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熱中症にご注意! 夏本番を前に予防対策徹底を

 静岡県内で連日、暑い日が続いています。7月11日には静岡県内で今年初の「熱中症警戒アラート」が発表されるなど、熱中症のリスクが高まっています。昨年5月から9月までの県内の熱中症搬送人数は1688人、死者1人、重症35人でした。暑さに慣れていないこの時期から、どのようなことに気をつけたらよいのでしょう。熱中症に関する基礎知識や、静岡県内の取り組みをまとめました。(編集局・鈴木紫陽)

今年は5月に早くも真夏日 観測史上最高気温を記録したところも

 高気圧に覆われて晴れた静岡県内は5月17日、気温が上昇し、6地点で今年初の真夏日となった。浜松市天竜区船明で34度を記録するなど、3地点で5月の観測史上最高だった。熱中症とみられる症状の搬送者は少なくとも4人。中等症1人、軽症3人とみられる。

猛暑日直前の34度を表示する電光掲示板=17日午後1時ごろ、川根本町千頭(写真部・坂本豊)
猛暑日直前の34度を表示する電光掲示板=17日午後1時ごろ、川根本町千頭(写真部・坂本豊)
 気象庁の観測によると、5月の最高気温を更新したのはほかに、静岡市葵区井川の30度と川根本町の33.5度。浜松市天竜区佐久間、同市中区、菊川市でも真夏日となった。
 浜松市天竜区の二俣城跡では、観光客らが強い日差しの下、汗を拭ったり水分を補給したりしながら散策した。東京都から友人らと訪れた志岐武彦さん(80)は「晴れて良かったが、ここまで暑いとは思わなかった」と話した。市街地では路面が熱で揺らいで見える蜃気楼(しんきろう)の一種「逃げ水」も出現。日傘を差して行き交う人が目立った。
 川根本町では午後1時ごろ、同町千頭付近の県道に設置された温度計の電光掲示板が34度を表示した。大井川鉄道千頭駅前では、観光客が冷房の効いたバスへと足早に向かい乗り込む姿が見られた。
〈2023.5.18 あなたの静岡新聞〉

21年から運用開始「熱中症警戒アラート」 昨年度は全国46地域で889回発表

 気象庁と環境省は4月18日、熱中症のリスクが特に高まった際に注意を呼びかける「熱中症警戒アラート」を、23年度は4月26日から全国で運用すると発表した。10月25日まで。エアコンの使用や小まめな水分補給といった熱中症予防に向けた行動を促す。

 気温や湿度、日差しなどから算出する「暑さ指数」を基に、熱中症の危険性が極めて高いと予測される日の前日または当日に出す。対象は全国を58に分けた地域。アラートは2021年から全国で運用開始し、昨年度は46地域で延べ889回の発表があった。
 今国会では、熱中症対策を強化するため、さらに上位の「特別警戒アラート」を新設することを盛り込んだ気候変動適応法改正案が審議中だ。
 市町村は冷房を備えた公共施設などをクーリングシェルター(避難施設)として事前に指定し、特別警戒アラート発表を受けて開放する。24年から運用する予定。
〈2023.4.19 静岡新聞〉

熱中症対策のポイントは?

※2018年6月15日 静岡新聞より

道路工事の現場で熱中症予防指導員から対策を学ぶ作業者ら=8日午後、静岡市駿河区
道路工事の現場で熱中症予防指導員から対策を学ぶ作業者ら=8日午後、静岡市駿河区
 夏本番に向けて蒸し暑くなる季節を迎え、気を付けたいのが熱中症だ。専門家は高温多湿の環境に体がまだ慣れないこの時期からの注意を呼びかけ、職場や学校でも対策が始まっている。条件次第で誰でも発症し、命にも関わる疾病だけに、適切な対応で予防に努めたい。
 「雨上がりに気温が急上昇したり、風がなく湿度が高かったりした時は特に注意してほしい」。静岡済生会総合病院の小柴真一救急科専門医は、梅雨時に熱中症が懸念される状況を解説する。暑さが習慣化する前は、発汗して体温を逃がす「暑熱順化」が十分に機能せず、症状を引き起こすケースも多い。
 熱中症は体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温調整が利かなくなって起きる。消防庁によると、静岡県内では2017年、熱中症で1244人が救急搬送され、3人が死亡。6月に限ると69人が搬送され、1人が死亡した。
 熱中症の危険性を示す指標として有効とされるのが「暑さ指数」(WBGT)だ。人が感じる暑さを表し、湿度や気温、放射熱などから「度」単位で算出する。中でも湿度は指数を決める要素の約7割を占め、梅雨時に熱中症を警戒する必要性を裏付ける。日常生活や運動の指針では25度以上を「警戒」、28度以上を「厳重警戒」などと定めている。  暑さ指数は環境省をはじめ、民間の気象予報会社や自治体などもウェブサイトで公開している。環境省は全国の毎時数値や2日先までの予報を紹介。県内も17地点で公表されているほか、交差点や温室、体育館など別条件の8種の指数も示す。希望者にメールで情報提供するサービスもあるので、活用したい。
 一方、熱中症が想定される一部の職場や学校は、梅雨前から具体的な対策を講じる。業種別で患者数が多い建設業では「熱中症予防指導員・管理者研修」を実施。受講者が作業者を教育し、事故抑止を図る。昨年熱中症による高校生の事故が起きた浜松市は、教育委員会が活動別のチェックシートを用意して、暑さ指数の計測や確認事項の徹底を促す。
 梅雨時の熱中症対策は水分・塩分の適切な補給や体調管理、温度調節などに加え、涼しい時間帯に行う軽めの運動も暑熱順化の効果が期待できるという。乳幼児や高齢者など熱中症弱者には、周囲の早めからの配慮が欠かせないだろう。 (松岡雷太)

傘の売り上げ好調 行動制限解けた夏 男性の日傘需要が下支え

 新型コロナウイルスの流行による行動制限が解けた今年は、傘の売り上げが好調だ。外出機会の増加に加え、熱中症や日焼け対策として日傘を使う男性が増えていることも背景にある。静岡県内の小売店では性別を問わずに使える晴雨兼用傘などを中心に、機能性と手頃な値段を兼ね備えた商品が人気を集める。

小売店の傘コーナー。大きめの晴雨兼用傘が性別を問わず人気という=6月中旬、静岡市葵区の三保原屋
小売店の傘コーナー。大きめの晴雨兼用傘が性別を問わず人気という=6月中旬、静岡市葵区の三保原屋
 静岡市葵区の家庭用品店「三保原屋」では今シーズン、傘の売り上げが前年の2倍近くに伸長している。下支えしているのは男性や、高校生など学生の日傘需要。堀高輔常務(36)は「暑さの厳しい夏が続くこともあり、日傘は誰もが使うものになりつつある。それに応じて商品も変化している」と話す。
 同店の売れ筋は55センチ以上の晴雨兼用長傘で、価格は2千~3千円程度が中心。従来より大ぶりが好まれ、色はグレーやカーキ、ベージュといった単色が人気。生地の内側に光を吸収する黒いコーティングを施した商品も多く、機能性とスタイリッシュな雰囲気が男女ともに支持されている。
 日焼けを防止するUV(紫外線)カット機能に加え、暑さに耐えられるよう遮熱効果を強化した商品も増える。骨の構造の工夫による耐風性強化や軽量化も進み、「手頃な価格の商品でも高機能化している」(堀常務)という。
 浜松市中区の「ハンズ浜松店」は、需要増を見込んで日傘コーナーを昨年より早い3月に設置し、売り上げは好調。傘全体で前年の約3倍に伸びている。日傘は機能性の高い晴雨兼用傘が主流で、男性仕様の単色でシンプルなタイプもじわじわ販売数を伸ばす。
 静岡市葵区の傘専門店「藤田屋」では昨シーズン、男性向け日傘の売り上げが急増した。今年も堅調で、6月は父の日の贈り物としての購入も目立った。全天候型の折り畳み傘がけん引役で、表が水色や薄いグリーンなどの淡色、裏が黒地の商品が好評だ。藤田仁子専務(61)は「男性向けも色が多彩になり、選択肢が増えている」と話す。
〈2023.6.23 あなたの静岡新聞〉
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