記者会見した原田正男会長は「戦没者の慰霊という趣旨を理解してもらい、静岡市の活性化に向けて大いに頑張りたい」と意気込み、「新型コロナの感染状況が落ち着き、多くの人出が予想される。事前の準備を徹底したい」と話した。
 2018、19年は台風、20、21年は新型コロナの影響で中止し、昨年、5年ぶりに開催した。
(社会部・小沢佑太郎)
2023.04.16 あなたの静岡新聞

安倍川花火 いつから始まった?

※2020年7月22日 あなたの静岡新聞より

静岡大空襲を振り返る桑原政江さん。戦時中の母親と自身をモチーフにした人形を自作し、毎年夏になると飾るという=16日、静岡市葵区
静岡大空襲を振り返る桑原政江さん。戦時中の母親と自身をモチーフにした人形を自作し、毎年夏になると飾るという=16日、静岡市葵区
 新型コロナウイルスの影響で今年も中止が決まった静岡市の夏の風物詩・安倍川花火大会は、太平洋戦争で亡くなった人々らの慰霊が始まりと伝わる。とりわけ1945年6月の静岡大空襲では約2千人が犠牲となったとされ、多くの遺体が安倍川の河原で火葬された。当時を知る人が少なくなる中、空襲経験者らは一様に平和を願い、次世代へ伝える重要性を訴えている。
 静岡平和資料センター(静岡市葵区)によると、静岡大空襲は45年6月20日未明、123機の米軍爆撃機B29が2時間にわたり焼夷(しょうい)弾787トンを投下。市街地の6割以上が焼失した。
 「布団がなければ、焼け死んでいた」。旧制静岡第一師範学校の女子付属中1年生だった桑原政江さん(87)=同区=は、今も惨状を鮮明に覚えている。
 突然の爆音で起きると、自宅近くにあった伝馬町国民学校は既に燃え上がっていた。母親と叔母、いとこら女性6人で懸命に避難。膝の高さまで水がたまった駿府城跡の外堀へ逃げ込んだ。誰かが布団を投げ入れ、バケツで水を掛けてくれた。その布団をかぶったことで「命拾いした」。
 焼夷弾が直撃した人や防空壕(ごう)で命を落とした人、駅に向かって手を挙げたまま黒焦げになった人-。親子の遺体の多くは、母親が子どもをかばうような形をしていた。にわか作りの担架で、安倍川の河原へ運び込まれていったという。
 過去には花火の反響音が空襲の記憶と重なり、つい耳をふさいでしまうこともあったと明かす桑原さん。毎年夏になると、戦時中の母親と自身をモチーフに手作りした人形を部屋に飾る。「戦争はしてはいけない。そのためにも、頭を使って物事を考える力をつけないと」と強調する。
 新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される今、無責任な行動を取る人が気にかかる。「爆弾を落としたら相手はどうなってしまうか、という想像力と一緒。自分が良ければそれで良い、ではだめ」(社会部・佐藤章弘)

 <メモ>安倍川花火大会本部発行の「花火の名称」によると、大会は1953年8月、静岡大空襲で亡くなった人らの供養などを目的に始まり、第4回から現在の名称になった。安倍川河川敷には大正時代に関東大震災の犠牲者をまつる供養塔が建てられ、供養のために花火が打ち上げられてきた歴史もあるという。花火大会は台風接近などで2018、19年は中止になったが、大会本部は両年とも戦没者慰霊祭は営んだ。今年も25日に少人数の役員だけで予定する。
 慰霊祭で長年導師を務めてきた感応寺(静岡市葵区)の伊藤通明住職(96)は「若い人の多くは、あの戦争を『そんなことがあったんだ』ぐらいにしか感じないかもしれない」と危惧。「だからこそわれわれは、声を大にして当時のことを語り継いでいかなければならない」と話した。

復旧急ぐ 花火会場の河川敷 台風2号で再被災

 2022年9月の台風15号で被災した静岡市の安倍川河川敷スポーツ広場19カ所のうち、14カ所が23年6月の台風2号で再び被害を受けたことが23日、市への取材で分かった。スポーツ広場は市民の利用も多く、7月22日に開催予定の安倍川花火大会の会場にもなっている。市は復旧を急いでいる。

市民利用再開や花火大会開催に向け、復旧作業が行われる安倍川河川敷のスポーツ広場=23日午後、静岡市葵区
市民利用再開や花火大会開催に向け、復旧作業が行われる安倍川河川敷のスポーツ広場=23日午後、静岡市葵区
 台風15号では、安倍川河川敷のスポーツ広場33カ所のうち、流木や土砂が流れ込むなどして19カ所が被災した。このうち8カ所は22年度中に復旧が完了し、11カ所は7月中の全面復旧に向けて作業を進めていた。しかし、台風2号による大雨で、復旧が完了していた8カ所のうち4カ所、復旧中だった10カ所が再び被災した。
 市によると、同スポーツ広場は市民の利用が盛んで、市内のスポーツ少年団や高齢者グループの利用で週末はほぼ予約が埋まる。相次ぐ被災で、市外施設を利用せざるを得なくなったり、活動の休止によって存続が危ぶまれたりしているグループもあるという。
 被災箇所のうち、7カ所は安倍川花火大会の会場にもなっている。復旧作業が順調に進めば大会に間に合うが、台風15号や台風2号のような豪雨が再度発生すると、復旧が遅れる可能性が出てくるという。難波喬司市長は23日の定例記者会見で「(花火大会には)どんなことがあっても間に合わせないといけない。緊急的に整備を進めている」と説明した。
 台風2号で被災した河川敷の広場は次の通り。
 ▽葵区 松富、柳町、辰起町、伝馬町新田、田町緑地、田町安倍中、弥勒▽駿河区 丸子新田、東新田、南安倍、中野新田、中原、向敷地、手越
(政治部・池谷遥子)
〈2023.06.24 あなたの静岡新聞〉
 
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